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ゴロゴロマシーン

筋肉トレーニングもいいけれど、ムキムキに見せるための表在筋よりも、腹筋や背筋、いわゆる深部筋を鍛える方が根本的に大事です。

深部筋は建築物で言えば土台であり屋台骨である骨盤と背骨を支える役割があり、歩行や姿勢に大きく関係します。しかし深部筋を鍛えるのは結構難しいのだなぁ。特に背筋はいい方法が少ない気がします。

で、そんな悩みを持つあなたにお勧め、最近のお気に入りです。こいつ。結構安っぽいのでローマ戦士の武器風な感じで撮りました。

なんていうのかねぇ、「深部筋養成ゴロゴロマシーン」です。映画にもなったキムタクが検事に扮した傑作TVシリーズ「ヒーロー」というのがありましたが(こいつはほんとに傑作!)、そこで通販マニアの彼がこれを購入してやっているシーンを覚えています。まさか自分がやることになるとは思わなかった。

800円ちょっとだったのでなんとなくやる気になって購入しちゃったのですが(何でそう思ったのかよく覚えていない)、こいつはかなりいいよ。膝をついてマシーンを両手に持ち、床につけて屈伸運動を行うのですが、まあ最初は5回も出来ない。

その日はなんと単に下を向いたときに腹筋がつるという涙が出るような悲惨なアクシデントも発生したのですが、ふっふっふっ、今やここを意識して鍛えるかとか、腕の屈伸も入れてとか、自分でバリエーションをつけることも出来るようになってきた。どこを意識するかで鍛える場所を変えられる。まぁえらそうなことをいっても一時に出来るのは15回くらいが限度だが、それで十分。トータルが問題だよ。

で、なんとなく時間があったらゴロゴロやってます。歩き方も少し変わった気がする(僕は何でも割りと即効性なのです、素直なので)、これは確か。いかにこれからも生活に組み入れていくか、それが大事だな。気になる人は貸したげるよ。ご遠慮なく。しかし最初に5回はクリアーしないとダメね。

自信に優るコーチなし

  やりましたねー、岡田ジャパン。

 素晴らしいです。テレビで何度となく放映されているのでもういいやと思っていたのですが、それでも勝利でのゲームセット、みんなの喜びようは何度見てもこちらまで自然に笑みがこぼれるというか・・・うー、楽しい!

 暫くブログが書けなかったのはワールドカップで忙しかったわけでは勿論ありません。7月中旬までにちょっとした発表が4つあり、その準備に忙しかったのです。大体ウイークデイは仕事が終わったら殆ど寝るだけですし、休みの日か睡眠を削ってしか出来ぬという厳しい条件で・・・。

 で、最初のやつが終わった日がちょうどデンマーク戦の前日。発表が終わって会食があって、帰ったらもう午前様で、明日のことを考えたら「もういいや、寝よう」と床に就いたのですが、なんと4時に眼が覚め、これは運命だとあきらめてテレビを見たのです。

 しかし強かったね。なんというか余裕が感じられました。1戦ごとに増す余裕。あの不甲斐無い代表チームと違うやん。これはなんといっても勢いというか自信がなせる業でございます。

 おんなじ状況でも、びびって臨むのと自信を持って対するのでは全然違います。日本人はもともと脳内神経伝達物質のセロトニン遺伝子が、自信ないです・・・という組み合わせのタイプになっている人が全体の90%というデータがあり(ラテン系は逆にイケイケタイプが圧倒的多数)、本番に弱いのもこれは根性というよりも科学的に説明のつく事実です。

 しかし「自信に優るコーチなし」という格言もありますが、カメルーン、オランダがいいコーチとなってくれました。一発まぐれでもいい結果がでると楽になり自信となる、そういう意味で精神的に突破力のあるジャパニーズ・ラテン系の本田君、大久保君はいいチョイスですね。僕は前から本田君のファンだったのですが、彼は単純にビッグマウスというのではなく、最もよく使う台詞が「準備する」です。カメルーン戦後のインタビューでも言ってました。

