池澤夏樹氏「タマリンドの木」を読み返す。5,6年前だろうか、以前読んだ時にはあまり印象に残らなかった。書評の特集で恋愛小説の傑作との評があったのですごく期待して読んだのだが。
なんとなく呼ぶものがあり読み返した。こんなはずじゃない、なにか間違えてるはずだ、という気があったんだろうな、きっと。で、ここ2日で読了した。すごく引き込まれた。
池澤夏樹氏は僕の何人かのフェバリトの作家の一人である。
「真昼のプリニウス」は大好きな小説で、今年の夏にブログにも書いた。
http://www.ikeoka.net/blogs/soulcherish/?p=980
なぜ前に読んだとき、気に入らなかったかわかった。プリニウスと較べると、タマリンドはストーリーがかっちりし過ぎているのだ。起承転結があり、途中で先が読めるといえば読める。池澤夏樹氏の多くの作品は先が全く読めない。静謐な空気をたたえたまま美しくストーリーがすすむ。ある種、現代音楽のようともいえるのだが(全然退屈じゃないけど)、タマリンドは太いメロディのある民族音楽のようだ。そこに違和感があったんだな。
NPOでカンボジア移民の世話をタイでやっている女性と日本で商社に勤める男性の話し。今読むと、この二人の感覚が本当によく判る。前は何を読んでいたんだろうと驚くくらいだ。
障害は古典的恋愛小説において必須のものだが、その乗り越え方が現代的だ。素晴らしい。主人公の女性がやはり魅力的。好みはプリニウスの芳村頼子准教授だけどね。Too cool!!
これだけ印象が変わると今まで何を読んでたんだろうという気になる。暫くは池澤夏樹氏の作品を読み返すことになりそうだ。まずは「マシアス・ギリの失脚」からか。
文春文庫です。読んでね。
着ぐるみ院長殿
「人は結局自分のために愛するのかもしれない」!
そのとおりです!!
人間のおこなうさまざまな行為は結局自己満足のためのものであり、人間というものはなんと自分勝手なものか・・。
私、小説特に恋愛小説はあまり好きではないのですが(読んだ後に何かしらしらけた気持ちになるのです)、良い小説というのはストーリーが面白いのでしょうね。
久しぶりに小説など読んでみようかという気になりました。
Day Dreamer さん、コメント有難うございます。
うーむ、いろいろ修羅場をくぐられたような雰囲気が。
人間は自分勝手、その通りでございます。
その自分勝手な人間が、お互いの勝手さの間合いを計りながら
恋愛するところがまた面白いという気もします。
どうせ人間はこの地球上でほんの限られた短い時間、神様に
「遊んどいで」とほりだされたようなちっちゃい存在。
好き勝手にいくのもまたよしと。
この小説は是非読んでください。勝手をどのへんで譲るか、
そんなことを考えさせられます。
気ぐるみ院長殿
あはは・!
修羅場など無縁な私ですが歳をとるとそれなりに、ね!
思うところもいろいろあるわけです。
院長殿のブログ、いつも楽しみに拝読させていただいてます。
自分本位なコメント、どうぞお許しください。
Day Dreamer さん、レスポンス有難う御座います。
いやいや自分本位なブログですが、よろしくお願いいたします。
こうやってコメントいただくと勇気が出るのであります。