嘘だと思ってやってね!

僕は雑誌が好きだ。雑誌ポパイの出現により世界が変わったポパイ世代であり、“NOW”(知ってる?)“ワンダーランド”(知ってる?)“話の特集”(めっちゃ面白かった)“アンアン”“オリーブ”(女の子のやつだろ?いやいやこれがなかなか共に初期のセンスの鋭さは当代随一、ノンセックスで楽しめた)“ブルータス”(一時期低調でしたがこの頃はなかなか)などなど、その時々の僕の精神生活を賦活してくれた大切な友人です。

で最近は“GQ”が気に入っていたのですが、延々とヤンエグ(死語)とはお友達路線を続けるのでコリャだめだと思っていたところ、アンチエイジングの特集が出て思わず買ってしまった。渋いグレーをバックに表紙は古田じゃないか!実は古田選手はアンチエイジング特集とは全然関係なかったのですが。で内容はといえば見かけのみ、しかも顔に絞ってケア用品を紹介するのがメインで、やはりどうってことなかった。しかし斉藤薫女史の男のアンチエイジングに関する巻頭論文?は興味深かったです。男の場合若く見える人とそうじゃない人は大きく二極化する。それは見かけに気を使うかどうかという点において分かれるのであり、年をとっても女性を女性としてみているか否かという意識の違いによる。また一律に若く見えれば善しではなくて、その見え方も職業により適切なものがあるのでお気をつけあそばせ等、フンフン、参考にさせていただきやしょう。

でもアンチエイジングにおいて若く見えることは付加的なものに過ぎず、年を取っても元気で楽しく人生を送るということがその本義である!よいか皆のもの!間違えるなよ!若く見えてもボロボロの人はいます。少ないけど。見た目が年齢というのは大本において正しいのですが、それは内面(内臓、精神)の充実が現れてこそ正しいのであり、皮だけ取り繕ってもしかたねぇよ!と言いたい。中身が本物でこそアンチエイジングです。

で、アンチエイジング覚書。今のところ学問的に正しいであろうといわれているところプラス個人的意見をランダムに。詳しくは今までpearlsに書いたものの中に(あるものもあります)。参考になれば幸いです。

①実年齢と実際の老化度とは別。

②中年以降の健康状態は個人差が大きいが、それは遺伝因子よりライフスタイルで   決まる場合が多い。

③ライフスタイルの変更はいかなる年代からはじめてもそれなりの効果があり“手遅    れ” はない。

④基本は脳と足腰。両方とも鍛えればある程度の年齢になってからもちゃんと向上    する。

⑤足腰の鍛錬は単に生活と同程度の軽い運動(散歩など)よりわずかの負荷をかけ   る筋肉トレーニングが有効。

⑥関節の屈曲性能が落ちてくるので、ゆっくり深く関節を曲げるストレッチが有効。

⑦肉体的なトレーニングは精神機能にも好影響を与える。必須。

⑧“食べ過ぎない”というのが基本。何でも満遍なく少しずつ。元気で健康な老人の   共通点は決して太っていないことである。

⑨抗酸化食品、サプリメントなどは金の無駄(と言い切ってしまおう)。

⑩老化とは乾燥である。特に口腔内は要チェック。1日2L程度の水分摂取を心がける。

⑪頭を鍛えるには単に情報を入れるだけなく、自分なりに処理加工して出すこと。人   に説明する、自分なりにまとめて書き留める、気持ちを何かの形で表現する(絵や音  楽にするなど)ことが大事。

⑫手順を考えたり並行して複数のことをするのは有効。料理や掃除など家事をする   のはいい手段である。

⑬“まめ”でいこう!面倒くさがりは百害あって一利なし。足も腰も軽く。

⑭計算や書き取りなど単純な知的活動は脳の回路を錆び付かせないために有効で   あるように思える。

⑮酒、タバコ、日焼けはミニマムに。

⑯義務があることは大切。無ければ作ろう。誰かに必要とされているという自覚はボ   ケを防ぐ。

⑰“年はとりたくないねぇ”“お迎えが来るのを待ってます”などは死んでも言わない。

⑱犬を飼おう。異性と接する機会を増やそう。

⑲でももう一つ。人に頼らない、一人で生きていくという姿勢は精神を錆び付かせな   い。

⑳若くあろうと常に意識すること。

では諸君、グッドラック!

