ちょっと気分が落ち着いた。今度抗加齢医学会雑誌にクリニックが紹介されることになり、その文章がやっと出来上がったのである。「アンチエイジングクリニック訪問」という連載物であるが、学会誌に数ページにわたり掲載されるので真剣に書いた(普段はそうでないのか?)。スタッフの写真もあるぞ。締め切りギリギリはお約束だーい!
で、なんとなくCDラックに手を伸ばしユーミンを聴く。なんでや?わかりません、なんとなく懐かしくて。ベストアルバムだな、これは。
ユーミンは僕より1歳年上である。彼女の登場を同時代で意識できて幸福である。その頃の貧乏くさいフォークでなく、右肩上がりの日本の経済状態とシンクロした、おしゃれな歌をうたう上級生の突然の登場。僕は彼女がデビューしてまだ3度目のステージを見ている。すごくヘタでした。先行きが危ぶまれるような。でも結果はご存知のとおり。
ユーミンの曲は1曲で短編小説1話ぶんである。目の前にその情景が浮かぶ。これほどイメージを喚起させる歌を書ける人をほかには知らない。サザンでもタツローでも浮かばない。映画の1シーンのように明瞭に、僕でない誰かが主人公のフィルムが流れる。
これは歌詞の力だろう。メロディーは言わずもがなだが、彼女の歌詞は本当に素晴らしい。そして彼女の歌詞にはある共通のトーンが流れている。すべてのものは変わりゆく、変わらないものはないという諦念のようなものを僕は感じる。今は幸せでも、それでさえやがて懐かしく思い出す出来事になってしまうだろうという、そういう感じね。切ないのである。
彼女のインタビューで「私はある時わかってしまったんです。人間は絶対的に一人だということを。それから淋しくなくなったんです」と言っていたのを覚えている。意外でよく覚えているが、そういうのが核なのだろうか。
諸行無常の響きあり、平家物語である。
天才ユーミンにして近年の凋落振りは、本当に平家物語だなぁ。でも僕は彼女の復活を信じている。10年くらい新譜を聴いていないが、いずれ驚愕のアルバムを、大人のせつなさ満載の素晴らしい楽曲を聴けることを、上級生のお姉さん、俺は待ってるぜ。
これで人生が変わったかもね。