月別アーカイブ: 2007年12月

ラウド・マイノリティ

 雨である。12月の雨だ。荒井由美の切なくも甘酸っぱい雨でなく、暗く冷たい火曜日の、往診の日の雨である。在宅診療で自転車で出かける日に限って雨が多いのはどうしてかな?誰か僕のこと嫌いなんでしょうか?あほなことを考えておらず出かけよう。

 独居の老人は必ずテレビを見ている。暗い部屋で、身じろぎもせずテレビを見ている。間違いなく認知症への高速フリーウェイであるが、見ないで下さいとは言えない。診察し、しばらくお話し(とても良くなっていますよ、風邪は引かないで下さいね…)、帰ろうとすると「先生が覗いてくれるから心強いですわ」と、じっと顔を見てかすれた声で言われる。表に出ると雨が小降りになり、少し明るくなったようだ(ここらへん、べただなぁ)。

 内科医は季節労働者で冬になると患者さんがぐっと増える。1日が終わり、家に帰り飯を食い、風呂に入るともうほとんどミッドナイトである。自分の時間はほとんどなく、1時間ほど取れる時間は職場で出来なかった書類仕事をすることになる(ケアマネージャーの皆さん、意見書全部書きました。えっへん、ざまーみろ。ご迷惑かけました。すでに手遅れだって?)。

 こういう日陰者の生活はもういやっ、私!というわけで今日は風呂に昔のStudio Voiceの特集「伝説の名盤300選」を持って1時間以上読む。なんでZepが「聖なる館」だ、何でストーンズが「アフターマス」だ、何でジョン・レノンが「Sometime in New York City」なわけよ、と悪態をつくが、これは客観評価はほとんど定まっているから、それと違う俺様の主観を自慢する特集なのだと気がつき、それからは楽しんで読む。

 僕もどちらかいうとメジャーよりもマイナーを愛するものである。でもラウド・マイノリティでありたいな。騒々しい少数派。クールだ。

imageskじゅy.jpg
実は雨の日が好き

ジェネリック医薬品とチーム医療

 1昨日「じほう」社のインタビューを受けました。「Japan Medicine」に掲載されるジェネリック医薬品特集において、医者の意見を述べることになったのです。この前の日本薬剤師学会のシンポジウムで話した内容から指名されたようで、それに沿って話をしていきました。

 ジェネリック医薬品の広告はテレビで放送されていますが、薬は全く同一で値段だけが安いという表現をされています。これは正確ではありません。薬の薬効成分は確かに同じですが、剤形や賦形剤、コーティングの違いで効果は変わってきます。医者側のアンケートでは依然半数近くが先発品と違う効き方、副作用の経験があると答えていることが多い。厳密には同一の薬ではないということをちゃんとインフォメーションすべきです。その上で薬を選択するのがフェアである。

 しかしながら長く使用され効果、安全性の確立した薬剤の、ちゃんとしたジェネリックであれば(これの見極めが難しい、ジェネリック薬品メーカーは100社以上あり正直玉石混合の感あり)、患者さんにとっても行政にとっても有効な選択肢であることは間違いありません。後発品かジェネリックかという択一的、対立的な捉え方でなく、個々の薬の特性を知り患者さんにとって安心できる医薬品を的確に処方するということが医者の使命であり、そしてそれには薬のプロである薬剤師さんの協力無しにはありえないといったような話をしました。これから医者にとっても患者さんにとっても薬の選択の上で薬剤師さんの情報収集能力、役割は非常に重要になってくるであろうと。

 いずれにしろどんな分野でもそうですが個々の人間のできることは限りがあります。協力し合うチーム医療がこれから非常に大事になりますが、うまくいくかは仕事の能力より個々のキャラクターが要でしょうね。責任感や優しさなど情操的な面が欠けているとうまくいかない。それを鍛えるには勉強、仕事ばかりではだめというのは明らかです。頑張って遊ばないと!(違うか?)

images987.jpg
これにサプリもはいってくると大変だ

ラブっすよ!

 夏木マリという人がいます。なかなか物のわかった人(あったことないから単に感じだけど)だと思いますが、彼女が「愛を優先順位の1位にしたい。これからは愛に生きたい」とおっしゃってるのを週刊誌で読みました(と言ってもチラッとだけど)。

 素晴らしーい。美しい。彼女は最近ご結婚されたので、そのことから出てくる言葉だと思いますが、「愛に生きる」というのは絶対正解ではないかなっと。この場合僕の言ってる愛は必ずしも男女間のものとは限らず、大きく人間間やそれ以外の生物との間にも存在するもの、すべきもので、それを最優先するのは一番正しい態度と思います。

 何で急にそんなことを?何故君が?と疑問をお持ちの貴兄には「Pearls」を読んでくれーというしかない。めんどくさいし。

 実際それ以外何があろうか…と愛に生きる戦士は思うのであった(まあ明日になればまた変わってるかもしれんが)。

こここt.jpg

All you need is love

愛だよ、愛!

 本を読む。山川健一「ヒーリング・ハイ」。本棚に会って、以前読んだとき結構影響を受けた。なんとなく気になり再読。10年以上の前の本かーと、発行年月日を見て驚く。2,3年前の感じがしていた。

 山川健一氏は僕より2つ上の作家でありロック・ミュージックに造詣の深い人(バンドもやっていた)。今では結構こういう人が多いがそのはしりのような人だ。何冊か読んでいるが、僕の高校時代と同じあだ名の主人公(タイトルになっている)の話が面白かったかな。後はこの本だ。

 山川氏はある日突然オーラが見えるようになり、彼自身驚くがそのことから精神世界の勉強を始め、その結果彼が得た、ある種の結論を書いた本である。ノンフィクションであり、実話である(書きっぷりからもオーラが見えるようになった彼自身の戸惑いがよく判る)。相対性理論、宇宙論からホーキング、ライアル・ワトソン、そしてラブロック博士の「ガイア仮説」など、もっと専門的なものも含めてよく勉強されているが、結果として彼はこの世界だけが総てではない、人間だけが唯一のものでない、肉体と精神はもっと大きな根源的なものにつながっているのだという感覚を持つに至る。

 宇宙の存在は本当に不思議なものだ。なぜあるのか、どういう構成なのか、その存在を考えると、確かにこの地球は何か大きなものの一部分で、人間はその中のほんのほんの一部分で、僕たちが自分で考え行動していると思っているのも、実は大きな生態系の中で、目に見えないようなささやかな動きなのかもしれない。悩みや苦しみなど、実はそんな風に感じることなど間違っているのかもしれない。お金や法律とか、それはシステムでありツールであり、本質的、絶対的なものではないのだ。昔から晴耕雨読など、世捨て人がいたが、彼らは俗世間が仮の姿と本能的にわかっていたのかもしれない。最近の宇宙論は、人間の精神が本質的に宇宙とつながっているような結論を出している。

 なぜ僕がこの本を急に再読したくなったのかわからない。所々ああ、あったっけと思うところがあったけれど、ほとんどが新しい本を読むような気持ちで読んだ。で、大いに共感した。読むべきタイミングだったのかな。読むべくしてよんだのだ、きっと。最近診療所の移転や諸々の手続きで、現実生活のシステムにやや疲れていたのかもしれない。・・・・・大事なのはね、愛なんだよ、愛。・・・・・これが結論。何でこうなったのかは本を読むように。山川氏は「ヒーリングとは楽しむこと」とも言っている。これにも共感。生活、人生の行動指針の1番目に「愛」をおくこと。これが僕のこれからのマニュフェストであります。