カテゴリー別アーカイブ: 日記

決算書

 僕が在宅診療で診ているおばあさんには2人の息子(と言っても70代で仕事も引退されている)がいて、交互に僕の診察の時についてくださる。この2人がかっこいいのだ。今日は珍しく2人ともおられたのだが、顔がなんというか語っている。昔は結構悪いことやってましたよねーと言いたくなる、苦みばしった、ちょっとヤクザも入っているが愛嬌もあるという、いかした顔つきだ。ランニングにステテコという古典的夏のスタイルの二人と、朝青龍は本当に病気かという話をしてプラプラと自転車で帰る。まあ結論は皆さんの思っているのと同じです。

 昨日は僕が嘱託医をしている社会福祉法人の理事長Yさんが用事で来られる。おそらくこの方も70代で、眼光の鋭い元銀行マンである。この方も顔つきが決まっている。「コムスンの福祉はトロール漁業で、いっぱい魚はとれるがせいぜい缶詰にしかならない。われわれは1本釣りでいかなくてはならないが採れる魚はこの方が高級なのである」と、言う話もしぶい。

 40を越えると人間は自分の顔に責任を持たなくてはならないとリンカーンは言ったが、さすがに70にもなると顔自体が決算書である。歴史が全部出る。で、さきのステテコの2人と、トロールの理事長はどちらも大変魅力のある顔つきをされているのだがちょっと違う点がある。理事長は眼に好奇心があるのだ。2人は完全に顔が出来上がっているが、理事長はまだ少し変わりそうな気がする。

 私なんざ全く顔が出来ていない気がするが、出来上がるよりも眼に好奇心を残している方が難しい。仕事で現役かどうかではないだろう。心が柔軟かどうかじゃないかな。間単に決算を出してはいけないのだ。

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これが似合うってのも捨てがたい

ディババ選手

 土曜の朝は車の流れがスムーズで、ドア・トゥー・ドアで30分で着いたりする。いい調子で今朝も走っていたら法円坂を下りた辺りで不穏な空気が…。警官がいっぱい出ていて道路封鎖をしていた。???なんと世界陸上のマラソンコースだったのである。いたるところ通行止めでいつもなら10分のところ30分かかる。

 帰りにリーガ・ロイヤルホテルであった在宅医療・看護の勉強会に出席する。その前に医師会の会もあって遅れ気味で焦っていたところにまたまた警官が・・・。後5分でつくところ30分かかる。どなたかかなり高貴な方が通行されるようで突然の道路封鎖。プライミニスター・安倍ちゃん?エンペラー?陸上がらみであろうが物々しい警戒であった。

 おお、世界陸上のせいでトータル1時間は損したぜ!こうなれば最後まで陸上でとTV中継を見る。女子1万メートル、優勝したエチオピアのディババ選手、身体つきもフォームもお顔も大変美しいですね。惚れました。鍛えたアスリートは本当に同じ人間とは思えん。あの美しさは苦しいトレーニングとか自己抑制とか、禁欲的な因子から醸し出される、本当に数少ない人間にしか達成されないものだから美しいと感じるんでしょうね。本当に1mmでも(精神的にも肉体的にも、実際の距離も)近づきたいものだと思います。

 P.S. 福士選手、明るいのはいいけどもう少し悔しがってくれよー。

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ビューティフル!

ピンチとチャンス

 高校野球はあんまり興味がない。そもそもあまり野球に興味がなくて、大学病院時代から僕の患者さんで、今でも通院されている元阪神タイガースのピッチャーUさん(江夏投手の時代に阪神の看板サイドスローピッチャーだった。完全試合を長嶋選手に阻止される)は、僕があんまりチケットをねだったりしないので、「先生、野球嫌いなんですか?」と訊いてきたくらいである。

 高校野球の思い出と言えば、昔甲子園準決勝の日に芦屋の浜を散歩していたら(なぜかは不明)、高校球児が10人ほどユニホームで砂浜にたむろしていて「あー、負けてもうたなー、これからどうする?」と楽しそうに談笑しているのに遭遇したことがあって(準決勝で負けたチームでした)、あんまり深刻そうじゃなくていいなと思った記憶があります。
 
