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小ネタ集

 4月になってもなんとなく肌寒い日々が続いておりますが皆さんお元気ですか?開業医は季節労働者、毎年1月2月はインフルエンザがはやって大忙しとなるのですが、今年は3月がピークという変な年でした。しかも今日でさえインフルエンザA型、B型の患者さんが発生するという具合です。で、インフルエンザ、風邪に関するトレビアを少し。

   ① インフルエンザは夏でも発生している。迅速測定キットが普及したおかげですぐ判定できるようになったのですが、軽い夏風邪でもインフルエンザウイルスが原因のことがあるというのがわかりました。
   ② インフルエンザの30%は37℃台の微熱である。インフルエンザというと高熱が定石ですが、今年は無熱のインフルエンザの人(症状は関節痛、咽頭痛)も2人経験しました。
   ③ インフルエンザというとタミフルが漏れなくついてきていましたが、例の副作用問題で使わなくなると、1日だけの発熱で終わる人や本当に軽症で終わる人も結構多いというのがわかりました。単なる風邪でも経過が違うので、まあ当たり前ですが。
   ④ 風邪がはやるとうがい薬を希望される方は結構多いのですが、一般的なイソジンでうがいしても風邪の予防にはあまりならず、むしろ単なる水道水で15秒のうがいを3回連続、1日3回行うと有意に風邪の罹患率が下がる(Am J Prev Med 29:302-307,2005)というデータがあります。イソジンは口腔咽頭の正常細菌叢を破壊するか粘膜障害を起こすためと考えられています。

 ④は京都大学からの論文ですが、こんな一般的な話題を論文にするのは日本では珍しいです。日本の研究者はすごく優秀で「Nature」「Science」とかいった泣く子も黙る4つの基礎系トップジャーナルにおける日本人の掲載論文数は常に5位以内、日本より常に上なのは米国のみという抜群の成績なのですが、臨床系になると10位台に低迷しています。

 向こうの臨床雑誌はハイクラスな「Lancet」でも腰痛の場合マットレスは硬いほうがいいかなんていう研究を載せていて(結論は柔らかくても変わらない)、かなり実際的であります。診療のちょっとした疑問が実はちゃんと研究されていなくて経験的に処理されているケースは案外多く、診療所発の実地に役に立つクリニカル・リサーチが最近望まれています。で僕も少しでもお役に立とうと、一介の診療所でありながらパワーリハビリテーション学術大会で当院は2回続けて発表していて、今3回目の発表目指して抄録作成中です。で、勉強づいていて今回初めてタイトルの「外来ウォッチ!」らしいブログになりました。風邪を引きそうです。

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こんな感じでやってます(ウソ)

60歳のつもりで

 なんとなく机の上にある「アエラ」を見ると記憶に有る顔が表紙になっている。誰だったっけ?左隅に「東京大学医科学研究所所長 河岡義裕」と書いてあった。2年位前に偶然見た「情熱大陸」で世界中を駆け回っていたウイルス学者だ!確か活躍のメインはアメリカだったはずだ。解説を見ると、おお!俺と同じ年じゃないか!神戸生まれで神戸高校を出て(知ってる奴が何人もいるぞ)北大を卒業した獣医さんである。昨年大変権威のあるロベルト・コッホ賞を受賞した。テレビでもそうだったが格好がよろしいのだ。ハンサムである。確かビートルズのOh, Darlingが一番好きだと言ってたが学生の時にバンドをやっていたようだ。

 彼の言葉。
「対象は何でもいいんです。人生を楽しんでいるかが大切です。」
取り組んでいる研究が楽しくて、朝起きると一刻も早く研究室に行きたいという生活を続けているうちに研究者になっていた。
「メールがたまるのが恐ろしいこともあり、ここ数年、休暇はとっていません。週末も、たまった仕事をこなすのにちょうどいいので、もちろん働いています。」
 全力疾走は60余歳で無くなった父親や親戚の影響かもしれない。
「僕は人生60年のつもりで生きているから、今、頑張っているのです。」

 抗加齢医学では今のところ人間のマキシマムの寿命は120歳である。僕も当然そのつもりである。彼と比べるとダブルスコアだ。でも業績は、そこまで生きてもとてもダブルはおろか、2分の1も3分の1もいかないだろう。でも60年のつもりで120年生きれば、少しでも近づけるかもしれない。僕は今まで目標寿命は120歳と言ってきたが、60歳のつもりで120歳まで生きると少し変更しよう。

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It’s him !

