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ED(勃起不全)って単にそれだけの問題じゃなくって・・・

シルデナフィル(バイアグラのことです)発売4周年記念講演会(2003年)で、英国の心臓専門医グラハムジャクソン氏が、EDの人は潜在する冠動脈疾患や糖尿病を持っている可能性があると発表した。もともとEDは精神的な問題だけでなく血管内皮機能障害が原因でおこるとされ、その障害を基盤とする心血管系疾患、糖尿病、高血圧の患者ではEDの発症率が4倍高い。心血管性疾患の症候がみられないED患者50人を検査したところ20例に冠動脈造影で冠動脈疾患が確認されたとのこと。それ以外にも氏は、シルデナフィルが全身の血管内皮機能障害を改善することから、狭心症患者の運動耐容能(胸痛が起こるまでどれだけ運動できるか)を改善、心筋梗塞の発症率や死亡率も抑え、肺高血圧やレイノー病も著明に改善するというデータを示した。

同じ講演会で三井記念病院の山門實氏が、日本人のデータ(平均年齢54歳)で高血圧薬物治療中の人に有意にEDが多い(正常血圧の人の約2倍)ことを示した。

生活習慣病の人に有意にEDが多く、シルデナフィル内服によりEDだけでなくベースにある血管内皮機能障害が改善されるのであればいいとこずくめではないか!薬品会社の主催する講演会で往々にして見られるいいとこずくめの話かもしれず鵜呑みにするのは止めとこうと思うが、論理的には説得力あり。冠動脈疾患のため硝酸薬を使用している人は残念ながらだめだが、それ以外の生活習慣病を持つお疲れでよれよれのおと−さん!ちょっと考慮に値する話かもしれんよ。恥ずかしがらず相談してください。

極意!

昨年末、城東区医師会の会長も務められた松岡先生がお亡くなりになった。先生は電子カルテを始め医療におけるIT化で日本の先頭を走っておられた方である。お元気だった頃先生を見るたび、人間70を超えてもあんなに好奇心が旺盛で新しいことに取り組めるのだなぁと明るい気持ちになった。前向きである。療養中に抗癌剤で少なくなった髪の毛を3つに括り、オバQの扮装でニコニコして写真におさまっておられるのを見ると胸が詰まった。心よりご冥福をお祈りします。

松岡先生は自分が癌であることを突如メーリングリストに告白された。その後先生は自分の治療とその効果を計時的に報告されたのだが、通常の、と言っても粒子線等を含む最新の現代医学の治療と共に代替医療も次々と試みられ、それを読む僕は大いに啓発されたのである。
先生が紹介された1つにサイモントン療法がある。代替療法の一つの大きな考え方である気の持ち方、精神状態と病気との関係性に注目した療法で、単純に言えばイメージ療法ということになるのかな。癌細胞とそれを攻撃している白血球のイメージを描くことで実際に腫瘍縮小効果が認められるというものである。ご冗談を・・・とつぶやきたくなるが実のところ全く否定する気持ちは無い。日本古来の気の療法で同じようなテクニックは多く用いられている。また鬱患者の癌や心血管系の病気における死亡率が普通の人と比較して大なることは多くの研究で立証されている。最近では笑うことで免疫系が賦活され癌患者の余命が延びたという報道は知っておられる方も多いだろう。病は気から。多くの医者はそう感じている。

プラシーボ、プラセボと言うほうが多いか、偽薬のことです。薬が本当に効くか評価するとき、全く薬効は無いが同一形状のプラセボを内服したグループと本物の薬グループと比較する(内容は薬を渡した人も内服した人も知らない)。ホラ、プラセボ群と比較して有意に効果が認められました!効果あり!と薬会社の人は言うのだが、プラセボ群でも何パーセントかは効果が認められる。これはどうよ。臨床の場でも眠れない眠れないと嘆く薬依存の人に、これはとてもよく効くからと言って偽薬を渡すと「効いたー、ぐっすり眠れました!」と晴れ晴れとした顔をして来たりする事もある(そうだ、やったことないけど)。びっくり。プラセボ効果という。