 が、しかし基本的に高校野球でどこが優勝しようがどうでもいいのである。だけど佐賀北高校の優勝シーンはなかなか劇的だったのでスポーツニュースを何度か見た。その中、ある番組が佐賀北高校野球部の部室を取材していて、窓に掲示してある文章を紹介していた(誰が書いたかは不明)。

 「神様は我々にピンチだけを与えられることはない。ピンチの裏側には必ずチャンスを潜ませてくださるのだ。ピンチだけを見て萎縮しているものにはそれは分からない。誠実に練習を重ね、臆せずじっと見るものだけにチャンスがあることが分かるのだ。」

 正確ではないが、大体こんな内容だった。うーむ。ぼんやりと見ていた野球に興味のないおっさんの心にもそれは響いてきたのである。世の中で総てに当てはまる原則というのはそんなに無いが(実力のある人ほど謙虚、というのはその一つ)、これもそのプリンシプルの一つだな。すぐ忘れそうになるが。

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人生にこれほど気持ちのいい瞬間ってあんまり無いでしょうね

 

イカ焼きと青空

 大変暑い。世間はお盆であるが僕の診療所は24時間365日営業であるためせっせと働いている・・・というのは嘘でー、少し休みをずらしたため開けているのである。といっても介護施設、法人本部の諸君は交代で休みを取っているためずぅーとオープンするが。外来のみあと2日で休みに入る。

 往診に自転車で出かける。空が青く雲が白く、そして風が熱気を帯びている。昔知り合いの年配の女性が「この夏の日差しを楽しんで受け止められるのは後何年かなと思うわ。あなたはそんなこと考えてもみないでしょう」と言われたことをなんとなく思い出す。いや、もうすでに受け止められないです。暑いっす。

 街はゴーストタウンである。ぷらぷら自転車をこぎながら僕は本来こんな気楽な形で仕事をするのが希望だったのかなと思う。今でもどこかの島でドクター・コトーよろしく働くのは大いに気が動く。が、すぐ退屈してしまうかもしれんとも思う。いまだ自分がわからん。

 おお!「シスター」が開いているではないか!ここは近所のイカ焼きの名店である。どう見ても昭和のまま、というか終戦の頃のまま時間が止まったような店だがイカ焼きはでっかく(直径30cm)もちもちしてうまい。奥さんが患者さんだったのだが亡くなられ、店は閉まったままだったので心配してたのだ。

 おっちゃんと息子さん(といっても僕と同じくらいの年)は元気だった。顛末をいろいろお話してくださり、テイクアウトにお茶もおまけにつけてくれた。今日の昼は久しぶりにイカ焼きである。しかしどう見ても時間が完全に止まってるな、ここは。今日という日自体がなんとなく時間が静止しているようである。お盆の特性か。過去、昔の人が甦る。後少しでまた慌しく時間がすっ飛んでいく日々になる、といってもしばらくの間、僕はそんな時間とはおさらばだけどね。いや、修行の旅に。つらいです・・・

ikayaki
畳んでいるのででっかさがでてないなぁ

Mさん

 今日、Mさんが診療所を訪ねてくれた。彼とはもう20年くらい会っていなかっただろうか。僕が大学病院勤務をしていた時代、彼は日本を代表する製薬会社のMRだったのだが、かなり長きに渡って仕事は勿論、遊びもよく付き合ってくれた。今では本社の人事部長であり出世頭である。

 死ぬ間際に神様が人生をリピートさせてくれるとしたらどの時代、10年を選ぶか?僕にとって25歳から35歳の研修医から助手の時代が2番目だ、間違いなく。1番目は明日からの10年だよ、なんてね。

 その輝かしきもやんちゃな2番目のDecadeを一緒に付き合ってくれたのがMさんで、開業して会う機会がなくなってからも賀状交換やメールを戴いたりしていた。そういった時代を一緒に遊んだ人というのは今でも付き合いが多い。彼も久しぶりに会ったのだが全然流れた月日を感じなかった。

 「Mさん、かわってないねぇ!」と僕は言ったのだが、勿論20年前と外観は同じではない。でもその頃と変わらない上品でお茶目な感じ、性格の素直でまっすぐなところはまんまで、バックボーンが変わらないと外観も同じに見える。仕事で磨かれたある種の落ち着きが風格である。