No TV, No dementia (認知症)

午前中の診察が終わると在宅診療に出かけます。外に出ることの出来ない患者さんを診察するため定期的に自宅を訪問するのですが、お一人の方が多い。そして必ずテレビがついています。勿論言うまでもなく「思いっきりテレビ」です。「成人病、今は医者よりみのもんた」。よく出来た川柳ですよねー。実際に医者の掲示板にみのもんた症候群として医者の言うことより思いっきり!テレビを信じる患者さんのことが話題になったりしました。あっ、言いたいのは「思いっきりテレビ」のことじゃありません。テレビを長時間見続けることについてなのです。

あなたが呆けたかったら1日お菓子を食べながらテレビを見ていればいいのです。テレビの害に関しては、日本小児科学会が子供のテレビを見る時間の制限を正式な提言として出しています。ちゃんとしたコミュニケーション能力の発育が妨げられることや身体的な発育障害の問題など、他にも子供に対するテレビの弊害に関しては本当にたくさんの報告がされています。しかし、どういうわけかかなり長い時間テレビを見ている老人に対する影響を調べたものは余りありません。

テレビは有用なツールです。情報を得る手段としては非常に優れている。百聞は一見にしかず。しかし一方通行です。コミュニケーションこそ脳を活性化させる。テレビの画面を漫然と眺めている老人の脳に新鮮な刺激が与えられているとは思えません。大事なのはそこで得たことを材料に話し合うこと、自分の思っていることを出すことで、アウトプットこそ要なのです。老人だけじゃありませんよ。あなた、そこのあなたも同じ。ビールを飲みながらニュースを見ているだけでは脳は活動を停止しているのに等しい。疲れてるんだよー、うるせえな。成る程。しかし脳は疲れません、身体は疲労しますが。別の新しい刺激を与えれば再び甦ります。

テレビは身体を動かさない。アンチエイジングの基本は脳と足腰です。70歳台でも鍛えれば筋肉は肥大することが証明されています。筋肉を鍛えることに手遅れはありません。勿論脳も同じです。年をとれば脳細胞は減っていくだけというのは過去の常識であり、今では成人でも学習することでニューロンが新生することが認められています。It is too late というのは間違いなのです。

で、テレビを見るのは止めた。アルコールに続き本年第2弾。まあ、どおってことない。正直仕事がはかどって良いです。お笑いを見れないのは寂しい気もするが、もうマンネリだもんなー。僕が再びテレビをつけたとき何人が残っているだろう。その程度です。止めるつもりはなかったのですが、尊敬する福田和也氏が全くテレビを見ないというのを知ったとき突然「あっ、止めた」と思った。やってみると快適です。代替医療のアイコン、アンドリューワイルはニュースも含め一時的に一切情報を切ることを勧めていますが、確かにすっきりする。ぜひお試しを。

テレビを見ない老人は何をするか。いいモデルがあります。伊能忠敬です。日本地図を最初に作った人。彼は50歳で隠居し、54歳から17年かけて日本全国の海岸線を歩いて地図を完成させます。江戸時代の50歳は今で言うと70歳ぐらいに相当するかな。隠居の仕事にしてはいい仕事してますよね、頭も身体も使って。伊能忠敬がこれからの日本にあふれることこそ明るい日本の将来、ライジングサン再びの近道と思えます。

で、No TV, No dementia(認知症)。できるかな?

カフェ俺!

嗜好品というのがあります。辞書では「栄養をとるためでなく、その人の好みによって味わい楽しむ飲食物。茶・コーヒー・タバコ・酒など」なんて書いてある。生きていく上で絶対必要なものではないということですが、人間性を表すのは必需品なんかじゃなくこういった趣味性の高いものですよね。それにまったく必要じゃないのかというとそうじゃない。大雪のスキー場でぼろぼろになりながら転がり込んだレストランで飲んだコーヒーなんて本当に生き返った心地がするものですし、僕は吸わなくなりましたがタバコも状況により体がとろける位うまいものであるのはわかっています。せやから止められへんわけだ。そして耽溺する。溺れる。流される。そこから悲劇が始まるのであります。何でもやりすぎはいけませんで、旦那さん。私も覚えがありますが。いえいえ、私は今では酒もタバコも博打もやらないつまらん男でございまして・・・。

でもコーヒーは飲むんだな、これが。かなり中毒かもしれません。出典は忘れましたが10年以上前にアメリカから出た医学論文で、習慣的にコーヒーを飲む人はやめると作業効率が落ちるというのがあり、こりゃますます止められへんなー、ただでさえこの能率だもんと思った記憶があります。で何の気なしに調べ物をしていたらコーヒーに関する文献があったのでちょっとそれを。