身体の状態は心に影響を与えるが、その逆も当然あり。もうこれは自明のこととしよう。これに付け加えるに大事なのは頭で理屈で納得させようとしても上手く行かない点だと思う。本当に信じる、心で信じる、そして理屈で無く無心で身体に任せることが肝要なんだと思う。これが難しいから上手くいかないことが多いんじゃないかな。

身体には頭でコントロールできない無意識な部分がある。その無意識は身体を健全な方向に向かうようセットされている。風邪を引くと熱が出るが、それは免疫系を働かせるために必要な現象で、解熱剤を使うと治癒が遅れることは証明されている。食欲がなくなるのも免疫や他のシステムにエネルギーを使うため、状況においてそれほど大事でない消化器系での消費を抑えるためだ。横になりたいのはそれで身体を休めるように防御反応が働くからだ。身体は自分で治そうとしている。身体を信じて任せること。それを上手くできたら薬は今より必要じゃなくなる。

実は最近ゴルフをやっていて、かなり好きなんです。いや、芝を痛めつけているというレベルですけど。で、パットが本当に上手くいかなかったのだが、アメリカのインナーゴルフという本を読んでパットに目覚めました。単純に言うと、ゴタゴタ考えないで身体にまかせてさっさと打ちましょうというもんだ。身体を信じなさい、目をつぶって打ってもいいよという感じです。パッと見て、後はもうホールを見ないで身体にまかせて打つ。チラッと見るとアラ不思議、ボールは穴の中に・・・なわけないが、それでも以前と比べると格段に寄ってます。なんか怖いですけど、慣れるとこうじゃなきゃいかんと思えてきます。そういう目でいろいろ調べてみると、この身体に任せるというのはいろんな方面で極意となっているんですね。洋の東西を問わず。考えすぎると身体が硬くなる。これはろくな事がありません。
理屈じゃなく感情。しかも前向きな明るい気持ちで信じる。そして身体にお任せ。極意だと思うんですけど、どうですか?

出しましょう!

初診の人を診察するとき、何か薬を飲んでいないか訊くのは常識である。最近は健康食品のことも訊かなくてはならない。健康食品の使用率は驚くばかりだ。ある日、あるご老人が医療費の自己負担が増えたことを嘆く。「おまけに先生、私は足が痛いし目も悪いし、皮膚病もある。毎日医者通いなのにその度にお金がかかるのです。」「・・・お気の毒です。」「おまけに良いと薦められたあれやこれや健康食品だけで毎月5000円以上も払わなあかんのに。」「!?(そっちの方が高いのでは?)」

何故みんな健康食品が好きなのであろうか?まあ、なんとなく判らないでもないけど。しかし「健康に良いものみんな食べて肥え」しかり!これはサラリーマン川柳からとったものだがこんなものを引用することからも判るように私は健康食品に批判的である。安全であろうということが健康食品を選ぶ一つの大きな理由と思うのだが、大流行のサプリメントにしてもビタミンEやCの大量摂取は死亡率を上げると最近発表されている。権威ある英国の医学誌であるLancetでは昨年「サプリメントは全く金の無駄!」というタイトルの総論が発表されたはずだ。みんな、もっと情報を集めよう。日本はかなりのところ金儲けで情報が左右されているぞ。サプリメントについてはまた別の機会に書こう。

一体何を私は言いたいか?一言で言うと、健康のためには色々な物を摂取するよりも、むしろ出さなくてはならないという事だ。インプットよりもアウトプット重視。食べるだけで便秘になると身体に悪い。声を出すこと、汗をかくこと、大いに喋ること、本を読むだけでなく感想を書くこと、映画を見るだけでなく内容を他人に説明すること、絵を見るだけでなく描くことが大事ということやね。