 昔くれた葉書に彼のスカイ・ダイビング中の写真が貼ってあって、元気でやってんだなーと思ったりしたものだが、彼によればその頃仕事のストレス満載で、どうしても仕事を続けられなくなり休暇をとって1人でグアムに行ってピストルを撃ったりしたその時のものですとのこと。かように彼は苦労を見せない。今も仕事は大変だろうと思うのだが楽しく遊びの約束をして去って行った。仕事の話もちゃんとして。

 古い友達と会うとしばらくは元気でいられる。また会おうね。趣味は散歩なんて枯れたことは言わず、お互い往生際の悪いジジイでいましょうよ、Mさん。

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ハッハッハッ!

 
 

原野亀三郎氏

 今年6月23日、長野県のトンネルで1人の老人が自転車で走行中、トラックにはねられて亡くなった。原野亀三郎さん80歳である。彼は自転車で日本1周をしており、ゴール20Km手前で亡くなったのである。

 今日のNHK「クローズアップ現代」は彼の話であった。約1年かけての旅行であり、途中多くの人と知り合っている。それらの人の証言をもとに彼の自転車旅行をかいつまんでではあるが再現していた。

 彼は青春時代を戦争ですごした。「僕らに青春はない」「人は私を見たとき、その年でと大変驚く。しかし人に年齢は関係ない。私は毎朝起きたその時から青春が始まるのだ。」と彼は日誌に書く。

 旅館の女将が彼に言う(ほとんどはテント生活だが)「楽しい旅なんでしょう?」「いいえ、苦しいだけですよ。しかし苦しい時は後で思い出せば楽しくなるのです。だからできる。」

 「人生は挑戦である。それでなければ意味がない。苦しいことも見方を変えれば変わる。1歩踏み出す勇気を。」と彼は多くに若い人に語っている。

 いい顔をしている。80才で自転車日本1周?酔狂なことを、と思う人がいるかもしれない。しかし40Kgの荷物を持って君はどれだけ自転車で走れる?毎日テントで眠れるかい?自分が80才の時できると思う?恐るべき意志力がないと出来ない。

 彼を突き動かしたものは何だったのだろうか?番組では彼の行動を賛美するのみで、それを追求していなかった。何なのだろう?沖縄を回り、多くの慰霊碑を写真に収め、着ていたブルーのTシャツには英霊に捧ぐ、平和祈願、と書いてある。青春をなくした同胞のため青春を再現しようとしていたのであろうか?

 きっと安倍晋三首相はこんな番組は見てないでしょうね。選挙だし。

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左の自転車の人です。合掌。

パフォーマンス

 今朝、車で大きな四つ角を曲がろうと信号で停車していた。降り出した雨の中を急ぐ人々を何気なく見ていると、歩いている小さな中学生に傘を差しかけているおっちゃんがいる。中学生は憤然と無視。また来る小学生にまた傘を差しかけ、地下鉄の構内に入るまで追っかけている。

「?。異常に親切なおっさん?」

 と思ったら来るべき選挙に向けてだろう、街頭演説をしようとしていた議員であった。スタッフが揃うまで、傘を差し掛ける親切な議員の僕、を演じているのである。

 パフォーマンスである。そこには真心のかけらも無い。彼が当選した暁にはふんぞり返って横柄な態度、傲慢な顔つきが目に見える。

 「政治とは醜悪なものであり、議員になろうと思うものなんぞ、清廉な志のあるものなどは一人としていない」と言った某知識人の意見に僕は組するものである。赤木農水大臣を見たまえ。彼の言うことなんざ誰も信じていないが、嘘を押し通そうとする顔つきは醜悪である。彼に限らず他人のために私は生きるという美しく幸福な顔つきを政治家に見ることは出来ない。

 選挙は意志表示である。ここらへんでバチン!と目を覚まさせてあげないと社会人として恥ではないかな。まあ選択肢は少ないというか無い気もしますが。

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考えよーぜ

タクシー・ベジタリアン

 ちょっと用事があってタクシーに乗りました。ある会合があってタクシーを遠距離で回してくれたので1時間弱乗っていたのですが、この運転手さんが面白かった。最初あまりに無謀なおばちゃんの運転に直面して、「あぶないっすよねー!」「おばちゃんは本当に滅茶苦茶だからな(偏見か)」と話し始めたのですが妙にうまが合い、ずーとしゃべり続けていました。