 よく準備し、自信をつけて、後は強気で突破する。僕の後3戦もそう行きたい。しかし第2戦はカメルーン並み、3戦目はどうみてもオランダ、最終戦は(まだやってないけど)アルゼンチンといった感じのラインナップです。ファンタジスタ揃ってます、トホホ。遠くアルゼンチンに標準をあわせ、準備万端で臨むことにするか。終われば夏です。わーい。

 

      こんなポーズでもかっくいー本田君           隣には同ポーズのあなたの写真を。

アトムの子

クリニックにニューフェイスが加わりました。有名な「アトム君」です。

今はエレベーターの横に立っています。「何でもお気軽にご相談ください!」100万馬力でそう言っとります。是非!・・・といっても相談しにくいのが男性外来である。

ほとんどがEDの相談です。女性スタッフには席をはずしていただいて、男だけで「・・・」「それはこしょこしょこしょ」「・・・」「うーん、こしょこしょこしょ」となんとなく小声で言ったりして。EDは動脈硬化の初期症状であるとされていますが、実際上は殆どがメンタルな問題です。欝の場合も多い。ただ話すだけで案外すっきりとされてよくなることもかなり多い。

この前来られた男性は別に医者でなくてもすぐ判るメンタルな背景をもたれていて、このような方には僕が開発した特効薬の言葉、アイデアを2,3お話しするとかなり元気になられました。EDの薬も持って帰っていただいたのですが、次回来られたときには2回ほど使用しただけで、なくても可能だった!と(すいませんね、こんな話して)本当に嬉しそうでした。よかった、よかった。本当に自分のことのように嬉しいです。

男性更年期は今週の「アエラ」でも取り上げられていて、抗加齢医学会でもおなじみの帝京大学泌尿器科の堀江教授が男性ホルモンを上げるコツ、10カ条を上げられているのでここに載せておきます。

①自分の居場所を作り交感神経の緊張を防げ ②楽しいことをして副交感神経の活性化 ③旬の食材を取り入れ偏りのない食事を ④忙しいときほど筋力トレーニング ⑤よい睡眠を取る、寝る前に仕事のメールを読むな ⑥男性の仲間を大事に ⑦おしゃれを楽しもう ⑧自分を主張し凝り性になれ ⑨大声で笑おう ⑩目標を持って「わくわく」しよう

勿論そうね。でもこれが始めから出来る人なら心配ないわけですけど、みんなカメルーンの最後15分間の猛攻を受ける岡田ジャパンのようなヒヤヒヤもので生きているので。

無理はすんな!気楽に相談してね、僕達はみんなアトムの子、21世紀は100万馬力で乗り切りましょう。

糖よ、さらば

 この土日は京都であった第10回抗加齢医学会総会に出席していました。

 学会自体は正直以前のフレッシュさに欠けた印象ではありますが、土曜日に静岡の田中先生に主催していただいた食事会では帯広の満岡先生ご夫妻、魚津の浦田先生、川崎の本間先生ご夫妻、高橋先生にヘルシーパスの田村社長という重鎮の方々とテーブルを囲んで非常に内容の濃い有意義なお話が出来ました。一番の収穫です、でもなんかこれでいいのかな。でも皆さん、また夏に箱根でよろしくお願いします。

 学会でもグルコースは脳に不可欠でなく、飢餓状態において脂肪が分解された代謝産物であるケトンを脳が利用できるという発表があり、かなりホットなディスカッションとなっていましたが、もう糖分、炭水化物はいらん!というのが此の頃のトレンドです。

 米が主食の日本人としてはなかなかつらい気もしますが、とりあえず白いものより茶色のもの、白米より玄米、うどんより蕎麦、というチョイスをし、カロリーは出来るだけ減らし、軽めの全身運動を定期的に行ない、よく眠る生活は確実にあなたを健康にします。

 炭水化物を取るから腹が減る、血糖を上げるから空腹感が出てくるので、食べないとそれに慣れてあまり苦痛でなくなるようです。ちょっと腹が減ったなという感じは確かに忘れることが可能なようで、タバコが吸いたいと同じ、依存症のようなものですね。消化管も休められるし、是非。