痴呆の専門家である俗風会病院の大友英一院長は「小説家、政治家、作曲家、画家、彫刻家・・・それと俳句を作る人にはボケが少ない。皆、見たこと、聞いたこと、感じたことを自分の感性で表現している人たちです。データをインプットするだけではダメで、自分の頭で整理整頓、再構成してアウトプットすることが重要。日記を書く、手紙を書く、周囲に気配りをすることもボケ防止になる。また適度の運動は脳血流を増加させ脳の老化を遅らせる。ボケたかったら1日中ボーとして運動しないでテレビを見ていなさい」と述べられている。全くその通り。

受身ではなく能動的に生きる楽しみを探していくとボケも病気も寄ってこない・・ってことは無いかもしれないが少なくともなりにくいと思う。やってもらうじゃなくって自分でやることだ。一つの例なのだが、当院でやっているパワーリハビリテーションのマシーンは筋トレのマシーンと間違われやすいが、元々ドイツの整形外科で使われているリハビリの道具である。日本でリハビリというとマッサージやホットパックをやってもらうと考えている人が多いがドイツではマシーンを使って患者さんが自分で能動的にするのがリハビリなのだ。能動的に参加しないとリハビリにならない。もちろんそのようにリハビリをやってられる方も沢山おられるが、どうも受身な姿勢が強いという方も多い。どうもこれはリハビリだけでなく我々日本人の一般的な傾向のように思われる。これを変えよう。受身でなく自主的に!身体のために、自分のために、入れるよりも出しましょう!

感情が怖い

夏樹静子の「椅子がこわい」を初めて読んだ時の衝撃は大きかった。彼女が実際に経験した激しい腰痛が整形外科的なもので無く精神的なものであり、精神科的な絶食療法で治癒するまでのドキュメントだ。それまで外来診療にはそれなりの自信もあって望んでいたのだが当時は専門バカであった。腰痛が心理的なものから呼び起こされるとは知らなかったのだ。おぉ、なんたる無知よ!

多くの医療機関を受診して全く異常ないといわれる。しかし恐ろしいぐらいの激痛が走る・・・症状が過度に激しく思えるとき精神的なものを疑うのは経験から知っていたが、一見何ら精神的な問題の見つからない知的な人間がそう訴えたとき診断は難しい(今となってはかなり確診をつける自信はあるけどねー、僕の患者さんが怯えないようにそう言っておこう)。内科の外来をしていると、この人が肉体的に苦しんでいるのは精神的なものが原因であり、症状はそれを表しているのに過ぎないと思うことがある、というか多いのだ、割と。同業者ならわかると思う。動悸、眩暈、腹痛など色々な場所の痛み・・・多くはご自身も気持ちから来るものだなと感じているが、時には全く意識されていないときもある。身体表現性障害だ。交通事故後のどうしても治らない腕の痛みに対して訴訟まで起こしていた人が、抗不安剤の投与で全く痛みが消失し神様扱いをされたことがある。原因はどうであれご本人の苦しみはリアルにあるわけだから、理解されないと痛みは2乗になるだろう。潜在意識は怖い・・・実は今アキレス腱を切断してやっとギプスが取れたところなのだが、健常側の股関節が痛くて困っている。松葉杖の片足歩行で無理がかかった結果なのだと思っていたが実は心因性だったりして。完全な状態で働くことの恐れが痛みを作り出している可能性は・・・心配になってきた・・・。

精神は肉体を支配する。健全な精神は健全な肉体に宿るというがありゃ嘘だ。そういう時もあるが、健全な肉体を持つ不埒な輩は多いし、不健全な肉体を持つ健全な不屈の精神の持ち主もいる。パラリンピックを見よ。いずれにしろ、身体は精神の単なる乗り物に過ぎないのかもしれん。感情は強い。全てをぶち壊すのは肉体ではなく精神であり感情だ。頑張ってるとき、肉体よりも感情が負けた時が最後の時だ。肉体のコンディションに気をつける人は多いが自分の気持ちのコンディションは結構投げやりだ。そいつは間違いだ、大事にしなくてはいけない。最優先事項だと思う。

