カテゴリー別アーカイブ: 抗加齢

魂のビークル

 午前診が終わってから外来パワーリハビリテーションの部屋を覗く。ここ1ヶ月の間に参加されることになった新しい利用者さんが2組、マシーンの前におられた。すごく明るい。ニコニコされている。声もでっかい。

 お一人は京都から一人で来られている中年女性。右半身の麻痺がまだ残っているが歩くスピードが速い、速い。「近所の人からかなり良くなったねーと言われましたー」と底抜けに明るく話される。まあ、もともと明るい方であったが。

 もう一人の方は円背の高齢女性。娘さんと一緒に来られているが、「今更いい年でこんなことして、と恥ずかしいです」とおっしゃる。しかし娘さんは「結構やる気なんです」と笑っておっしゃった。本当に円背がかなり改善して歩き方が直立でかっこよくなっている。速い。曲がった骨が元に戻るわけではない。軸として背筋が伸びているが、背中の真ん中辺りに骨が突き出ている。しかしそれでも背筋を伸ばして歩けるだけの筋肉が出来てきているのである。

 精神が肉体をドライブする。彼女たちを見ているとこの言葉を思い出した。僕は内科の医者になって30年近くなるが、本当にそのとおりだと思う、特に最近。肉体は精神の乗り物に過ぎない。魂が輝いている限り肉体は復活するのである。人間の本質は精神である。

 身体だけに目を向けている内科医は単なる修理屋にすぎない。精神は肉体を借りて自己を表現している。やるべきことは精神の回復を手伝うことだ。肉体の回復はその手助けにはなりえる。肉体は精神の乗り物であり、いずれは神様に返さなくてはならない。だから大切にしましょう。

 肉体だけが治っても幸福にはなれないかもしれないし、身体がボロボロでも不屈の精神は生涯を輝かせる。両方とも快適なのが勿論一番いいんだけど。だけど車だけピカピカにしているはかっこ悪い。考えるべきなのは魂のアンチ・エイジングなのだ。

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ガッツだぜ!

クール・シスターズ

 外来の患者さんの中には90代の女性が何人かおられる。これがねー、皆さん大変お元気でお若いのだ。頭もしっかりして、ちゃんと化粧もされたり白髪も染めておられたりと、ぱっと見70歳位に見えたりするのである。実際の70歳代の方が結構厭世的だったりするのに比べ、その明るさは際立っている。ここら辺まで生き延びてくると、もともとのパーツが良いのだろうし、下らないことも考えないのだろう。

 往診に行く。93歳のおばあさんであるが、大変美人である。その分若い頃からちやほやされたのであろうか、我が儘で毒舌家。息子さん御夫婦と同居であるがお嫁さんいびりもなかなかのもので、ぶっちゃけ性格が悪いのであった。頭も大変クリアーである。

 「○○さん、げんきー?」
 「あんたに来てもろてんねんから元気なわけなかろ。いやいや、そんなことない。元気です。」
 「相変わらずやねー。この分だとあと20年くらいは十分生きれるよ」
 「なに言うてんの。そんなんやったら息子が気狂うわ。ところで先生これ何?(僕のジーンズに開いている穴に指を突っ込む)」
 「お金が無くて・・・」
 「・・・おしゃれやろ!」
 「(むっ、できる)」
 「あんなー、こんなん着て喜んでる年はとーくっに過ぎてるで!」

 93歳に言われた(泣)

 まあ立派なものである。僕があの年になってあの毒舌が吐けるかというと、ちょっと微妙。元気な90歳代は全員ガールズなのである。男は総崩れ。息も絶え絶えである。大丈夫かな?と思わず心配してしまうようなヨレヨレのおじいさんはいても、切れのいい台詞を吐けるダンディはいない。

 目指せ!毒舌じじい!

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心の傷が・・・(なわけないだろっ!)

梅雨です。

 梅雨である。雨は嫌いかな?こいつが終わると夏になって、そしたら秋になってもう年末だ!と時間のたつあまりの速さにボーゼン。もう1年はほとんど半分過ぎたのね。

 6歳の子供の1日は今まで生きてきた2000日ちょっと分の1であり、僕の場合はと言うと大体19000日分の1だから、当然意識の上で大人のほうが速い感じがするのである、という説明を聞いたことがある。つまりは繰り返しによる慣れなのである。

 記憶力が落ちたという説明も慣れで説明されている(認知症の場合は別ね)。我々はあまりに多くの経験をしたためあまり驚かないのである。記憶が根付くためにはきっかけが必要である。我々はほとんどのきっかけをどこかで経験したことがあるため覚えににくい。全く新奇のフレッシュな事柄はやっぱり忘れないでしょ。

 そして努力。学生の間はやはり記憶力のテストが圧倒的に多く、これがトレーニングとなっている。もう僕たちはそんなことしないもんねー。実はこいつがいけない。般若心経でもカラオケでも、意味のあることないこと丸覚えする!これが記憶力を鍛えることは証明されている。
年齢は関係ないのである。

 なんてことを考えながら犬の散歩をする。カタツムリを見つけた。なんか歌があったよね。でーんでんむしむし、かたつむり。おまえのあたまはどこにある?つのだせ、やりだせ、あたまーだせ?だっけ? あってる?

