シンクロニシティ

今日朝、車の中で突然患者さんのKさんのことを思い出した。末期癌で在宅診療をおこなっていたのだが欝がひどくなり、奥さんの精神的負担も限界となって10日ほど前にホスピスに入っていただいたのである。もともと建築士をされていた方で、お元気な頃はきっと活発な楽しい方だっただろうと思っていた。気持ちの上で何かつながるものがあったのである。

 

 ホスピスに入られたことでなんとなく安心してすっかり忘れていた。お元気かな?クリニックに着いたら奥さんの携帯に電話しよう。

 

 そう考えてクリニックに着き、エレベーターに乗る。その時携帯に着信があり、一瞬にしてKさんと確信した。案の定、その名前が。やはり奥さんから今朝亡くなったという取り乱したお電話だった。

 

 Kさんを思いだしたのが750分頃。お亡くなりになったのが7時半。20分のタイムラグかぁ、と思う。

 

 こういうのをシンクロニシティという。心理学者のユングが言い出した言葉で「意味のある偶然」。別に珍しいことではない。噂をすれば影といって、話していた対象である本人が突然現れるというのはよくある話だ。世界は見えない何かでつながっているという仮設で、氷山にたとえられる。見えているのはほんの一部。水面下ではつながっている・・・

 

 僕は霊的な話を聞くと偶然でしょ、とあっさり切り捨ててしまう情緒のない人間であるが、実は全く否定しているわけではない。第6感というか、野生の動物が災害の前に異常行動に出るように、野生に近い頃の人間が持っていた感覚の一部かなと思ったりもする。むしろそう考える方が確率から考えると科学的かも。

 

 世界はつながっており、この世界で起こることはすべて意味があるのだと思うと世の中に対して優しくフレンドリィになれる。僕は世界の一部であり世界は僕の一部なのだ。色即是空、空即是色である。そう思わない?

 

世界は見えているのと違うかもしれんね。

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