 タバコは吸わないけど禁煙外来をやっている僕は、この禁炭水化物を暫くやってみて、4kgほど減量を試みてみます。また結果は報告しますね(…宣言してしまった、でもやるよー)。

行きはよいよい、帰りは大雨

 

鎖国パラダイス

 留学を希望する学生の数が激減しているとニュースで言っていました。

 京都大学でも137人の交換留学生枠があるが、昨年留学したのは32人だけだったとのこと。テレビでは生真面目そうな学生さんたちがいろいろ言っていましたが、就活もあるし、わざわざ外国に行って淋しい思いして苦労せんでも…、メリットないし、という雰囲気が漂っていました。

 ウソやろー?

 僕は「最近の若いもんは」とは死んでも言わないおっさん排他・若輩擁護論者ですが、こいつにはちょっと危機感を覚えます。

 鎖国すんのか、君達?世界がフラット化し、自分の国だけで凝り固まっていては何も始らないというのは誰でもわかる。若いうちに世界を見ることの重要性を賢明な君達が判らんわけなかろ?そんなに今の生活が快適なんかいな。

 アメリカ人ジャーナリストがこんな状態を「パラダイス鎖国」と言っていましたが、こいつは本当に危ないぞ。苦労は買ってでもしろ、というのは死語なんでしょうか。これで「公務員が第1志望です」なんていわれた日にゃ日本の未来は本当に暗い(優秀な公務員の方がいっぱいいるのは知っています。でも昔知り合いだった公務員の若者はトラブル拒否、リスク回避の権化みたいなやつだったので偏見が。申し訳ない)。

 優秀且つやる気に溢れた若者がいっぱいいるのも知っとります。何があっても世界に出て行け、と思います。面倒を恐れるな、トラブルは買ってでも解決しろ、3度の飯よりタフな交渉が好きになれ!と叫んで筆をおくものであります。最後の3つは医者にも必須ですね、私見では。

黄昏る帝国かよ

リスクを背負う

 TVで中田ヒデ選手と本田圭祐選手の対談を見ました。僕はこの二人のファンなのです。

 本田選手はまんま浪速のヤンキーですが、自分の意志を貫くその圧倒的な強い心はすごく魅力があります。本田選手、いつもどおり両腕に高そうな時計してました、しかも赤と白?彼と仲のいい選手が「前はゴリラだったけど最近は成金ゴリラに出世しています」と書いていましたが、まぁそうね。服装もですが発言も何もかも若い!!です。

 ヒデがすごく老成して見えました。この二人は20代前半で世界に出て、しかも業績をあげるというすごい才能の持ち主ですが、才能を生かすことのできる頭の良さと心の強さがあります。

 練習においては世界でもトップクラスの技術を持つ日本代表に欠けているのは「勝つことに対する強い気持ち」というのは前から指摘されていることではありますが、俺が!という自負を出せる環境ではないのかもしれません。

 ヒデは最終的にはそれを抑えてしまったので、本田選手には自分のやりたいことを絶対くずすなとアドバイスしていました。彼がどれだけそれを貫けるか、注目したいです。

 本田選手の言葉の中で印象に残ったのが「僕はリスクを負わないほうがリスクやと思います。なんも背負わないでどないすんねん」というやつ。

 その通りや!ええぞ本田、いい男!周りが何を言おうが、サポーターがなんと言おうが、マスコミがつまらんたわごとを言おうが自分を貫いてください。僕も、何でもかんでも守りに入ろうとする50台の男が多い中で、この言葉を忘れないでやっていこうと思います。

最近のクリニックの前景。僕のピッチですね。

 

身体は買い換えることが出来ません。

 診察をしていると、「もう年やから」とか「年はとりたくないなぁ」という台詞を頻繁に聞きます。「まあそんな事言わないで」と僕はかるく流していますが、さもあらんか、と思ったりもします。