日本は健康寿命世界一

世界保健機構(WHO)は2000年に日本を健康寿命のランクを世界1位としました。これは日本が単に余命だけでなく活動的余命においても世界1の長寿国である、つまり年をとっても元気な人が多いという事をあらわします。わが国には長寿者が多いが反面寝たきりが多いなど高齢化社会に悲観的な感じを持たせる報道が多く、この結果に意外な感じを抱く人が多いのではないでしょうか。2001年2月1日のmedical tribuneは老化に関する疫学研究の専門家である桜美林大学の柴田博教授にインタビューし、興味深い話を引き出しています。

日本において死の直前に寝込む期間が半年に及ぶものは10数%に過ぎず、多くの高齢者は死の間際まで高い身体能力を保っている。

統計を出す場合施設入所者を対象にする場合が多いが、日本はかなり身体能力が悪くなってから入所する例が多く、比較的軽度でも入所していることの多い北欧と比較した場合、高齢者の能力は悪く出て当然である。

日米比較調査では、地域在住高齢者を比較した場合、日本の方が慢性疾患を持つ者の割合も低く、身体能力も高いことが明らかにされている。

寝たきりの実態が過大評価されているところがあり、介護保険ビジネスの伸び悩みはそれを裏付けるものである。わが国の地域高齢者の健康度が高いのは事実でその要因を解明していくのが今後の課題である。

わが国の高齢化社会の問題点は自殺が年々増加していることであり、その背景にある鬱への対策が今後大きな課題となる。これまで障害を持った高齢者のサポートが問題とされてきたがこれからは健常な高齢者について議論することも重要となる。

年をとることの悲観的な面ばかり強調されていますが、むしろ年をとることで伸びていく英知というものがあります。障害を持った高齢者に対する医療介護だけでなく、健常な高齢者の問題を考えなくては。 能力を保つためにどうすればいいかという医学的側面に加え、社会にとって必要な人間でありつづけるためには地域社会はどうあればいいかという社会的側面が大事です。医療という枠を越えて地域とかかわっていくにはどうしていけばいいか、私自身の問題です。

楽天的で長生きを

2002年12月12日発行のメディカルトリビューンによれば、エール大学疫学公衆衛生学のBecca Levy助教授が「加齢に対して肯定的な態度を取れば寿命が平均7年半延びる」と発表した。1975年に50歳以上の660人の男女にアンケートを行い、23年後に回答内容と生存の関係を検討した。その結果加齢についての考え方がより肯定的と判断された回答者は多くの条件(年齢、性、社会的経済的地位、身体機能など)を補正一致させた段階でもより長寿であることが認められ、それは高血圧や高コレステロール血症の治療、禁煙や持続的な運動よりも寿命に対する効果が大きかった。自分を消極的に評価すれば寿命が短くなり、前向きに評価すれば長くなる。同助教授の前回の研究では、高齢者は加齢により自分が賢明になったと思うかその反対かと思うかにより、ストレスに対する心血管反応、記憶力、演算能力などに大きな差が出てくることが証明されている。

自分を前向きに評価するにはそれなりの自信が必要だろう。根拠の無い楽天性も有効に作用する可能性があるが、年をとっていく自分に自信がもてるだけの生活設計がちゃんとなされていたことが寿命の延長に一番大きかったのではないかな?とはいえ楽天的に考えることの効用はあなどれない。最近ご老人の欝傾向が増加しているが今までの人生が無駄に思えるような痛々しい結果になる場合もある。笑えば免疫力も増強する。単純に楽天的に考えるように心がけるようにしよう。

若い奴らを助けてやろうぜ!

