カテゴリー別アーカイブ: 抗加齢

森林セラピーに散策は必要か?

横浜での第19回抗加齢医学会総会も終わった。当院から鍼灸院院長の小西先生が「森林セラピーに散策は必要か?」のタイトルで口述発表。

森林セラピーはごくシンプルに言うと、森の中で過ごす時間を持つことが心身にいい影響を与えるので森に入って日頃たまってるストレスを減らしましょうということ。医学的にも実証されているのでセラピーという言葉が使われている。

樹木の出すフィトンチッドがリラックス効果をもたらすといわれているが、多くは軽い散策を伴っている。もちろんせっかく気持ちのいい森の中にいるんだから少し動いた方が楽しいよ、景色もいいし、ということであろうが、小西先生の「森林セラピーの効果って歩くことの効果じゃないのかしら?別に森の中じゃなくっても」という常識を覆す発想から始まった。いいぞ小西!ナイスな発想だ。

少し前から町興しの関係でつながりのある奈良吉野町に森林セラピー基地があり(森林セラピーのできる森は基準があり日本では63か所のみ)、そこで地元の女性16名に協力をお願いして小1時間の軽登山を行う人たちと、森の中でほとんど動かずハンモックでゴロゴロしている人たちの2グループに分けてリラックスの色々な指標を測定し比較した。上の写真はセラピーロードの一部ね。

結論を言うと、森林セラピーは確かに血圧を下げたり身体にとっていい影響をもたらす。それは両グループとも一緒。でも心理的なリラックス効果は散策をしたグループの方が有意に強かったのである。やはり軽い運動を加える方が全体的に満足感が強いことになります。でも身体に支障があり歩くのが苦手な方でも森の中にいることはそれだけでいい効果があるのであった。

自然は偉大だなぁ・・・

僕の1年は臨床は別にして、この学会に出すこと、そして7月の抗加齢研究会に出すことの2つが軸になっている。その内容をきちんと論文にしていけば1年の落とし前がちゃんとつく。森林セラピーは小西先生が頑張ってくれそうである。でも僕には書かなくてはいけない宿題がまだ2つあるのですが・・・。

僕と同年配で同志である福岡は髭のN先生(学会での飲み会では漫才をした。下記の写真)は、ある時ラインで「今英語の論文を書いています。遊んでばかりじゃだめですよ、清光くん」とぬかしやがったのでありますが、まさに正鵠を射たその忠告に僕は3日ばかり机に突っ伏して動けなかったのである。やらなあかんことは怒涛のようにあるが、その中で論文を書くというチョイスはまさに鉄人。彼の爪の垢でも煎じて飲んで(しないけど)、頑張ることにします。

抗衰老

この前、済生会野江病院が主催する大阪市東部地域医療連携学術講演会で「老化と薬」のタイトルで講演をした。薬は特定の病気を治療するために設計されるわけだが、治験の最中で違う良い効果があることが分かり適応を変更する(男性型脱毛症AGAの薬ミノキシジルは最初血圧を下げる薬として開発されていたが、治験中髪の毛が生えてくる事例が続出し方針転向)ことや、現在ある薬を用いて違う効果を期待する使い方をする(Old wine in new bottle と言う) ことはそれほど稀ではない。

で、僕の専門の一つである抗加齢ーこの言葉より上の写真にあるアンチエイジングの中国語である「抗衰老」の方が思ってる感じに近いーに効果のある薬はないかと探したところ、これがあるんだなぁ、いくつか。その中でもハイレベルで有名なCellという学術誌に掲載された7つの抗衰老の方法の中にあるメトホルミンという薬を取り上げることにした。

メトホルミンは昔からある糖尿病の薬だが、老化に密接に関係するインスリンに関係なく血糖を下げる。ある時、糖尿病患者の死因分析の研究で、メトホルミンを内服していた人は有意に癌死が少ないという結果が出た。減少した癌の種類は多種多様で、それ以後の研究でも膵臓癌や大腸癌などの消化器癌から乳癌や子宮癌、脳腫瘍など多岐にわたる発生率の抑制がみられたのである。

そのメカニズムだが、メトホルミンは細胞内でmTORC1というたんぱく質キナーゼの活性を阻害する。mTORC1は細胞の状態によって細胞を癌化もしくは老化に促進的に働くので結果として癌の発生率をおさえ、老化も抑制することになる。それ以外にも細胞内、ミトコンドリア内でメトホルミンは色々な作用を持つことが最近多く報告されており、臨床的にも心血管疾患を予防するとか認知症にも有望、なんと大腸ポリープの発生率も40%抑えるというデータも出ているのだ。いいじゃないか、メトホルミン。

抗衰老の方法は明確である。①運動 ②栄養 ③睡眠 ④社会参加 ⑤ご機嫌でいること、といったところかねー。各々何をどの程度というのは個人差もあり確実に数値化できないけどこれらのファクターは間違いなく健康に影響する。でも良いとわかってるけどできない、というのが一般的な感覚かな。だとすれば効く薬があれば嬉しいということで糖尿病の人はメトホルミンを試すのも手です。

でも一番大事なのはオレは「抗衰老」でいくぜ!という強い決意だと思うけどね。

B.C./A.C.

