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すげー

 どんな音楽をよく聴きますかと尋ねたら(まあ、あんまり訊かないけどさ)、大概「何でも」とか「流行ってる曲」とか当たり障りのない答えが返ってくる。そんな時、車によく乗る人だったら「今、車で何聴いていますか」と訊くとポイントが絞れる。

 僕の答えはマイルス・デイビスの「フォア・アンド・モア」だ。といっても賭けてもいいが99.9%の人が無反応だろう。マイルスの中でもあんまりメジャーな作品じゃない。わかるやつは相当な変態ジャズファンだ。これは村上春樹氏が好きなマイルスのアルバムとして語っていたのを覚えていて(勘違いかもしれない)借りてきた。

 すごいぞ、こいつは!!!あるコンサートのライブアルバムだが、バラード系は「マイファニーバレンタイン」というアルバムに集められていて、こいつは人気がありメジャーだ。「フォア・アンド・モア」はぶっ飛ばしている曲ばかり集められている。飛ばしすぎ。

 ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウイリアムスという正真正銘、気の狂った天才ばかり集まった奇跡のようなリズムセクションと大天才マイルスに挟まれて、普通人ジョージ・コールマンがテナーサックスで大健闘している。えらい!涙が出るなー。おっちゃん、そこまでやらんでええで・・・

 みんなすごいですが、トニー・ウイリアムスのドラミングはすごいを通り越してます。腹に来ます。こういうのは初めての経験でした。

 何十年も前の演奏ですが、全く古びてない。メッチャ新鮮です。フレッシュです。ジャズが好きでよかったなーと本当に思いました。朝聴くと明らかにテンションが上がるのがわかります。今月いっぱい、ノロウイルスと対抗するにはこいつです。

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ユウレカ!

 

不良ジジイ

 この前ゴルフをした時、面白いパーティに会った。僕たちの前の組だったのだが、おっさん(というか半分爺さん)3人組で、偶然合ったのだろうが全員黒ずくめのウエアである。面白いのに気がついたのは、みんなものすごく勝手なのである。人相はチョイ悪親父で、ある意味かっこいいのであるが。一人はまんま勝新だ。

 打ち終わると次の人が打ち終わるのも待たないでサッサと前へ歩いていく。「おっさん、危ないぞー」と思ったが、誰が最初に打っても同じである。グリーンでも、自分が終わればとっとと歩いていく。大概悪態をついてである。まあ、うまいわけではないのだ。

 失敗するとクラブを放り投げる。またそれを拾いにいくのが愛嬌でもあり寂しい気もするが。途中で雨が降ってきたが、勝新は打つ時傘を必ず放り投げるのでひっくり返るのである。それをまたさすと、たまった雨でぬれると思うが最後まで変えないのである。

 途中の茶店であったが、おっさんたちはココアと温かい蜂蜜レモンとワンカップ大関(勝新)であった。出るとき、ちゃんと野太い声で「お先に」と声をかけて行った。

 後ろから見ているとなかなか楽しめるおっさんたちというか、不良ジジイグループであった。僕は何が言いたいか。外来で沢山の高齢の方とお話しするが、皆さんいい人で、でもひ弱な感じなのね。年をとるということに不安がいっぱいという感じなのです。

 思わず笑ってしまうくらい自分勝手でもいいんじゃない?今まで頑張ってきたんだし。僕も不良ジジイになりたいです。礼儀正しさを保ちつつ超自分勝手なジジイに。

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まっ、こんな感じね

 

ブンゴウよりマンボウ

 雨が降っている。抗加齢医学会雑誌である「アンチ・エイジング医学」を読む。この雑誌は学会誌にしては画期的に面白く読みやすい工夫をしている。大事なことだ。その中の記事で面白いものを紹介しよう。
 
 「大脳辺縁系共鳴」という言葉がある。大脳辺縁系は感情を司る部分だが、これは外部に開かれているところがあり、周囲の人の感情、辺縁系と響きあい影響しあうという。誰でも感じていることだけどね。不安な人のそばにいると不安は伝わり、幸福な人のそばにいれば幸福を体験できる。犬には犬の好きな人がわかり、子供も子供好きがわかる。