日本は高齢化社会である。あと何年もしないうちに65歳以上の高齢者があなたの周りにあふれます。えらい事です。寝たきりばっかりでっせ!何とかしないと・・・。日本の未来はこんな話ばっかりである。だけどホントなのか?シカゴ大学のベルニース・ニューガートンという学者は65歳越えたら高齢者というのではなく、65歳から75歳までをヤングオールド、75歳を超えたらオールドオールドにしようと提唱している。日本でも前期高齢者、後期高齢者と最近言っている。前期高齢者は元気である。寝たきり老人や痴呆老人の発生率は75歳まではかなり少ない。芸能人を見よ!高倉健は73歳だっけ(間違っていたらごめんなさい、だけど70台は間違いない)?森光子とか、一体どうなるんだ?失礼な話だ。なんとなく引退というニュアンスのある高齢者という言葉はそぐわない。あなたの周りにもバリバリの70台がきっといることと思う。

ということは65歳以上が老人という定義はもう古いんじゃないか。75歳以上という方がいいんじゃない・・というのは僕のオリジナルではなくて和田秀樹というやたらめったら本を出している精神科医の先生が言っていることだ。2025年が高齢化のピークで、4人に1人が老人だということだが、75歳以上を定義にすると2025年でも現在より少なくなる。老人が増え働き盛りの人口が少なくなる。とても国は回りません。だから消費税でも介護保険でも何でもかんでも皆様に負担していただかないと・・とか言うのが政府の見解だが75歳以上を老人と定義しなおすとこの理論は成り立たなくなる。だいたい老人はみんな働けないぐらい体が弱ってるのか?どーも信じられないな。このpearlsでも書いたけど日本は健康寿命世界一だ。元気な高齢者の率が世界で一番高い。その方たちがバリバリその能力を発揮していただける場所を作るほうがもっと大事なことではないかな。

介護保険で今度おそらく介護予防というのが新設される。ガタガタにならないように気をつけてね、ちょっとそのためのお金は負担するから(といっても国民が大部分の費用を負担してるんだけどね、しかも出してくれる金額はめっちゃ安いかもしれん)、という、まあ珍しくまともなプランだと思います。僕の診療所ではパワーリハビリテーションというのに力を入れている。これは介護予防の切り札、というか介護を必要とする方にとっても身体能力回復の切り札だと確信しているのですが、考案者の国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授は50歳超えたらやった方がいいといっている。予防が大事だ。よれよれの高齢者になったらアカン。スムーズに体を動かせることが大事なのだ(パワリハは筋トレじゃなく神経と筋肉の連携をスムーズにし、使っていない筋肉を利用するようになることで身体と精神を活性化する)。高齢者というと何かしょぼいイメージがある。これが問題だ。パワリハでしなやかな身体をつくり、美しい外見とさわやかで前向きな精神を持って、今から将来を思ってうつむきがちな若いやつらを助けてやりましょう。あなたには若い奴らには無い知恵があるのです。やる気があれば能力を発揮できる場所はきっとある。探しても見つからなかったら僕に連絡してください。

身体の手入れに費やす時間

TOEIC会長で、65歳で司法試験に合格した渡辺弥栄司という人がいる。今87歳だが125歳まで生きると決めている。30年前に中国人で太極拳の高名な師家に幾つまで生きるつもりですかと訊かれ、神様が決めることですからと答えたところ、「それは幼稚な考えです、社長さんが社員にこの会社は後何年続くのですかと尋ねられて俺は知らないと答えるのですか、目標は無いのですかと質問され、無い、毎日一生懸命やればいいのだと答えるのですか、そんな会社は潰れてしまいますよ、幾つまで生きるかは自分で決めるのです」と諭される。すごい話しだが、彼は逃げ回った挙句、しつこい先生についに根負けして125歳と言ってしまう。根拠は特に無い。しかしこの年齢は現在生存可能な最長年齢と科学的に言われている。そして彼は偉いことに、何とかこれを実現しようとしている。