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なぜかシャメもセピア色だ!なんでー?

東京ナイト

 抗加齢医学会に行ってきました。患者さんにも協力していただいた「高齢女性に対するマルチビタミンの効果」が演題に採択され、久し振りの学会発表でござんす。

 金曜午前中で診察を切り上げ新幹線で東京へ。夕方発表し、その夜共同研究者であり今回大変お世話になったヘルシーパスのT社長(大変高品質のサプリメントを作っておられます)、抗加齢医学会の理事であり、抗加齢クリニックの先駆者の一人である敬愛するT先生ご一行と打ち上げということで食事会。で、始発の新幹線に乗り帰って来ました。後はいつも通りの外来です。ねむてー。

 T先生は僕より3歳ほど年上ですが、お会いするたびその活力に感嘆します。よく勉強し知識量も並大抵ではないですが、人生に対する指針というか、何のために仕事をしどのように生きていくか、ちゃんと考えていてぶれない。
 
 今、県の医師会理事で以前よりまたお忙しいですが、「いや、割と楽しんでやってるよ」とニコニコされながら話されます。ずっとスケールの小さい区の医師会理事でも僕はとてもこれは自分のことが出来ないと感じたのですから、今のご時勢の県医師会理事は本当に大変です。土、日はほとんど無いと話されていましたが、本当にタフです。

 T先生はオリジナルのサプリメントをT社長にお願いして作っていただいているそうです。採血して不足している分を調べ補う、その他抗酸化作用や脳循環にいいサプリメントなど希望を話されて自分用に調合していただいたそうで、オーダーメイドサプリです。内容を聞くとすごーく効きそうです。ご本人もかなりいいと思う、と話されていました。君も作れと言われたのですが、お値段が・・・

 タフな生活を乗り切るには①睡眠(7時間、足らないときはクイックな昼寝)②食べたいものを食べ過ぎずおいしく食べる③定期的な運動(ゴルフが大変お上手です)④好きなように仕事をする⑤好きなように遊ぶ⑥そしてサプリメント、といった感じですね、T先生を見ていると。時間の使い方がうまいです。

 お顔もツヤツヤされておられ、なにか近くにいるといいことがあるんじゃないかなーという気にさせてくださいます。これが大事ですよね。僕のモットーの一つに「やたら機嫌のいい医者」というのがあるのですが、T先生を見習って僕も目指したい。

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いいサプリメントを探されている方は私にご連絡を

 

ビューティフル・ハンド

 ある時、ふと自分の手が眼に入る。手背にしみが出ている。うーん、ふけた手だなぁー。

 年は手にでる。そんなことは女性ならとっくにご存知だ。女性が気になる男性の身体パーツというアンケートで結構上位に来るのが「手」である。髪とか胸板とか、単純なパーツには結構手をかける男も手は案外気にしてなかったりする。

 そんなことで思い出すのは、某生命保険会社で売り上げナンバーワンの男である。保険審査の際に医者の診察が必要だが、僕はその保険会社の嘱託医をしている関係で何度か会った。ある時偶然に彼が非常に優秀で(対応を見ていて十分できると思っていたが)、会社からの報償として年に一度は必ず外国へ長期のバカンスに行っていたり(今でもそんなことやってるのだろうか)なかなか優雅な暮らしをしているのを知った。

 ある時彼の手がとても美しいのに気がついた。

 ほっそりとして爪の形がよく、色艶よく優雅ですべすべしていた。

 「君ってきれいな手してるねー」
 「えっ、・・・・気がつきました?僕ね、エステ行ってるんです。実はうちの家内がアメリカ人で、人に会う仕事してるんだったらきれいじゃなきゃだめだと言われて行くようになったんです」