ごるふな人生

 ゴルフのメンタルテクニックの記事を読んだ。またゴルフかよ!とお嘆きの貴兄に、僕は言いたい。僕も5年前まではゴルフを馬鹿にしていたのだ。「芝生の上のマージャンじゃん」。でも間違いでした。奥が深い、本当に大人のゲームだと思います。そのポイントは、どのスポーツよりもメンタルが作用するところです。ゴルフのスイングは自己不信との戦いという台詞もあります。いやー、渋い。

 4つの提言。①ミスはその場で20秒だけ反省。②そして必ず「次」に集中。③立っているときも歩いているときも、背筋を伸ばし目線を上げる。④そして微笑むかのように口元を緩める。

 いやー渋い。おっさんは何をしても人生に似ていると言いたがりますが、ゴルフは本当にそんな感じだ。上の4つも人生にそのまま当てはまりますが、他にもギャンブルをすると失敗の確率が高い、でもしてしまうとか、いかにミスを少なくするか、根本的に自制心の強い奴、地味だが確実な奴が強いとか。ふてくされるのはまるでだめとか。明るく上品にいきましょう。

 ゴルフは自己申告ですが、あまり悪いとついましに言いたい誘惑に駆られる。そんな時、最愛の人が常に見ていると考えよ、という台詞もありました。そのつもりでプレイせよと。人生も同じであります。そのつもりで生きましょう。実際でもその方がいいけどね。

 というわけでゴルフの本を読んでいると色々実生活を考えることが多い。変な人生論より心に響きます。やっぱり両方とも達人じゃないからでしょうねー。でもなんかあんまりすごくうまくなりたくないような気もしたりして、変なの。人生の達人なんて単に小利口な安全第一のおっさんていう感じしかしないもんな。でもゴルフはなりたいぞ。

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こういきたい!

 

800歳?レスベラトロール?1000本?

 日本エイジマネージメント医療研究機構・発足記念講演会に行ってきました。タイトルは「抗加齢医療の健全な普及に向けて」。抗加齢医学会が主体ですが厚生労働省、文部科学省、農林水産省が後援で、抗加齢医学に官の後押しがはっきり付いたと思わせる会でした。パーティでは医学関係者というより議員官僚が目立ち(元阪神の江本氏も来ていた)、麻生外務大臣まで挨拶に立つという華麗なる一族か!という会だったのですが、基調講演をされた慶応の坪田教授、マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガランテ教授の話が面白かった。

 昨年ハーバードで開かれたエイジング研究会の話ですが、線虫という1mmに満たない生物は遺伝子構成が人間と75%同じということでよく研究に使われます。その線虫の遺伝子を1部いじることで寿命(もともとは3週間)を10倍に伸ばすことが可能になったという話。人間でも可能と考えられており、そうすると今まで人の寿命は120歳が限界と考えられていたのですが800歳まで可能となる。

 カロリーを制限すると寿命が延びることは定説ですが、その機構にSurtuin femilyという蛋白質が関わっており、それを人工的に活性化することでカロリー制限せずに寿命が延びる可能性がある。レスベラトロールという赤ワインに含まれるポリフェノールにその作用があることが実験で明らかにされた!しかし人間で作用を現すには1日1000本の赤ワインを飲まなくてはいけない。

 うーむ。まだまだ研究の余地がありそうですが人間が元気に寿命を延ばせる可能性は本当にありそうです。800歳まで元気に生きている人間が多くなると、その叡智を持って世界中に戦争なんぞ無くなるでしょう。理想の世界が実現できそうです。賢者が多くなる、それだけでも抗加齢医学の意味がありそうです。

 会で偶然会った僕の後輩のM先生はレスベラトロールの錠剤を手に入れてもう飲んでるとのこと。僕はその前に規則的な運動などやるべきことがあるので、そいつをやっつけてから考えることにします。まあ僕は長生きしてもあまり賢いことはしないような気がしますが。

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飲みすぎは毒です

タミフル

 朝起きて新聞を見てびっくり。タミフルの10代への投与を原則見合わせるよう厚生労働省が発表したとある。うーむ、昨日10代の患者さんに説明の上だけど3人投与したな…。連絡することにして、これでインフルエンザの際のタミフル投与は希望する大人だけにしようと決めた。

 調べた範囲では、タミフルの異常行動への関与は因果関係がはっきりしない。小児科医を対象にした数千人単位のアンケートでは、インフルエンザの際に異常行動を起こす例はタミフルに関係なく認められ(発熱のせいかもしれないし脳症かもしれない)、発生率はタミフル投与例と非投与例との間に統計的に相違無しであった。10代だけに多く発生する原因もはっきりしない。