「コーヒー及びカフェイン摂取とパーキンソン病との関係」。アメリカ医師会雑誌に2000年に載った文献です。信頼性高し。8004人を30年間にわたって観察したもので、観察期間中102人にパーキンソン病が発症したのですが、コーヒー摂取者の発症率は飲まない人の6分の1で、カフェインがその発症率と関係していた。ナイアシンなど他のコーヒー成分は関係が認められず。ミルクや砂糖も関係なし。パーキンソン病は喫煙者に発症が少ないことが知られていますが、この研究ではコーヒーによる発症率の低下とは無関係でした。

もうひとつ。Diabetes Careというアメリカ糖尿病学会誌に今年載ったばかりの文献。「コーヒー、カフェインと2型糖尿病の危険度」。88259人のアメリカ人女性。2型糖尿病というのは一般的なよく見られる糖尿病ですが、10年にわたっての観察期間中1263人が発症。コーヒー毎日2杯以上飲むと発症率が低下。この傾向はカフェインレスのコーヒーでもインスタントでも同じ。紅茶は影響せず。カフェイン以外の他の因子が発症率低下に関与しているが同定できず。

すごい数の対象者ですね。日本の健康食品でかっこつけてデータを示しているのが時々ありますがほとんど10人以下ですもんね。大嘘というのがよくわかります。なお出典は明らかではありませんが、コーヒーは脂肪酸の分解を促進する(カフェインが脂肪分解酵素リパーゼを活性化させるため)ため、好気性運動(ウォーキングや軽いジョギングなどですね)の30分前に飲むと筋肉のエネルギー源として脂肪酸が使われやすくなり体脂肪が減少するというのもありました。

いいことずくめではないか!糖尿病とパーキンソン病は本当にタフな病気ですが、コーヒーで罹患率が下がるなら飲まない手はない。俺はカフェでいこう!俺カフェ!カフェオレ!・・・失礼しました。こういうのはちょっと疑ったほうがいいよと僕の脳細胞にわずかにこびりついている理性が囁きますが、少なくとも嗜好品としてはタバコやアルコールより益がありそうです。しかしコーヒーをたくさん飲むとなんか歯がコーヒー色に染まってきそうな気がするのですが。そんなことない?誰かいい対策をご存知ないですか?うーむ。

食わず嫌い達よ!

介護予防の講演を聴いてきました。大阪府医師会の主催で4月からの介護保険制度変革に伴い主治医意見書(介護保険の認定のとき必要)の様式が変わるのでその解説と、目玉である介護予防についての解説があり、それをちゃんと聴いて城東区の先生方にお知らせする役割がどういうわけか劣等不良理事である私に課せられたためであります。やらせんなよ!いえいえ、冗談です。インフルエンザが爆発しているため診療が延び、予定より30分近く遅れてひいひい言いながら医師会館に着けば黒山の人だかり。会場の外にモニターが3台ほど設置してあり立ち見の状況です。絶句していたのですが、どうせなら会場に入って聴こうと人波を強行突破して中へ。するとスライド係りの兄ちゃんがあそこが空いているよと目で合図してくれました。奇跡的に空席が真中に!目でありがとうを言い返し、周囲に迷惑がられながら席に着きました。ごめんね!まったく馬には乗ってみよ、人にはそってみよ、会場には入ってみよであります。こんなときに日頃の精進、善行の積み重ねがものを言うね!しかしぎゅうぎゅうでダウンも脱げないぞ。

介護保険では要介護1というのが最も軽いクラス(ここに分類されている人が全体の3分の1強でこれからも増加が予想される)で、その下に要支援というのがあります。今回要介護1に分類されている人の中には予防段階の人が多く含まれているということから要支援を2段階に分けてそれらの人も新要支援の区分に入れ、介護給付でない新予防給付でまかなおう、そしてそれらの人には新しいサービス(運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上)を受けていただこうというのが骨子であります。まっとうです。でも実際の運営に際してはうまく機能するとは思えないシステムが多々提示されており、4月の開始時には混乱が予想されます。まぁ普通やったらでけへんで、あんなこと。だいたい厚生労働省の狙いは要支援が増えると介護保険費からの支出が少なくなる(クラスが下なほど使える介護保険料は少なく規定されている)というのが大きいのですが。