ブログの名前を変えた。「ゴキゲンジャーナル」。バナーも変えました。熱帯雨林の写真に浮かび上がる幼稚な文字と、サルと並ぶ着ぐるみ院長の写真。とてもちゃんとした人が書いているとは思えません。そう、 正解です。

でもこれから2週間に一度で更新します。よろしくっ!

でB.C./A.C.の話。これはビフォー・クライストではなく(紀元前後はB.C. A.D.ね)ビフォー・アンド・アフター・カーボハイドレイト・リストリクション。糖質制限前・後の話です。実は2か月ほど前から糖質制限をやっていてその力に驚いた。前後で自分が大きく変わった。

白米、パンはほとんど食べてないし、甘いものなんぞ毒としか思えないようになった。それでも食べているおかずには結構糖分が含まれていたりするので厳密に1日糖質何gでやっているかは不明ですが、100gはいってないと思います。制限程度は日によるというゆるいやつですけど。

①体重が3kg減少してそのまま維持。②お腹周りの脂肪が減少(ベルト穴にして2つ分くらい。古いズボンがなんなくはける)。③食後や勤務後に眠くならない。④疲れない(本当に!)上に安眠できる。⑤記憶力がよくなった(スタッフは認めてないけど)。などの変化がありました。同じようなことは糖質制限の本を書かれている先生方が述べられていますが、僕としては③④⑤あたりが実感できるのでぜひ続けたいと思います。

あまり厳格なのは健康によくないとか今だ評価が必ずしも医学的に確立はしていないですが、少なくとも短期的な効果に関しては間違いのないところです。僕のようなちょっとルーズなやり方でも血糖を持続的に2週間継続モニターしたところ(器械はアマゾンでも買える)、血糖値は140~70 mg/dl の間を出ることはなくケトン体が出ているか測定はしていないがインスリンのピーキーな分泌は起こっていないようである。これはいいんじゃない。血糖の著しい変動は諸悪の根源です。

白米を食べないとおかずの味がよくわかるようになり、食べる内容もちゃんと考えるようになり、いいことずくめで今のところ全く苦も無く制限ができています。少なくとも1年は継続して変化を見たい。糖化の抑制から老化を制御する、これは抗加齢医学的アプローチの現在のところのファイナルアンサーではなかろかね。

 

 

またまた抗加齢医学会

 5月の25,26,27日と大阪で抗加齢医学会総会がありました。地元です。会長も日ごろ仲良くさせていただいている近畿大学皮膚科教授の山田先生ということで、いつもの総会にまして心の中の重要度は高かった。

うちの発表演題の一つは、認知機能が低下すると和音を聴いた時に喚起される情動、気持ちが、普通の場合と異なってくるというもので、認知機能が低下するより前に嗅覚が落ちるとか認知症における感覚機能の低下が最近話題ですが、こういった情動に着目したものはほとんどなくてこれは自信の演題であった。といっても全くのオリジナルでなく、例年の抗加齢医学夏合宿で独協医大の岩波先生が発表されたものを少しモディファイさせていただいて、岩波先生も共同演者です。

僕は他のセクションで座長をしていたので小西先生が発表してくれたのを聞けなかったのだが、なかなか好評だったようで、これはペーパーに出来るかな。僕は座長が3つ、発表が1つとなかなか多忙でしたが、いろいろ勉強になることが多く、月並みであるが充実した大会でした。

それ以降、私的にも幾つかやるべきことが終わり、なんやかんやこれを書いている6月10日は、なべて世はこともなし。 気も抜けているがリフレッシュ感すごくあり。 明日から楽しみ。

 

63

63歳になった。いゃーびっくり、63というのはなかなか重みのある数字だねぇ。

20代の時はジジイ過ぎて想像もしない年代。でもいざなってみると、恥ずかしい話だが20代の時とそんなに変わんね。さすがに経験値が増えてるので世の中や人間の仕組みが少し透けて見えるので生きやすくなってるのは確かですが。

月並みすぎて申し訳ないが、速いー!パラパラ漫画のように時間が過ぎていく。

「邯鄲の夢」という中国の故事が好きである。若者が出世しようと街に出る旅の途中でふとウトウトした間に自分のこれからの波乱万丈の人生を一瞬の夢で見る、目覚めてその虚しさに気づき故郷に帰るという話。