 生物学的に保証されているのは男女とも生殖能力のある時期くらいまで。つまりは50歳くらいまでね。桶狭間出陣の朝に信長が「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり」と敦盛を舞いましたが、生物学的な限界のひとつの基準かと思います。

 後は社会的に生存の価値を証明していく時期。社会的な存在感が生命力を保障するのですが、定年や子供の独立など、拠り所がなくなると生命力が落ちてくる気がします。ここは自分でキープしていかなくてはなりません。

 そのために非常に大事なのが丈夫な身体なのです。

 

 「身体は買い換えることが出来ません」。

 

 身体は精神を乗せて突っ走るビークル、乗り物ですが、お金がなんぼあろうと自動車のように買い替えることは出来ないのです。ただ1台の車を、僕達は丁寧に乗っていかなくてはならない。50年乗ったらもう下取りに出しても値段がつかないようなもんです。しかしそれからまだ50年乗ろうと思ったら、どれだけ気をつけてやっていかなければいけないか、簡単に想像がつきますよね。

 しかし(僕も含め)どれだけ乱暴に扱ってるか!

 定期的なチェック、毎日のメインテナンス、ガソリン以外のよけいなものを入れない、毎日少しでも走らせる、置きっぱなしはダメだが、ハードに使った後は休ませるとか、今までのメチャクチャな乗り方を反省して丁寧に細心の注意を持って手入れをしていきましょう。

 そうすれば必ず答えてくれます。ひいては充実した後半の50年を過ごすことができる。故障もすると思います。そいつも出来るだけ早く修理して、うまく付き合いながら乗っていきましょう。

 あなたの大事なたった1台の車なんですから。メインテナス・フリーなわけないんです。50超えたら丁寧に、細心の注意を持って。

 勿論それ以前からやっていたほうが持ちがいいのは決まってますよ!

 

ひょっとしてあなたのボディはこんな感じ?

 

 

 

U と L

 興味深い記事を読みました。『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)に5月17日付けで掲載されたもの。30万人以上の米国人に電話調査し、「ストレス」「心配」「幸せ」といった生活における要素、幸福度(well being)について評価してもらい、それらの回答を分析したものです。

 その結果、年齢ごとの幸福度を示したグラフは「U字形」となりました。男性、女性の両方において、全体的な生活の充足感、楽しさや幸せはU字形となっており、両方とも50歳代前半で底に達していたとのこと。

 ストレスや心配は、18歳〜21歳と22歳〜25歳の間に急激に上昇。ストレスは年齢が上がるとともに下降線をたどり、50歳代半ばで急減。心配は40歳代後半まで横ばいで、その後緩やかに減少し始める。

 総体的に、自分の生活を最も幸福だと評価している層は、18歳〜21歳の若い層と、60歳代半ば以上の人々だそうです。60歳代以上の層にとって、肯定的な評価は年齢とともに上昇していく。

 研究者らはこの上昇の要因として、「知恵が増すこと」「高齢者は否定的な記憶より肯定的な記憶を思い出しやすいこと」などさまざまな要因があるのではと推測しています。

 ところが日本の国民生活白書は、「U字型」は米国では見られるが、日本では見られず、67歳を底にして79歳にかけて幸福度はほとんど高まらないL字に近い形状を取っていると指摘しているそうです。

 ガーン・・・L字ってどうよ。

 アメリカではちょうど僕くらいの年代が幸福度の底ってのも笑えますが、日本のL字ってのはちょっと笑いも出ないなぁ。どうすればLをV字回復させることが出来るでしょうか。

  U字というのは子供も手を離れ、まさに第2に人生を歩みだすときに上昇し始めるという感じで、そこの準備をしているというのが大事という気がする。その定年後の時期に何もやることわかりません、ないですというのが上昇しない原因ではないかなぁ。

 社会環境もあるし簡単にはいえませんが、男女とも楽しみ方がわからないのでは。特に男性が問題で、そこに引きずられて女性も不幸になっている気がします。必ずしも経済的な問題ではない、幸福度は。

  底の時期にある僕としては今だけでなく先を見つめて考えなくてはならないなぁ。方針として「攻撃は最大の防御なり」が正解と思うのですが(何のことかわからんか、これじゃぁ)。

陽光の下の老人

お悩み解決!