運動器の機能向上にはストレッチやバランストレーニングなどとともに筋力向上トレーニングが上げられており、今までその代名詞としてパワーリハビリテーションが上げられていました。しかし今はマシンを使わなくても可と、かなり控えめになっています。それでもいたねー、パワリハ批判派が。毎回マシントレーニングをして事故が起きたらどうするのだ!誰が責任取るのだ!とヒステリックに叫ぶ質問者がいるのですが、バランストレーニングでもひっくり返るぞ。相変わらずパワリハの誤解は解けていないようです。

パワリハは筋力トレーニングではない。この点、厚生労働省も悪いと思いますがマシンを使うために、またパワーという名称から完全にマッチョなトレーニングと間違えられているようです。負荷を定量的に決められること、同一運動を間違いなく反復できることからマシンを使用しているだけで負荷は恐ろしく軽い。老化による姿勢の悪化、移動能力の低下は筋力の低下というよりも使用する筋肉、使用しない筋肉のばらつきが起きてくるためで、それを一様に使用することで明らかに歩行能力の向上が見られます。病気を抱えているお年寄りは危険ではないのかという批判もありますが、研究会では90歳以上の実施例を集めてシンポジウムをしていましたし、我々の経験でもパワリハの規定を守っている限り安全です。しかし負荷の設定、マシンの調節など、講習を受けて免状を持っている指導員が必ずつくことが必要で、むしろ危ないのはマシン経験の少ない介護者が真似事をすること、ドイツの医療器具であるコンパス社製マシンでない適当なジム用のマシンを使うことです。そんなケースで事故の報告があります。パワリハ研究会はデータをちゃんと公表しており、介護保険での運動器機能向上の効果判定のやり方はパワリハ研究会のメソッドそのままです。実施方法も腰砕けにならずパワーリハビリテーション流のみで、その他のマシントレーニング、マシンを使わないトレーニングは不可としたほうが効果も安全性も絶対高かったやろねー。残念。政治的な駆け引きがいろいろあるのでしょうが。

パワリハ批判を聞いていると、言っている人は実際にやったことが無いというのがよくわかります。触ってみて話している人には本当にお目にかかったことが無い。僕はアキレス腱の手術後、もともとあった股関節の痛みが自分の不注意から両側に広がり結構みっともない歩き方を1年以上続けていたのですが、クラプトンを目指す私がこれではいかんぜ!と目覚め、今全力で回復に努めています。で、最終手段がパワリハだったのですが・・・どうだったって?みなまで言わせんなよー、1日あくと不安になるんだぜ、これが。食わず嫌いは止めような、おっさんたち。

クラプトンかスティングか?

人は見た目ですよー。またまたー、中身でしょ。いやいや、見た目が中身なんです。これは結構真実よ。研修医のとき、超優秀な病棟医長が言った。「ええか、池岡。見た目若いやつがおるやろ。あれはな、血管が若いんや。動脈硬化でガチガチのやつはな、見た目も老けてるぞ。」はぁー、そんなもんですか。しかしこれは結構常識のようであった。胸部外科とのカンファレンス、手術適応を決める。患者さんの年齢が問題になる。踏み切るにはギリギリの年齢。外科の教授が主治医に言う。「その人、どんな感じ?老けてる?」「いや、お元気でビンビンです。」「あっそう。じゃ、やろか。」はぁー、そんなもんですか。

25年も前の話だ。今では適応も動脈硬化の評価も科学的なもんだが、見た感じがその人の健康状態を表しているというのは変わらない。見た目が年齢です。実年齢、暦の年齢が問題ではない。表情、立ち振る舞い、オーラが年齢を決めるのですが、それは大きく健康状態に規定されると思う。(補足ですがその見た目の法則は犬にも当てはまると思う。大学院のとき動物実験で犬を使っていたのですが、雑種を使用する場合、開胸すると見た目きれいな犬は内臓もきれいで、本当に外と中は相関していたのだった。)

とは言うものの、純粋に見た目を変えることで内面も変わり、ひいては健康状態も変わったりするというのもある。美容整形で性格が明るくなり欝っぽさもとれ、そして運動もするようになると、これは薬よりも健康に効く!ということになりますね。で、話は頭髪のことになるのですが、今月飲む抗脱毛剤が遂に発売された。頭頂部や額の両脇から禿げてくる、いわゆる男性型脱毛に有効で、半年経過を観察した記録では、本来進行性のものであるから不変の場合も有効に含めると実に90%に有効という脅威の結果である。副作用もあまりなく、当初男性ホルモンをブロックすることから懸念されたポテンツの低下なども殆どないようである。育毛剤であるロゲイン(日本ではリアップ)との併用がとってもいいとのことです。保険は利かないので1ヶ月7000円位かかるが、ここら辺は悩み具合により高いか安いか微妙なとこでしょう。男性型脱毛は比較的若くから禿げてくるタイプも多いので、それ位だとかまわないという人も多そうな気がする。ここで長年の悩みから開放されると、ぐっと生活にも張りが出て、見た目も中身も若返る人が多くなるのはいいことだ!これも1種の抗加齢医学ですね。