 10年近く前の話だ。男がエステに行くなんてほとんど概念さえなかった。

 彼は皮膚の色艶をきれいにすること、特に手は大事なんです、と言った。
 「案外目に付くんですよ」

 そうだったか。今書いていて思い出した。手が大事ってその時から実は知っていたんだな。何で実行しなかったのか。

 彼は決してハンサムな男ではなかったが、非常に清潔感があった。そして大変よく気が回った。手にまで気を使う男が鈍感なわけが無い。

 手は脳の一部であり、脳をボケさせないためには手を使えというのは常識だ。その手を美しく保つことは、つまり脳、精神を美しく保つことなんじゃないかな。

今日から実行。やり方は女性が詳しいから訊いてください。

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結構セクシー

イケイケ・ホルモン

 今日はいい天気でしたが、朝の早よから抗加齢医学会のセミナーに行ってきました。うー、つらい。といって何をするわけでもないですが。

 場所は千里のライフ・サイエンス・センターですが数百人入る会場は満杯です。一人のスペースが狭いのでかなわんなーと思いつつ聴講。

 大阪で開催されるセミナーは東京と比べまじめでキャッチーさに欠けるところがある気がする。本日も再生医療とか糖化とか、大事な演題ですがやや日常臨床から離れちょっと退屈か。東京は結構「見た目のアンチ・エイジング」とか受け狙いっぽい。トップのキャラクターの違いが出ているような気が。

 しかしながら浜松医大・金山尚裕先生の「産婦人科からみたアンチ・エイジング」はものすごく面白かったです。生理が終わってから2週間くらい、エストロジェン上昇中は大体活動的で調子よく、プロジェストロンがあがってくる生理に向けての2週間は抑うつ的で調子が悪いということなのですが、ホンマですか?生理前になると自殺を繰り返す女性がいて、エストロジェンの補充療法で完全に立ち直った例が報告されていました。

 これは日常の生活サイクルだけでなく一生のサイクルにも当てはまり、エストロジェンの比が高いとイケイケのようです。産褥期とか更年期はそれで危ない。抗うつ剤などの効果も生理のサイクルで変わってくるので女性に投与するときは考えなくてはならないという、内科医には本当に新鮮な話でした。

 女性のことは前から知らんと思っていたがやっぱりね。

 こういう周期って男性ホルモンには無いようですが、詳しくは調べられていないな、多分。とりあえず男の特性というのは女性と比べあまり研究されておらずおざなりであります。そこに興味があるな、個人的には。

積極的快楽

 実は私は感じやすく、脆い人間なんです・・・と公的に常々発表しているのだが、どうも評価は鈍くて乱雑、のーてんき、ということである。悲しいなぁー、見破られたか。

 しかし大雑把で鈍い私でも、なんとなく身体の声が聞こえる時がある。なんともいえない快楽のしるし。なんとなくくすぐったいような、ジーンと少し痺れるような、ともかく気持ちいいのだ。伸びをして、あー、と言う感じね。

 これは間違いなくβエンドルフィンとか、快楽の神経伝達物質が出ているに違いない。そして、やはり多くは運動後なのだ。筋肉が喜んでいる感じね。

 昔ウインドサーフィンをしていた時、セールを洗った後で熱いシャワーを浴びるのだが、1日乗ると結構強い全身運動なので、その時の筋肉がほどけていくような、全身が痺れるような感じ!これが楽しみでやっていたようなとこもあった。大体運動後のシャワーはかなりクルね。

 筋トレをしてサウナにいって、冷水につかっていたりした時も、じわーとクル。1日歩き回って、寝転がって伸びをした時にも電撃的な快楽が…(ちょっとオーバー?)

 こういう快楽経験が生活の中で多いほど若さが甦ってくるに違いない。いろいろ身体にいいといわれているものは沢山あるが、多くは結構賛否両論だったりする。だが、あまり激しくない運動を定期的に行うというのは、まさに全世界的、全人類的に疑う余地のない王道であります。

 やたら苦しいのは駄目、やっている時も割りと楽、でいいのだ。何もしないでボーとしているのも悦楽だけど、積極的な快楽のため動きましょう。こっちの方が後の刺激がキツイです。まっ、好みですが。

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まっ、やり方はいろいろ

ナウ・イズ・ザ・タイム

 昨日、精神が身体をドライブするという話をしました。高齢になれば気力のあるものが強いということで、これは多くの事例があり確立した意見ではあります。

 しかし逆の説もある。身体が精神をドライブすると最近よくいわれています(どっちなんだよ?)。実験によると運動したねずみはそうでないのより覚えが早い。良く鍛えられた肉体を持った人は認知症になり難く、精神的にも前向きな人が多い、というデータもあります。

 手足は第2の脳であり(末端まで脳神経はかよっている)、ギャンブルでもいいから手を使え、という言葉もあります。

 つまりは出来るだけ身体を鍛えろ、そうすれば精神も鍛えられる。身体が駄目になった時、この精神が力を発揮するのだ、ということなのでしょう。

 メンタルがだめだ!というわけで、メンタルトレーニングの重要性はよく指摘されますが、これも身体を動かすこと、練習量を増やすことが一番確実なようです。本当に良く練習をしていると、「技術がメンタルを越えるのだ」(某ゴルフコーチ)のだそうです。

 ま、なにはともあれ身体を動かしましょう。外来をしていて思うのは、本当に皆さん、圧倒的に運動不足です。1時間のテレビの代わりにウォーキングとストレッチ、できれば少しの筋トレを。1年たてば別人です。

 自分を変えることくらいエキサイティングなことないでしょう?外は桜。時は今。ナウ・イズ・ザ・タイムでございますわよ、各々方!