前向きなものの考え方、控えめな食生活など、多くの方がご存知のことを実行されているが、速歩き、真向法の体操、木刀の素振りなど身体的なトレーニングを毎日40分以上休まず続けておられる。おお、なんと素晴らしい。ところが彼が三浦敬三氏(プロスキーヤーの三浦雄一郎氏のお父様で、確か一昨年アイガーだっけ、氷河を滑走した。現在100歳のはずだ)に会われたとき、三浦氏は言うのである。「それではダメです。これから本当の人生を拓いていかれるならその程度で健康なんてことを信じていてはいけません。まあ、やらないよりはいいが。私は毎日、4、5時間ほど身体の手入れをしています。125歳まで生きるという理想は大きくてよろしいが、それに見合う努力をしていませんね。本気で取り組みなさい。どんなに忙しくても時間は取れるでしょう。」

どうよ、お父さん。僕もテレビで見たが、確かに彼は走っていた。100歳だぜ。仕事で忙しい?いーわけ、いーわけ。言い訳、好いわけ?素直に認めよう。あなたの身体だ。目標も無く、アイデアも無く、努力も無い。結果は明らか、火を見るよりも・・・

> ※2004年10月23日のニュース(共同通信)で三浦氏のことが出ています。 世界最高齢の70歳でエベレストに登頂したプロスキーヤー三浦雄一郎さん(72)の体力は20代男性と同じで、100歳の現役スキーヤーとし て知られる父親、敬三さんの大腿(たい)骨は60歳並みの強度があることが23日、東京都老人総合研究所の調査で分かった。  同研究所分子老化研究グループの白沢卓二研究部長は「遺伝的要因もあるが、体を鍛えていることが老化を抑える一因と考えられる。日ごろから 運動することが大切」と指摘。「三浦家の長寿の秘密を探る」と題し、11月8日に都内で開く特別公開講座で発表する。

お風呂入っていいですか?

風邪の患者さんに質問されることが最も多いのが、お風呂に入っていいですかというものだ。お子さんが風邪のとき、お母さんは半分以上訊いてくる気がするし、大人の方にでも良く訊かれる・・・・実は正解はない。医学は統計の学問で、ちゃんとした研究報告を元にすれば答えを出すことが出来る。多くの医者が同様の質問をされているのにもかかわらず、風邪の時入浴が可能か研究した論文は調べた限り世界中に殆ど無い。

報告が全く無いわけではない。五十嵐正紘先生の日本の小児科医を対象とした調査では88%の小児科医は風邪の子供の入浴を容認している。しかしほとんどは熱がないこと、重症や急性期でないことの条件付である。半分近くの親は風邪の時風呂に入れない。しかし入浴させた親の回答では、82%が変化なく、15%は良くなったと答え、2%が悪くなったということである。

個人的には僕は風邪でも風呂に入る。しかしそれは治療を期待してではなく気持ちがいいからである。西欧では風邪の時入浴を勧める場合があるし、サウナは風邪の罹患率を減少させるという論文もある。大人の方は入りたければ入ればいいし、その気も起こらないぐらいしんどければやめればいいのだ。自己責任である。

風邪の時入浴を控える習慣は、江戸時代からほんの数十年前まで銭湯が主流であり、風邪を引きやすい冬に帰宅までの間湯冷めしたこと、また内湯でも浴室以外は気温が低く湯冷めしやすいことが原因ではないかと推察されている。湯冷めすると咳が出やすくなる。入浴して悪化した人は咳がひどくなったという人が多い。悪いのは湯冷めだ!気をつけろ!