去年父の日に、憧れの親父ミュージシャンのランキングをFMでやってました。2位はスティング(54歳)、1位は当然のようにエリッククラプトン(60歳)でした。かっこいいもんなー二人とも。あの年でどうなってんでしょう。スティングなんて禿げてても、かえってそれがシャープな感じを増しているという気さえします。目指しましょうぜ、ご同輩。いや、ほんまに。今やスティングでもクラプトンでも思いのままです、少なくとも頭髪に関しては。

新年のヨーダ

年が明けてはや10日が過ぎた。生まれてきてからの日数に対して1日の相対比が小さくなるから、年を取ると1日が早く感じるのだという説を読んだことがある。1歳児の1日は今までの人生の365分の1、僕はいくらになるのだろう。その50倍か。50倍早く感じるのかな。ともかく新しい発見が少なく繰り返しになるから、日々の記憶がとどまりにくく早く感じるのだろう。興味があって面白いことは記憶にとどまりやすいのです。毎日面白く過ごしたいなー、子供のように。少年の心に大人の財布です、理想は。逆はいけませんですよ。実際はそうですけど。

さてお正月でおめでたいことでもあり長寿の話題など。慶應義塾大学老年内科の広瀬信義部長が百寿者(100歳以上)213人にアンケートして長寿の秘訣を探ったレポートが2006年1月5日発行のMedical Tribuneに載っている。面白いところを少しピックアップしてみよう。

性格について。男性は神経質な人が多く、1匹狼的な自分の気の向くことを好きなようにするタイプ多し。女性は外交的で決められたことをきちんとやるタイプ、同性に慕われゴッドマザー的な人が多い。両性とも健康に敏感で、健康に悪いことは止め、いいと言われることは実行する傾向あり。楽天的でおおらかな性格に関係するといわれている遺伝子が特に女性に多いという報告があるが、両性とも幸福感の強い人が多い。家族は良い人が多く長寿者を大切にしている。

医学的所見については百寿者のほとんどが今まで大きい病気をしたことが無く30%が無病であった。特に糖尿病は圧倒的に少ない。アディポネクチン(脂肪細胞で産生されるインスリン感受性ホルモン)濃度高くこれが抗炎症、抗糖尿病、抗動脈硬化作用を持つのではないかと考えられている。

今までの食生活は同定できないが現在の食事を見ると、体重当たりの摂取カロリー、蛋白摂取量、脂肪の対総エネルギー比は若年者とほぼ同等であった。百寿者の平均余命をみると、乳製品、果物を良く取っているグループが一番長い。
認知症の問題もあるが、相対的に賢く、知恵がある人が多いという印象がある。学校の成績がよく高等教育を受けている人が多い。様々な困難に際し適切な判断をし、生き抜いてこれた人々である。

これは余談だが血液型はB型が多く、血液型は糖鎖で決まりそれが関係しているのか研究する必要があるとのこと。

どうです?イメージわきました?やはりとてもバランスのいいdecencyな感じがしますね。人生太く短く、好きなもんだけ食って嫌いなものは食べない。毎日嫌なことも多いし煙草は離せずアルコールも止められません。太ってきたのもちょっと気になるけど仕事も忙しいし運動する時間も医者に行く時間もないよ!100歳まで生きたってしゃあないよ!という方は間違いなくご希望通りになる感じがします。

よくあんまり長く生きたって仕方ないよという声を耳にするのですが本当にそうかな。今の医学の進み方は人間をかなりのところまで丈夫で賢明なままもっていくことが可能な気がします。たとえアクシデントがあったって移植したり機械を使ったりサイボーグのように生き延びていくのって面白くない?僕の診察デスクの上にはヨーダの精巧なフィギュア(めちゃ小さいぞ!自慢にならんか・・・)が飾ってあるのですがこいつが僕の理想です。ダースベーダーじゃないよ。「フォースの庇護がありますように」あなたにも僕にも。そしていい1年でありますように。