 マンボウという魚がいるが、こいつは大脳辺縁系共鳴作用が強いらしく、病んだ魚はぷかぷか浮いているマンボウのそばに集まってきて、一緒にぷかぷか浮いているうちに癒されるらしい・・・ほんとかな。

 いずれにしても機嫌のいい奴のそばにいる方が楽しいに違いない。というかいつも機嫌よくしているほうが自分自身にとっても精神身体的によろしい。よく感情はコントロールできないというがそんなことはない。人間の感情はとてももろく変わりやすい。工夫すれば簡単に変えることが出来る。その気になるかどうかだけだと僕は思っている。

 太宰治という人は、自分の嫌いな人とわざと率先して付き合ったらしい。そして気分を屈折させ文学の糧としていた。いろいろな生き方がある。僕には文豪となるよりもマンボウのほうが魅力的だ。

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ドクトル・マンボウはこういう意味だったのかな?

向かい傷の仙人

 相変わらずシンプルな生活を続けている。仕事が終われば食事をし、入浴し、後は若干の本と睡眠である。アルコールはなく悦楽も少なそうである。仙人である。

 入浴時に読む本を選んで読みながら歩いているとおでこに激痛が走った。半開きのトイレのドアに思い切りぶつかったのである。もう少し下だったら眼鏡は木っ端微塵であった。「あぶねー」とつぶやきながら再び読んでいるとページにぽつんと赤いものが・・・

 「うん?」出血しているのである。鏡を見ると左の眉に1センチほど垂直に傷がついている。向かい傷である。ただでさえ人相が悪いのにますます悪くなってしまった。じっと見ていると頭まで痛くなって眩暈がしてきた。慣れない勉強をしていたために罰があたったのであろうか。

 翌日も眩暈が少し残った。夏の再現か、と思うと少しうんざりしたが結局1日ほどでほとんど消失した。意識すると結構目立つ傷なのだが、気のつく人は少ない。スタッフで3人ほど、患者さんも3人ほど。いかに人の顔なんかちゃんと見ていないかわかる。人間は見たいものしか見ていないのである。もちろん僕もそうだ。

 このまま傷も消えていくだろう。怪我をしたこともほとんどの人は全然気がつかないままに過ぎていく。なんだか何があってもあんまり驚かなくなってくるな。物に動じなくなってくるというか、気持ちの起伏が少なくなってくるというか。これはあまり良くないことに違いない。仙人になるのには、まだ100年早い。男の子の向かい傷はめでたいと昔の人は言った。これは目を覚ませというお叱りか。

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脂ぎった仙人がいいな

片手で持つハンドル、片手に肩を抱いて・・・

 出かける用事があってCDをごそごそ探していると松任谷由美のベストアルバムが出てきました。おぅおぅ、コピーしたなー。最近聴いていなかったので車のBGMはこれに決定。1曲目は「優しさにつつまれて」です。出だしから一挙に20代にフラッシュバックしていきます。僕にとって松任谷由美のタイムマシン効果は強力です。

 何曲か目に「中央フリーウェイ」がかかりました。人気のあった曲でブレイクするきっかけともなった曲ですが、その歌詞「片手で持つハンドル、片手に肩を抱いて・・・」というのを聴いた時、がーん・・・ときました。

 こんなん・・・今でけへんなー・・・・

 すげー年を感じました。状況というより感情的な意味で出来ないですね。二人になると思わず肩を抱いてしまう、ニコニコしてしまう、これって強烈な若さを感じます。おっちゃんがやったら気持ち悪いだけか。

 同世代が集まって宴会があったのですが、野垂れ死に願望を述べるもの、商売としての新興宗教の設立を呼びかけるもの(勿論冗談ですが)、まあろくでもないです。

 車で肩を抱ける50代をめざせ!「片手で持つハンドル、片手に肩を抱いて、実行委員会、50代支部」設立を決意。まぁ、黙殺必至ですが。でもやってやる!多分、でも、少しは、ちょとだけ・・・