といっても基礎に病気をお持ちの方の入浴は慎重にしたほうがいい。入浴は心疾患をお持ちの方の場合、心機能を良くする場合もあるし悪化させる場合もある。要は入り方で、病弱な方に一番安全な入浴方法を完全ではないがまとめてみると・・・

1. 温度は38から41度Cまでの微温浴。
2. 一番風呂は浴室が冷えているため控える。浴室を暖めておくこと。
3. 胸下までの半身浴とし、肩はバスタオルで保温する。首まで入ると心臓に負荷がかかる。半身浴だと、ちょうど空気中で寝ころんだ程度の負荷である。
4. 入浴剤は好みならば使ってもいい。ラベンダーの香りは心拍数を減少させ脳波のアルファ波を増加させるのでリラックスするし、炭酸ガスを主成分とするものは冷えに有効。
5. ゆっくり立ち上がる。
6. 入浴後の温度変化を少なくするため、更衣室など保温する。
7. 入浴後は水分を取る。喉が渇いてなくてもコップ2杯程度の冷やし過ぎないお茶やスポーツドリンクを。
8. 夕食後1時間は入浴を避ける。入浴することで胃への血流量は減少し、水圧のため胃が押し上げられて胃から小腸への食物の排出が制限されるため。
>おまけ:運動後は最低でも30分あけて入浴したほうがいい。入浴により血液は血管拡張した皮膚表面に多くなり筋肉へは減少するため、酸素供給、老廃物除去が不十分となり筋肉の疲労回復が遅れる。また入浴の心臓への負担もあり、運動されている方はしばらく待ってから入浴を。

悪いやつほどよく眠る

悪いやつほどよく眠る・・・そうだろうか?知り合いに悪人だけど不眠症のやつがいる。何事にも例外はあるのだ。だけれど一般論としていい人が不眠症というのは正しい気がする。外来をしてふと気がつくと、睡眠導入剤を出しているケースがとても多いのに驚く。まずい・・・。いやー、まだ止められないんですよと言いながら、それだけを受け取りに外来に来る人がいる。みんな気にしているんだけれどやめるのは不安なのだ。そこで案外知られていない、睡眠薬の止め方について。

まずあなたの飲んでいる睡眠薬のタイプを知っておく必要がある。それにより止め方が違うから。睡眠薬は作用時間により超短時間作用型(半減期が4時間位まで。ハルシオン、アモバン、マイスリーというのが有名)、短時間作用型(10時間位まで。レンドルミン、リスミーなど)、中間作用型(28時間位まで。ロヒプノール、サイレース、ユーロジン、ベンザリンなど)、長時間作用型(それ以上、3日以上のやつもある。ベノジール、ドラールなど)の4つがある。寝つきが悪い場合、超短時間作用型。それに加えて途中ですぐ目がさめるという方は短時間型を用いているはずである。真夜中や早朝に目がさめる方は中間型以上を使用しているはずだ。

減量で一番一般的なのは薬の量を2〜4週間ごとに4分の1ずつ減らしていくやり方だ。これはどのタイプの睡眠薬にも応用できるがある用量以下では不眠が生じる可能性がある。そうなるとこのやり方では先に進めない。

中間から長期作用型では隔日法といって、始めは1日おき、それでも眠れたら2日おきとだんだん間隔を開けていく。ただ内服していた期間と同じくらいの期間をかけて中止しないと反動で不眠が悪化する場合があるのでゆっくりと。このやり方は短時間作用型以下のやつには適さない。離脱症状(不眠、不安、イライラなど)が出やすいためだ。中ではマイスリーが比較的出にくいともいわれている。 だとしたら短時間、超短時間作用型はどのようにすればいいかというと、中間型以上のものに徐々に変えていく方法がある。2週間ほど半量ずつ併用したりする。それで置換出来たら、隔日法で止めていくのだ。逆に中間型以上のものを短時間以下のものに置き換えると中止しにくくなるのでこれはよくない。

もうやめたいな、と思った時がやめ時で、毒薬じゃないんだからすぐ止めなくっちゃとあせる必要は無い。薬としては安全性の高いものだ。ただ服薬期間が長くなればなるほど止めにくくなるのは事実である。不眠が恐怖というのはよくわかる。ただ、逃げていると相手は増長する。反撃すべきだと思う、個人的には。つまり寝ないのだ。恐怖の元を直視する。幽霊の正体見たり枯れ尾花。寝なくてもどうってこと無いです。全ての人に勧められる訳じゃないけどね。