Decency

実はこのごろアルコールを飲まなくなりました。働き出した25,6歳のころからナイトキャップというか、寝る前に少量のアルコール(時に大量)を本や音楽とともに消費するという生活が定着していて、まったくアルコールの無い日というのは本当に今まで年に数日だったと思うのですが、何なんでしょう、1ヶ月ほど前から突然やめました。ひとつの理由はアルコールを飲んだときの現実から離れた感じ、真実に薄い膜がかかった感じがあまり好きでなくなった。リアルな現実のほうが面白い(ほんまかい!)というのがあります。もうひとつの理由は・・・

内田樹先生という方が神戸女学院に居られます。僕は先生の(といってもほとんど同年輩のようですが)著作を読むたび、なんと頭のいい人がいるのだろう、違った視点で物事を捉えられる人がいるのだろうかと目の覚めるような思いがします。で、先生の最近の文章の中に、僕の心に非常に強く訴えかけてくるものがあったのです。引用します。

とりあえず、ひとつだけわかっていることがある。
それはどんな場合でも、とりわけ危機的状況であればあるほど、「他者からの支援」をとりつける能力の有無が生き延びる可能性に深く関与するということである。
他者からの支援をとりつけるための最良のアプローチは何か?
たぶん、ほとんどのひとは驚かれるだろうけれど、それは「ディセンシー」である。
「強い個体」とは「礼儀正しい個体」である。
この理路は、わかる人にはわかるし、わからない人にはわからない。

Decency・・・上品で礼儀正しいこと。 「丁寧」という言葉もありますが、これは兵士の盾に関係する言葉で最強の防御であるというのも別の方の著作で読んだことがあります。礼儀正しく丁寧である、きちんとしている、これらはこの大変な、でも面白い時代を生き抜く上で強力な力となる、このことを僕は大いなる共感を持って支持します。

この態度は必ずしも他人に対するときだけではありません。物に対しても、出来事に対しても、そして自分自身に対してもです。で、僕は自分自身の肉体に対してもディセンシーであろうとアルコ−ルをやめたのです。

だからたまに飲むときはですねー、これは礼儀も理性も何も無くていいや!というわけで・・・(最悪じゃん)。

「型」は大事よ。

武道とか芸道において「型」ってのがありますね。斉藤孝によると「型」は要約力の結晶であり、様々な動きの中で、最も基本となる動きに動作を限定していくことで全体を押さえることが出来る。これが型の基本であり、これは現実の多彩な動きをいわば要約したものである、ということになる(「できる人」はどこがちがうのか ちくま新書)。基本である「型」を何度も繰り返し自分のものにしていくことで発展していくことが可能となる。

「型」にはいろいろあるが、その一つと言っていい呼吸法というのは結構多くの武道で取り入れられています。今下手の横好きを絵に書いた太極拳を細々とやっていますが、そこでも呼吸はよく言われる。何でもこのては腹式呼吸でゆっくりというのが共通点です。

で、面白い文献を見つけました。Hypertensionという権威あるアメリカ高血圧学会の雑誌ですが、「本態性高血圧においてゆっくりとした呼吸は圧受容体感受性を改善し血圧を下げる」2005,46:714-718というのです。本態性高血圧というのは皆さんご存知の普通の高血圧のこと。圧受容体というのは人間が持っている血圧のセンサーで常に血圧を監視しており、一定の血圧に保つように働いています。高血圧の方はこのセンサーが少し鈍くなっている。ゆっくりとした呼吸(1分間に6回の呼吸。分15回の速い呼吸の場合と比較)はこの感受性を改善し血圧を下げるというのです。

自分で血圧を測ってみるとわかりますが、何回か測定するとき、ゆっくりとした呼吸を繰り返していると下がってきます。吸気、呼気でも心拍数は変化するし、交感神経、副交感神経の反射や心臓への血液流入量の問題などいろいろな因子が関係してきますが、確かにゆっくりとした深い呼吸は血圧を下げる。気分も落ち着いてくる。

「悲しいから涙が出るんじゃない、涙が出るから悲しくなるんだ!」という台詞を読んだことがありますが、然り!この文献でも高血圧患者のもともとの呼吸数は増加していると報告しています。人間は自律神経という、本来自分では意識して調節することのできない血圧や脈拍や発汗などをつかさどる神経があるのですが、呼吸は本来自律神経が支配する領域でありながら自主的に変化させることが簡単にできる唯一の運動であり、それがため自律神経の領域にこちらからアクセスすることが可能な唯一の運動であると考えられます。血圧が高くなると呼吸数も早くなっているが、意識してゆっくり呼吸すると血圧も落ちてくるのです。ヨガの行者は血圧や心拍数を自由にコントロールできるようですが、これは呼吸がポイントになっているに違いない。