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これとは違う

 
 

悲しみのジェットプレイン

 風呂場で医事新報を読む。このクラシックな臨床医学誌は非常に有益な内容を載せているのだが、実地臨床家向けで大学の医者はやや軽んじているところがあった。しかし僕の指導医であったN先生は激賞していて「こんないい雑誌を読まないのはバカですよ」と独特の鹿児島なまりでよく言っていた。異様に臨床のよく出来たN先生はくも膜下出血で53歳で夭折された。合掌。

 しかし週刊誌だからなー、読まないうちにどんどん溜まるのよ、これが。法人本部で3年前のは処分しますといわれているので、せっせと読むことにした。僕はこの野暮くさい、しかし実のある友人のような雑誌が好きなのである。

 アトランダムに読んでいるのが、今日のは旅行医学が載っていた。年末に飛行機で旅行する人もいるだろうから少し面白そうなところを。

 1万mで飛んでいる飛行機の機内は0.8気圧であり酸素分圧も20%低下(すごい数字だ!)、標高2500mの山岳地帯に匹敵。当然肺疾患や貧血の人、心疾患の患者さんは状態が悪化しやすい。気圧の低下は体内の気体の膨張を招き、中耳や副鼻腔の気体の膨張は耳痛、顔面痛の原因となる。腸内のガスが膨張し腹痛の原因ともなる。炭酸ガスの入ったビールやソフトドリンクを飲みすぎないこと。食べすぎにも注意。湿度は20%以下でこれは砂漠地帯と同じ。コンタクトレンズ使用者は角膜損傷を起こすことがあり眼鏡を使用するように。

 すごい環境で旅行しているのである。高地にある砂漠である。しかも満タンの飛行機は一度離陸するとタンクがある程度空になるまで着陸出来ないのは知ってた?重みのため足が折れるのである。降りたくても降りれないのである。ふっふっふ、飛行機といっても乱暴なものじゃありませんか。家に居るのが一番ですよ。

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と言っても乗ってどこかに行きたい

 

 

テオ

 雑誌をパラパラめくっていると(当然風呂の中で)、眼鏡のデザイナーにインタビューしている特集があった。THEO(テオ)というブランドは以前友人に勧められたことがあるのだが扱っている店が京都にしかなくて結局そのままになった。そのブランドのデザイナーが答えている。Patrick Hoetというベルギー人。

ブランド名の由来:姓Hoetのアナグラム。ギリシャ語で「神」を意味する言葉でもある。
自分の眼鏡が似合う人物:極右政党の伸張を大変危惧している。ブッシュ、ベルスコーニ、ブレアらからTHEOフレームを買い戻したいところだが、まだ幸いTHEOフレームを買っていただけてない。
リフレッシュの方法:サウナ、読書(主に哲学的な問答や人間の性格について)、スキューバダイビング、バーで友人とビールを飲むこと。
子供の頃の夢:世界を良くしたかった。今はPatrick Hoetという一人の人間に限定されるけれど。
今後の夢:本を著している。あと大きな野望は幸福なまま死ぬことだ。
生まれ変わるならどの国へ:国境のない世界を夢見ている。

 うーむ、やるなPatrick Hoet。眼鏡デザイナーらしからぬアンサーだ。ほかにもいくつかの質問に答えているが矮小でなく大きな世界を念頭に答えている。写真は憂い顔の中年のおっさんだがいけてるぞ。自分の給料や狭い交友関係だけに頭を悩まして一生を終えることも出来るけれど世界の幸福を考えるべきだよな。

 今度THEOのフレームを手に入れよう。でもちょっと仕事用には無理かもね。

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もうちょっと穏やかなのもある、と思う、多分

 

ノロ!