 テレビで見た記者会見でも原則的に因果関係が無いと考えているが発生件数が増加しているので、というようなちょっとすっきりしないものであった。仕方ないか。世界的にあまり報告が無いが、世界のタミフルの相当量を日本だけで消費しているもんなー、インフルエンザの迅速測定キットも世界中の95%以上を日本が消費しているのだ。ワールドスタンダードでは、インフルエンザはちょっときつめの風邪ということになっていて、対処法は普通の風邪と同じである。タミフルはいい薬だと思うが、鳥インフルエンザのために取っておいて、これからは日本も世界標準でいくほうが自然かな。

 高齢者の死亡例が報道されてからインフルエンザへの恐怖心がマスコミによって煽られたような気がする。ノロウイルスもそうだけど報道は一般受けを狙ってやや扇情的であり、またそれに過敏に反応する傾向があるとおもうが国民性なのでしょうか。

 インフルエンザもノロウイルスも大昔からあるもので、もっと泰然としてていいと思う僕は医者として怠慢かな。

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だけどよく効きます。

なにわNST倶楽部

 なにわNST倶楽部の会に行ってきました。パネラーとして。NSTとは栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)の頭文字をとったもので、いろいろな職種(医者、看護師、薬剤師、栄養士、言語聴覚士、地域医療連携室の関係者など)の人が集まってチームとして活動し栄養状態に問題のある患者さんをよくしようというものです。市立医療センターや城東中央病院などが中心となって結成され、今回地域医療での病院と診療所間連携がテーマとなったため、ひょんなことから私が開業医代表として少しお話をすることになりました。うちの法人のケアマネージャー(彼女は栄養士として)、お世話になっている調剤薬局の先生も同じく参加です。

 栄養の問題は本当に大事なのですが、医学教育でも臨床的にも軽視されてきた歴史があります。アメリカの医学書には最初に載っているのですが。しかしやっと栄養管理は重要との認識が出来てきて病院ではNSTは必須となっているのですが、開業医における認識はまだまだです。なにわNST倶楽部にも開業医の参加は僕が最初とのことでした。

 午後7時から始まり、最終的に懇親会も終わったのが10時半近くだったのですが、80名近くの参加者はほとんど残っておられ、非常に熱いものを感じました。医慮センターの西口先生、城東中央病院の大場先生、田中さん、済生会野江病院の竹内さんなど情熱的で愉快なナイスガイたちと知り合えたのは大きな収穫でした。微力ながらなんとか開業医としてNSTの普及に努めたいと思います(最初は場違いでここはどこ?なに話すの?という拉致状態の感じがしていたのですが、みんながやたら持ち上げてくれたので単純に大いに乗り気になっている)。皆さん、どうも有り難うございました。

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覚えておくように。

 

微笑みは春風にのって

 行きつけの散髪屋で置いてあったゴルフ雑誌をめくっていると(おっさんだねー)、「笑いながらスイングする」という記事があった。笑いながら?あまりにひどさに思わず笑えてくることはあるけどなぁ、と思いながら読んでみると、結構プロゴルファーの中で微笑みながらスイングしている(もしくはそう見える)人はいるらしい。アニカ・ソレンスタムは結構有名で、タイガーも写真によってそう見えるときがある。

 微笑んでいると身体は脱力している。これはスイングする上で非常に大事なことで、意識して微笑んでも脱力が起こる。ゆえに微笑みながら振ればいいんじゃないかという趣旨の記事であった。人は悲しいから泣くんじゃなく、泣いていると悲しくなるのだというのは生理学的に正しい。微笑んでいると気持ちも変わってくる。だからつらい時には笑っていようというのはまるで演歌だがこれも正しい。表情や態度は感情を支配するのである。

 ゆえにスマイル。常にスマイル。悲しい時でも憂鬱な時でもみんなスマイル。そう心に思って楽しく外来をした。これは心からお勧めする。ゴルフはまだ試してない。結論が変わる可能性はある・・・

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これは難易度高い・・・

 

マキアヴェッリからワンダー

 今日の入浴本は塩野七生の「マキアヴェッリ語録」である。マキアヴェッリの名は会田雄二の「決断の条件」ではじめて知った。高校時代か。中世イタリアの辛辣な思想家で権謀術数の代名詞のようであるが、その物の見方は客観的、自然科学的で思いいれがなく涼しげである。

 「人間というものは、必要に迫られなければ善を行わないように出来ている」「衆に優れた人物は、運に恵まれようと見放されようと、常に態度を変えないものである」「謙譲の美徳を持ってすれば相手の尊大さに勝てると信ずるものは、誤りを犯すはめに陥る」・・・

 そうですか・・・。周りがいたるところ敵だらけという生活で磨かれた知恵である。うなずくところ大である。だけど不思議に悲観的にはならない。自分自身も含めて人間の矮小さを知らしめてくれ、それはいっそさわやかだ。このようなもんだ、という客観的な認識をつけてくれるのは快い。

 「ふーん」と思いながら風呂から出るとTVで神が歌っていた。スティビー・ワンダーだ!!
I just call to say I love you.
彼の歌を聴くと人間の素晴らしさを信じたくなる。そういえば「マキアヴェッリ語録」の最後はこれである。「天国へ行くのにもっとも有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」。

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  デュエットは無理?