で、「型」です。丹田を意識したゆっくりとした腹式呼吸。これを生活の型にしようでないか。武道の達人にはなれないかも知れないが、少なくとも今よりは健康的になると思うよ。そこから大いに人生を発展させよう。

さむー!風邪は生活習慣病だって。

さむー!!寒なりましたねー。紅葉は昔より1ヶ月遅くなってるようですが、急に気温が下がったのでさぞ色付きもよくなるでしょう。寒くなると風邪、風邪といえば医者(というのも今は昔という感じになりそうなご時世ですが)というわけで、季節労働者である開業医が忙しくなってくるのが冬であります。で、診察をしているとちょっと気が付くこと。何度も風邪をひく子供さんがいるのですね。ほんまによー来るなーと思っても「まいど!」とは言いませんがお母さんもなんとなくきまり悪い感じで「何か異常があるんでしょうか?」と尋ねられることがある。栄養状態とか貧血、免疫系の異常とか身体上の問題がないか心配なされてるわけで、ま、ほとんどの場合なにもありません。むしろこう尋ねられるお母さんはよくできた方が多く、実際の回数は平均的です。むしろこちらが心配になるくらい来られるのにあまり自覚のない親御さんが問題です・・・というところでちょっと面白い文献を見つけました。

「多項目の自動解析による子供の生活習慣と風邪の相互影響の評価」昨年、健康科学学会誌に掲載された東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科から出た論文です。4年間に渡り10都道府県から1万人(6から15歳)を対象にアンケートを取ってそれを解析されている。結果を一部抜粋すると、【風邪の罹患頻度との間に有意の傾向が認められた子供の家庭生活】1)テレビを見る時間が長い、2)病気で長期入院の経験あり、3)保護者が口やかましくなりがち、4)保護者が子供の主張を無視しがち、【有意の傾向が見られた子供の食行動】1)無理に食べている(間食が多いということのようだ)、2)ファーストフードをよく食べる、3)おいしく食べてはいない、4)飴、ガム、チョコレートをよくとる、5)副食として冷凍食品が多い、6)野菜を摂らない、7)味噌汁を摂らない、8)保護者は楽しく食事をとることに対する関心が低い、【有意の傾向が見られた子供の交友関係】1)運動が好きでない、2)休み時間も皆で過ごすことが少ない、3)学校では友達がいないと感じている、4)学校が好きでない・・・でその結果として引きこもりがちな子供が多いようである、といった風な結論になっている。

ほんまかいな!というのが最初読んだ印象。あまりにステロタイプでないかい。風邪の診断自体が確実でないかも知れず(アレルギーとの差異は難しい)、風邪をひきやすい子供の精神構造に及ぼす影響などちょっと偏見ではないかしらと思ったりもしますが、何しろマスが大きい。統計としては十分成立しているのでやはり傾向があるのかな・・・。というと風邪も生活習慣病ではないか!ここから出てくるのは身体的にも精神的にも免疫機能が弱くなりそうな生活です。特に親御さんが放任か過保護か、子供とのスタンスがまずそうな感じが印象に残ります。

大人の風邪も、自分で自分の面倒がちゃんと見れる人は風邪が少ない印象があります。よく「お医者さんは風邪ひかないんですか?」と訊かれます。そんなわけはないのですが、比較的あやしいと思うとすぐ手を打つ(ひいた気がして瞬時に薬を飲むと重症化しない印象があります)のは大きいと思います。風邪の人に多く接しているとそれなりに抗体の種類も多くなっているのだろうとも推察しますが(本当に医者は風邪をひきにくいのか?それはなぜか?調べても文献は見当たりません。どなたかご存知の方は教えてください)。昔から「あほは風邪ひかない」と言いますが、悪い意味ではなく、いつも楽しく笑っている人、生活を楽しんでいる人はひかないんでしょうね。大人の風邪は自己責任。生活習慣病との認識をもって今年の冬を乗り切りましょう。しかしこのごろは何でも生活習慣病ということになるな。いろいろ読んだ中でも、一番納得したのは後藤芳徳という人が言っている「もてないのは生活習慣病」というやつです。鋭い!

口先で生きる

人間の3大欲望って何だったっけ?

確か性欲と金欲と名誉欲では?