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来週までもつかな?

 

ボーイズライフ 

 ここ1年半ほど、本当にアルコールを飲まなくなった。此の頃では外でイタ飯を食う時でも、フレンチでも水!である。うおぉぉたぁぁー!である。こういうのって、グルメの方々からは「世の楽しみを知らん無粋なヤツめ」と思われるんだろうなぁ、まあ自分もそうだったからよくわかる。

 でもね、やってみるとこれはそんなに悪くないのだ。むしろ物の味がよく分かる。アルコールとのマリアージュというか、組み合わせの妙も確かに料理の醍醐味ではあるんでしょうが、水だって1種類ではない。ちょっとしたレストランには何種類かミネラルウォーターがおいてあるが、泡のある無しその他、結構違うのでこれも面白いのだ。

 タバコを援護する人はもういないが、アルコールに関しては適量ならむしろいい、というのが通説である。でも本当にそうかな?アルコールに弱い、いわゆる顔の赤くなる人は、アルコール分解産物のアセトアルデヒド(これはシックハウス症候群とかの原因物質ですね)血中濃度が高くなり、高率に癌をひきおこすというのは常識である。

 外来の方を診ていても、アルコールをお止めになったら遥かに健康でいられるのに、という方がゴマンといる。でも難しいんだな。 

 数十年にわたってやってきた寝酒をやめて最初に思ったことは、目覚め感が「おお、高校生のようだ」ということである。突然昔に戻った感じがしたのだ。ボーイズライフ アゲインである。

 もうどんどんボーイズライフの範囲が拡大してくる。このほうが気持ちいいんだからどうしようもないな。考えてみりゃ、これはアンチ・エイジングか。

 タバコを止め、酒を止め、ちゃんと勉強し運動する。風呂にザブンと入りガーと寝る。女の子は見るだけで胸をときめかすだけにとどめる。男友達とつまらん冗談を言ってガハハ!と笑う。

 うーん、ボーイズライフ! 理想だ・・・

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アルコール摂取量と死亡率のクールなグラフ

P.S. Free Tibet !

 

老年学に学ぶ!

 「老年学に学ぶ」(角川学芸出版)という本を読みました。山本思外里という方(今年79歳)が書かれておられるのですが、ご自分が楽しく有意義に老後を過ごすために古今東西のそれ関係の本を多量にお読みになり、引用しながらご自分の意見を述べられているものです。僕も職業柄同じような傾向の本をよく読んでおり、重なるところも結構あって(しかし彼の量は圧倒的です)、自分自身の整理のうえでも有用でした。

 健康寿命というのがあって、これは日常生活を健康におくれる最長年齢のことであり、普通の寿命との差が、いわゆる寝たきりとか、病的な状態で過ごしている時間ということになります。健康寿命も日本人は男女とも世界で最長です。日本のお年寄りは実はかなりお元気である。しかしなぜ高齢というとあんなに悲観的な論調が多いのか。どうも変だな。

 日本で高齢者関係の本を書いているのは医療関係者、特に医者が多い。医者が普段接しているのは基本的に病気をお持ちになっているご老人であり、研究範囲も病的状態である。それが一つの原因ではないかと思います。

 この本の基本的なトーンは「年をとれば病み衰えて役立たずになり、社会的な厄介者になるという老いの神話を打ち砕き、素晴らしい人生の秋である老年期を愉しもう」というものですが、多くの信頼できる文献(海外のものが多い)を挙げられてかなりの説得力があります。筆者の山本さんもかなり前向きな方だろうと想像できます。

 昔の日本人で「養生訓」で有名な貝原益軒が紹介されていますが、なんかめちゃモダンで、その考え方、生き方たるや今のアンチ・エイジング・メディスンそのままです。いや、勉強になりました。ウジウジしててもしゃあないよ。

 こういう元気が出る本(しかも根拠無い元気でなく裏付けのある)はいいなぁ。今日はばっちり春っぽく、今年初めてオープンにしました。季節も元気出せ!と言っているようです。季節にふさわしくウキウキで生きましょう。

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いい季節はいいなぁ