 メッチャ忙しいです。ノロウイルスが猛威をふるっており、来る患者さん、来る患者さん、俺の顔を見るなり吐くか下痢です。整腸剤ももう1年分は出した気がする・・・。

 しかもこんな時に限って満杯の点滴室でブザーの誤作動が起こる、間抜けなどこかのケアマネさんが間違い電話を二度もかけてくる、俺のエルメスのシルクの白衣に(ウソ)吐物をぶっ掛けられる・・・酸素とともに生存の最低条件である15分の午睡もとれず、夜は夜で、帰ってすぐ飯を食って、生存の最低条件である長風呂から出てくるともう明日は目の前です。

 明日も吐物と下痢が俺を待っている・・・しかも産業医の仕事と20人以上の予防接種で生存の最低条件であるシェスタは風前の灯である。

 開業医は季節労働者。でも忙しく働けるって幸せですよね。感謝しましょう。善人だなー俺って。これで例のオービスの免停が来たらこの世に神はいないということが証明されたようなもんです。裏切るなよー。
 

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暇よりはなー

「萬病之薬」の使い方

 再び開高健。あるかけだしの女性編集者が一緒にした海外の仕事の最後の日に封筒をもらう。

 「私も世界中をあれこれ廻り歩いたおかげでどえらい薬が手に入りましてな。このクスリ、どんな病気にも効くという万能薬や。そやけど一度にたくさん服用したらアカンよ。ちびちびとのまなあきません。これをあなたに差し上げます。病気になったら飲みなさい。」その封筒には「萬病之薬(但シ少量ズツ服用ノ事)」としたためられている。

 ホテルにもっどて開けてみると何とそれは現金だった。かなりの額である。あわてふためいて彼のホテルに電話を入れると「そんなに気にせんでよろしい。私が貧しくて若かった頃、誰かにしてもらいたかったことをやっただけのことです。」

 翌日彼女は開高健を空港で見送る。軽く握手し、それが彼と会った最後となった。

 僕が研修医の頃、仕事が終わった遅くに何人かの同僚と少し遠くへ食事をしにいった。「疲れたからうまいもん、食べようぜ」。ふと近くのテーブルに見たことのある顔、眼科の講師の先生がご友人と食事をされているのが眼に入った。顔を知っているだけで特に話したこともなかったので挨拶もせず我々は騒ぎ、さて帰ろうということになった。お勘定をしに行くと「ついさっき帰られた方が払っていかれましたよ」と店の人が言う。あせって外に出て探すと、運よく話しながら歩いている先生を見つけた。「どうもすいません。ごちそうさまです!」と言う我々に「何いうてんねん。どんどん働いてもらわなアカンから投資投資。またもっと高いもんおごってな!」と笑いながら去っていかれた。

 お金は稼ぐより使うほうが難しい。使い方にその人間のすべてが表われるからだ。

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毒にも薬にも・・・

ワシントン条約

 お気に入りのレストランに行く。特に名を秘すがかなり気に入っている店で、いつも非常に満足感を得ることができるのだが、そのお気に入りで2軒続けて不愉快なものに遭遇した。

 それはなにか?最近よくみられるグルメライター、もしくはそれもどきの女性である。大体チャラチャラした若い(というわけでもなさそうだが)女性のグルメライターなんぞより一般人のおっちゃんのほうがよっぽどいい舌、センスを持っていることが多いが、そんなこととは露知らず、何の努力もせずになれる腰の抜けたポジションなのに大満足している下品さが露骨に出ているのだなー、これが。

 声がでかい。さして面白くないことでも大きな声で笑う。こんな楽しい時間は無いわというようなオーバーな態度。当然お店の人と大変近しいとこれ見よがしに振舞う・・・という最悪のパターンです。殺虫剤を借りてかけようとしたら友人に止められたのですが(「何度もやったけど無駄」)、まあ、殺虫剤ももったいないし。

 下品とは何か。他人のことを考えないで自分本位(特に目先の利益を追求することで)に振舞うこと、というのが僕の考える定義の一つです。割り込んだり、路肩を走る車とかね。できたら女性の方はこの本、「気品のルール」を読んでいただきたい。偏見のない男性にも是非。なんだこりゃ、というタイトルですが内容は鋭いです。

 気品ある女性はすでに絶滅種であり、ワシントン条約で保護されている・・・らしい。僕の周りはそんな人ばかりですけど。

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嘘と思って読んでね