・・・なるほど、欲望はその人間を語る。君の場合はそうかもしれんが、一般的には食欲、性欲、睡眠欲ということになっている。年をとってくるとそのどれもがだんだん枯れてくるのだが、患者さんを診ていると食欲が最後まで保たれている人は強いな。でそういう人はやはり歯が丈夫な人が多い。歯科医師会が8020運動というのをやっているのを知ってる?これは80歳で20本以上の歯を残そうという運動で、オーラルケアの先進国スウェーデンでは既にこの目標が達成されている。日本では1999年で、80歳での歯の残存本数の平均は8.21本だ。

かなりお寒いですね。

確かに。健康というと内臓とか筋肉とか全身的なことに目が向きがちだが、歯というか、口腔内のケアは長生きのためにとっても大事なのだ。来年改定される介護保険に介護予防給付として口腔ケアが入ることになったが、これはそのことが一般的な認識となっているというひとつの証明でもあるな。介護の領域で特に大事なのは、口腔ケアが肺炎を予防するという証拠があるからだ。

それはまたどういう関係で?肺炎って風邪からなるんじゃないんですか?

肺炎は日本における死亡率の4番目だが、その92%は65歳以上の高齢者だ。抵抗力が落ちているとか、いろいろ病気を合併しているとか要因はあるが、繰り返す誤嚥がその大きな原因だ。別にいつも食事のたびにむせていなくても、夜咳をしていなくても、多くの高齢者で睡眠中に唾液が肺まで誤嚥されているというデータがある。夜間は嚥下や咳の反射が低下しているのだ。食事後に口腔内を観察すると、食物のかすが残っている高齢者が、特に脳梗塞の人に多いのに気づく。足や手と同じように口にも麻痺の影響が残っているのだ。虫歯の原因にもなるし、著しく不潔なためそれを誤嚥すると肺炎となる。特に寝る前に歯磨きをちゃんとしないといけないのが分かるだろう。ブラッシングは単に細菌を除くというだけでなく口腔内の知覚神経を刺激し摂食嚥下機能を向上させることも実証されている。何は無くても歯を磨け、うがいをしろ!

了解。ブラッシング以外にもなんかないんですか?

嚥下運動や咳反射の上でサブスタンスPという物質が非常に大切で、神経節におけるサブスタンスPの減少が誤嚥を生じやすくする。血圧を下げる非常にポピュラーな薬であるアンギオテンシン変換酵素阻害薬や、軽度のパーキンソン病などに用いるアマンタジンという薬はサブスタンスPを増やす作用があるということで、使用すると肺炎の発症率が3分の1や5分の1になったとかいう報告がある。しかし実際に使ってみると効いてます!という手ごたえはあんまりないです。ちゃんと口腔ケアをするほうが大事な感じがするね。

そうかー。しかし歯が悪くなってから頑張ってもしんどい感じがしますね。その前にちゃんとしとかなきゃ。

その通り。まともだな、めずらしく。最近は歯石を取ったり定期的に歯科に通う人もいるがあんまり口には注意を払わなかった。昔アメリカに行ったとき、みんな異常に歯並びがきれいで白くて、それは矯正を一生懸命するからと聞いてそのときの自分の気持ちにはぴったり来なかった。八重歯とかそういうのはかわいいと思わないのかと思った記憶があったが、美意識の問題かね。日本で口腔ケアが遅れたのはそういうのも関係あるのかな。わからん。最近は審美歯科というのも出来てきたし、これからは口だな。ちゃんと手入れに通うように。

はい、そうします。先生は歯科医でしたっけ?

(無視)食べることもそうだが、日本というか東洋にはあんまりおしゃべりはみっともないという感覚があるだろう。ところがアメリカのやつは本当に良く喋る。驚く位だ。道端で男二人が立ち話をしているのを見て1時間後に通りかかったらまだやってたというのも珍しいことではない。サムスペードというハードボイルド御三家の探偵の一人が悪役の親分に捕まったとき、お前は良く喋るかと聞かれてスペードはそうだと答える。すると親分はそりゃ良かった、無口なやつは喋る内容が無いから喋らないんだ、ちゃんと喋るには才能が要るんだよというようなことを言う。それを読んだとき面白いことを言うなと思ったが、どうもそれは正しい。年をとるとお喋りをするというのはボケないということでとても大切だ。自分を他人に対してアピールすることは呆けの大きな予防だ。よく食ってよく喋るという、つまり社交に上達しろってことだな。口は社交なのだ。

それが結論ですか。口先だけで生きてるとよく言われるんですが少し安心しました。もっと磨きをかけるようにしよーと。