 脱力・・・。

 今日、読売テレビの「関西情報ネット Ten」の「お悩み解決コーナー」に生出演してきました。イライラしないで禁煙するにはどうするかという問題に対して、当院でやっている禁煙外来で使用しているバレニクリン(商品名はチャンピックス)の効果をお話してきたのです。

 午後診の時間を変更して午後5時には終了。スタッフも見学を許されたので外来スタッフ4名(彼女達のおかげでことがスムーズに運ぶ)とOBPの読売テレビへ。10分ほどのリハーサルの後、すぐ本番です。台本もあるのですが「一同:リアクション」とかいった感じで、まぁ話の内容はほとんどその場の雰囲気、アドリブです。

 僕は以前長寿番組の「TVドクター」に出させていただいたことがあるのですが、その時は台本がちゃんとあるんですが、かえって台詞を忘れないかとても気になってあがりまくりました。それと較べるとかなり気楽で実は余りあがらなかったのですが、それでもちゃんと言えなかったなぁ。うーむ。

 しかし思ったのは清水健さん、浅越ゴエさん、虎谷温子さん、妹尾和夫さん、千原せいじさん、羽野晶紀さん、岩田公雄さんらレギュラーの方々の話のうまさ、プロっぽさでした。テレビに映る前のお話から本番まで、本当にそつなく盛り上げていく手腕は本当にたいしたものです。

 そのおかげでこの禁煙コーナーはかなり面白い、いい内容だったと思います。番組終了後テレビ局にいつもよりかなり多くの問い合わせがあったようで、僕もクリニックに帰ったところ、もう何件か問いあわせがありましたとスタッフから報告を受けました。禁煙の重要性に気がついていただけたのなら、やった甲斐があるというものです。

 ビデオの出演を快く引き受けていただいた禁煙実行者のDさん、Nさん、有難う御座いました。また何度も足を運んでくださった読売テレビのHさん、Yさん、感謝いたします。

 千原せいじさんと清水健さんは禁煙実行のためうちのクリニックに来ていただけるようですが、もしそうなればまた結果をご報告しますね。

 なんかお祭りが終わったような感じだなぁ。またリセットです。

リハーサル。ああ面白かった。

Living well is the best revenge

 在宅診療というのがあります。クリニックに通うことが体力的に困難な患者さんを定期的に訪問診療する。

 僕は午前と午後の外来の間に行くことが多いですが、休憩が全くなくなることも多く、結構つらいものがある。特に在宅の看取りというか、ご臨終を自宅で迎えていただくケースの場合、時間に関係なく電話がかかってくるし、夜とかも安眠は難しい。アルコールも飲むわけにはいかないし(と言ってもこの頃はほとんど飲まないけどさ)。

 今週はお二人の方が同時に容態が悪くなり、なかなか忙しくなりました。

 週末もなくなることを覚悟していたのですが、今晩お一人の方がお亡くなりになりました。当初状態が悪化した時は病院に行くとおっしゃってたのですが、奥さんは結局お家で看取ることを決心されました。病院であんなに帰りたがっていた家だからと。

 在宅で患者さんを看取ると、今までのしんどかったことはすべて消えてなくなり、僕はどんな時でも不思議な安堵感、安寧の気持ちに満たされます。クリニックに帰る道、自転車をこぎながら夜風に吹かれていると、患者さんに対してお疲れさまでしたと、家族の方に対してよく頑張りましたねと、そして僕自身に対しては、死は恐れるものではないのだという気持ちがわいてくるのです。

 人は結局亡くなる。永遠に生きる者なぞいない。それは平等にすべての人間に訪れる。そして僕は思うのです。だから死ぬまでの人生を充実して生きるべきだ、「優雅に生きることは最高の復讐である」と。