 

抗加齢より好加齢

光陰矢のごとし。しみじみ。Pearlsの更新日時をホームページで見るたびに感じます。この前は1月かー。もう3月じゃん。ブログの「外来ウォッチ」も、ちょっと更新していないとあっという間に日がたってびっくりしますが、それはいかに日常業務に追いまくられているか、仕事の繰り返しの毎日であるかということである。これでいいのか、院長。

 この人は何を言っているのでしょうかとお思いの方もおられるかと思いますが、実は結論を言いたいがための枕で御座います。この前ブログでも書きましたが抗加齢医学会主催のセミナーに行ってきました。講師、受講者あわせて総勢30名程度の非常に内容の濃いセミナーで、大学教授、助教授が5人も参加され、抗加齢クリニックを運営されている方の内容の濃い話もフォーマル、インフォーマル聞くことが出来て大変勉強になりました。

 その中で「カロリー制限」がこれからの抗加齢医学の一つの柱になるという話が出ました。単に低栄養ではなくて、十分なビタミン、アミノ酸など必須の栄養は取りながらもカロリーのみ制限するとすべての動物で寿命が延びることはほぼ定説化しています。なぜか?これも今多くの説が出ていて、実際にカロリー制限をしなくても同効果が得られる薬品の開発(ある酵素が増えるからそうなるという説はいくつか出ていて、それを薬品で再現する)もアメリカではベンチャー企業がすでに始めていますが、実際に食事制限をして寿命を延ばそうという団体もあるようです。痩せこけ骨と皮になりながら「快調です、健康は素晴らしい!」と語っている人の映像(アメリカ人らしいなぁー)は僕も見たことがあります。

 「健康のためなら死んでもいい!」というのは健康おたくをからかう台詞ですが、本当に冗談ではなくなってきます。何のために抗加齢医学はあるのか?

結論。それは毎日をご機嫌に過ごすためにあるのです。毎日が楽しい、こんな生活を出来るだけ長く続けたい、そのためにあるのです。単に寿命を延ばすことに意味はない。楽しく面白い生活を出来るだけ長く続けるため身体精神のコンディションをハイに保つ、それが目的です。抗加齢医学というのは誤解を招きやすい。アンチエイジングではなくアメリカでもヘルシーエイジング(健康な加齢)やオプティマルエイジング(望ましい加齢)という言葉を使う場合も多くなっていますが、僕は抗加齢ではなく好加齢という言葉を使いたい。グッドエイジング、ラブエイジングという感じですね。

そう考えれば目指すものは明らかになってきます。楽しい生活とは何か、自分がなりたい自分、やりたい生活とはどんなものなのか、まずはっきりそのイメージを持つことから始まります。

今度今の診療所に好加齢クリニックを部分的に開きます。皆さんの楽しい生活のために出来るお手伝いをやっていきたいと考えています。でもそのためにはまず自分がラブエイジングな生活をしていなければだめですよね。冒頭のパラグラフがここでつながる。こんな生活でいいのか、院長?慶応大学の眼科教授で好加齢医学会会長の坪田先生は「こんなに遊んでいいのかというくらい遊ぶことは脳の抗加齢になる」とある講演でおっしゃっていました。いいかい、やるぞー(と単なる言い訳であった)。

ハッピー・バースディ・ツー・オレー♪♪

 ・・・実は昨日は誕生日でした、と言っても別に大層なことではないですが。

 朝からインフルエンザと花粉症のツイントップで大爆発していて外来が1時過ぎに終わってから往診。そのまま飯も食わず予定されていた会議に突入し、午後診まで1時間しかないではないか、俺の生命線であるスイートなお昼寝の時間が無い!とあせっていたら院長室に隣接した本部から「先生!」の声が。

 そこにはケーキが用意されていました。ううう、余は嬉しいぞ・・・

 みんなも仕事で忙しく、部屋にいた数名で祝ってくれたのですが、なんか恥ずかしいな。他の人を驚かせてお祝いするのは僕は大好きなのですが自分のことになるとぎこちないです。いやー、こういうのに慣れてる人間になりたいな。

 昔そこそこの年齢の女性が「誕生日なんて年をとるだけで嬉しくないわ」なんて言っているのを聞くと、素直に喜べよと思ったものですが、齢50を越すと確かに大喜びはできんなという気もあったりする。でも、いつでもありがとーとニコニコできる男のほうが絶対素敵だ、そうしようと思いました。

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食いすぎた・・・