僕も死の淵に立った時、ふと目が覚めると何も変わっていない10代の頃の僕が居たら、こいつは嬉しいな。故郷なんかには帰らない。ぜひそうなってほしいが叶わぬ夢?  いやいやそんなことはない。

僕が生まれた年の日本人の平均寿命は63歳。驚異の死亡率の低下がなければ今の僕は死の淵に立っていたはず、と。もう死んだも同然と。とすると、これは今夢から覚めたというふうに考えてもおかしくはない。

というわけで生まれ変わった気持ちでブログも再開、股関節の手術後ほんとに疲れなくなり体力的にはどう考えても若返ってるので63-X(恥ずかしくて書けない)歳で目が覚めたと、これから若気の至りを連発することに決定しました。

高血圧、じゃなかった高気圧ジジイ

高気圧

一昨日、突然幕がスルスルと上がって夏が始まった。全然違うやん、と朝、車に乗り込むときに思う。陽光が違うし蝉の声もダンチにうるさい。おお、麗しの夏よ、せっかく来てくれたのに後せいぜい2週間程度のお付き合い。仕事なんかしてる暇はない。

「夏とは単なる季節ではない。それは心の状態なのだ」 片岡義男氏の至言をかみしめながら。

退院してから沢山やること、やりたいことがあって手術前よりグッと時間が凝縮している。幸いにして世界の輝度は上がったまま。今までもったいないことしたな。でもそんなこと言ったってしょうがない。

先週、第7回抗加齢医学臨床サマーミーティングが東京トータルライフクリニックの馬渕先生担当幹事で浅草であった。これでシーズン1が終わり来年から心機一転、創立者田中先生の地元静岡からシーズン2が始まる。70人以上参加し幕切れにふさわしい充実した会で、発表内容もグレード高く、抗加齢医学会理事の先生方も「学会と変わらないね」と感想を述べられるくらいだった。当院も一見正常に見える外来定期通院患者さんの中から認知症を拾い上げる、スタッフの手間がかからない自己記入式のテストの成果を発表した。発表側が自信満々に較べその便利さがこちらの発表テクニックの未熟さでうまく伝わらなかった感あり、若干残念。しかし今度の抗加齢医学会までに症例数を増やしてまとめる予定で、何よりもスタッフが熱意を燃やしているのできっとうまくいくと確信している。

このミーティングは実際に抗加齢医学を臨床で行っているドクター、コメディカルが参加しているのだが、みんなの明るさが特徴だと思う。日常の外来で結構手一杯のはずなのに臨床研究をやるという人達のバイタリティと好奇心と自負は、日常の詰まらないことなんて気にしないという健康な明るさにあふれている。愚痴、なし。いいね。

運転しながら会であったことを思いだしていると、カーステレオから「高気圧ガール」が流れている。空気感がこの朝にぴったりだ。「夏だ、海だ、達郎だ!」という古臭いコピーを思い出し、この短い夏を楽しく過ごす策略に思いをはせ、そして高気圧ジジイじゃなくっちゃね、と思い至ったのである。

1955年産ヴィンテージ

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新年も明けて、また日常が戻ってきた。行き返りの車の中では瞑想 (寝てはないよ、多分ね) もしくは音楽を聴くといういつものパターンだが、昨年と違うのはmusicの種類がやたら増えたことだ。

Amazon の prime music である。年額4000円に満たない金額で音楽ダウンロードし放題という太っ腹なやつである。これでBluetooth をとおして聴く曲がやたら増えたのであった。Beatles までもがオリジナルで聴けるというのは衝撃であった。それにちょっとどんなかなーと思った曲、アルバムがすぐ聴けるので便利なことこの上ない。もともとAmazon の Kindle で僕の読書ライフが大変革を遂げたのだが(雑誌のブルータスまでもがダウンロードできるという衝撃!読みたい本がすぐ読める。この前クラウドをみたら600冊以上購入していた・・・)、今度は音楽、そして映画 prime video もである。このままでは抜けられず死の三重奏である。Amazon addict,、依存症である。いかん・・・。

と言いながら今日もちょっと興味のあった上田正樹、有山じゅんじ、山岸潤史という、知ってる人は、おおっー! というメンバーのBitter Sweet soul というアルバムを聴く。極めてよろしい。上田+有山 の「ぼちぼちいこか」という全編大阪弁のソウルアルバムは僕のfavorite だが、それとはまた違う。くそ真面目でなく脱力したハーフシリアス。ええなーこの、なんというかいろいろ苦労もしてわかってる感じ、うーーーーむ、この味はこの年じゃないと出ないね・・・・。