 判明したのは彼がベジタリアンとのこと。20代だと思うのですがアトピーが玄米食に変えて1ヶ月で治った友人を見てからいろいろ勉強しているとのこと。なかなかの知識量でした。例のミートホープ社ですが、「あれ1社だけってことは絶対無いよなー」「とーぜんですよ」というところから彼が言うには ①「何とか牛(但馬牛とか)」というのは屠殺された場所で名前をつけるので、輸入してきた牛を1週間おいといて屠殺するとそれで「何とか牛」になる(へー!)②輸入する時弱らないように薬をいっぱい使うので現地で屠殺したオージービーフとかの方が安全(うーむ、アメリカでもどこでも、うまいステーキ屋はうまいので別に日本産にこだわることは全くないよな)③友人のやっているチェーンの焼き鳥屋さんは冷凍で来るやつを焼いているが、カンガルーの肉だといっている(ほんまか!ひぇー。味は近いの?鶏そっくりらしいです)。などなど、びっくり情報満載です。ほかにもあきれた話がいっぱいで、勿論真偽の程は判りませんがすごい話というのは大概本当だしね。ともかく外食でこれは安い!というのはほとんどやばい。

 僕が頭も石鹸で洗ってるといったら当然のごとく「僕も無香料の石鹸で洗ってます。無香料、というのが大事なんですよ」。おやつはバナナかプルーン、ナッツという人で、無農薬野菜が主食の本ちゃんベジタリアン。肉、魚は最近食べたこと無い。友達と飯を食うときはバイキングにして野菜だけ食うという人でした。といっても付き合いにくい感じはなく快活で明るい。田舎で自給自足で暮らすのが目標だそうです。生まれは芦屋だそうですが。

 人はわからん。袖刷りあうも他生の縁。他人とはできるだけ喋ったほうがいいなと社会的人間を目指す僕は思います。

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産地直送?こいつも危ない?

激しい雨が降る

 夜になって激しい雨が降っている。
 一人で勉強している。やることがめちゃ多い。
 机の上だけが明るく周りがほの暗い部屋に京都で買った声明のCDが響く。
 愛犬がそばで寝ている。

 なんでこんなやらなあかんのかな?

 愛のせいか?

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明日の朝は多分…

若い奴ら

 今日は宴会の掛け持ちだー。午後2時半から城東区医師会の総会がありました。僕は理事なのですが最近何かと忙しく理事会もサボりまくっており、会う人ごとに「お久しぶり!」と言われて、一緒にいたN先生にあきれられてしまいました。いやー、つらい。今回はちゃんと最後まで居ましたが、次の会に備えて食べる量をセーブしたりして、僕としては非常にお上品に会場を後にしました。
 
 次は西宮で大学のクラブの納会です。僕は競技スキー部でノルディックを6年間やってました。あんなしんどい競技をやる人は今も当時も少なく、ちょっとだけ西日本医学生大会でいい成績だったので高松宮杯選抜というのに兵庫県強化選手として選ばれたことがあります。今はJRですが当時は国鉄のそればっかりやっている恐ろしげな人たち(大盛りのどんぶり飯を軽く10杯、最初の1杯は沢庵1切れで食べる)と一緒に合宿し50km走ったのは、悪夢というのは何かということを知った最初の体験でした。それ以降悪夢の連続ですが。
 
 21,2歳というキャップテン、マネージャー、ノルディック主任と話していたのですが、イヤー、面白かった。僕は最近の若いもんが大好きです。医学部の授業は年々きつくなっており、講義、試験の大群をすり抜けてクラブを続けるのはかなり大変ですが、そのずっこけライフは笑える(彼らは学業ではかなり入賞ラインから外れているようだ)。おっさんばかりの会は詠嘆ばかりで本当につまらん。何があっても笑い飛ばせる感性は本当に頬ずりしたくなる位素敵だと思います。そいつを失うなよ!

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もう何10年もやってないや