僕は自他ともに認める新しもん好きであります。でも、このごろ安らぎを感じ、心よりいいな――と思えるのはアンティックというか、時代を経てその美しさにますます磨きのかかったものなのです。今は何でもバーチャルでもなんでもすぐできちゃうのだが、その分本当に時間のかかったもの、歴史に耐えたものが貴重になってきたと思う。

人間もしかり。本来経験は宝であり、若造と違っていい中年、老年のおっさんは尊敬に値すべき存在である。しかるに、どうも老いを恐れる風潮があるのは、存在が美しくない、羨ましくない、ああはなりたくない、という存在が多いせいか。  これはいかんね。

カッコのいい古いもの、これはなんていうんだっけ、ヴィンテージか。Wikipedia博士によれば本来ブドウの当たり年をさすようだが、そこから派生して、古いけどアタリ!というものを慣用的に言うようになったらしい。家具とかジーンズとか車とか。

人間もそうなるべきね。僕は抗加齢医学とは「医療、介護と出来るだけ無縁でいるにはどうするかを研究する学問」と思っているけど、「ヴィンテージになるための学問」としてもいいわけだ。

僕と同年生まれのヴィンテージ、明石屋さんま(?)、郷ひろみ(?)、Char (!)、ケビン・コスナー、ブルース・ウィリス、スティーブ・ジョブス、ビル・ゲイツ (ITは当たり年だ) etc, ふーーーーーーーむ。

まぁ、頑張ります(声も小さく)。

副腎疲労症例検討会

IMG_1465この週末は東京で、「第1回副腎疲労症例検討会」に参加してきた。副腎疲労adrenal fatigueの第一人者である本間夫妻の主催で、10名強のクローズドな勉強会である。参加者は全員発表、他者の発表に一言も意見が無いと次回から参加資格なしという厳しい規定のもと、準備の段階でこっちが副腎疲労になりそうだったが、なんとか大きなドジもなく済ませてきた。

会場は「東京アメリカンクラブ」という、この会が無ければ一生足を踏み入れなかったであろう会員制のクラブで、前夜祭の飲み会からそのオシャレさに感動ものである。ロシア大使館の隣というのがちょっと妙な気もするがそうでもないか。

抗加齢医学の夏の合宿もそうだけど、こういった会に来るドクターやパラメディカルの方の、その強者度合いには感嘆する。スケールでっけぇ。仕事のレベルの高さ、性格の良さもさることながら、やりたいことに対する迷いの無い執着の強さが素晴らしい。知りたい内容の検査なら結構高額でも患者さんに無償でやっちゃうというのは普通で、新しい施設の家賃2000万(月に、だよ)でもやるとか(借金は男の甲斐性!)、情報を得るためにはクリニックを休んで頻回にアメリカにいくとか、ちょっと普段僕の周りにはいない強の者ぞろいでなかなか痛快。しかも男女とも結構おしゃれ。このような方々がいるんだと思うと気が楽になる。

副腎疲労の検査自体はかなり複雑なものもありまだ勉強が必要だが、こういったものを自分の武器にしていくのは楽しい。副腎疲労や抗加齢医学関係の知り合いはいずれ日本の健康保険制度が破綻しても自由診療でやっていけると思っている人達で、こういった気概があるから楽しそうなんだろうな。いいことだ。ブツブツ日常の不満ばっかり言っているその辺のおっさん医者より100倍素敵であります。

この会の発表は実際結構プレッシャーだったので今はかなり心やすらかで(なんか前もこんなことを書いてたな)、これからやりたいことのプランもどんどん出てくる。まぁしばらくこのフリーな気持ちを楽しもう。どうせまたなんか出てくるだろうし。

 

スーパームーンの夜に

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この9月は連休をつぶして東京までセミナーに行ったり、ちょっとした会で2つほど発表があったりして物理的にも精神的にもあまり余裕が無かった。で終わった訳ではなくまだ2つあり、外来も寒くなって患者さんが増加気味で終わるのも遅くなり、疲れて家に帰ればただ寝るだけという、最近僕には珍しくローエネルギー状態が続いていたのであった。

 風呂から上がってボーーーとしていたら月が明るい。ニュースでスーパームーンだと言っていたなと思い出しベランダに出る。夜目にもわかる鱗雲の間をいつもより大きめに見える月が煌煌と光っていた。夜風が気持ちいい。いただいた焼酎があったのを思い出し、お湯割りにしてちょびちょびと飲んだ。30分ほど外にいたらエネルギーが回復してきたのがわかった。

 抗加齢医学会では健康を保つのに留意する事項として ①運動 ②栄養 ③ゴキゲン をあげている。①②は誰でもわかっている。③であるが、気分は風まかせ、だって自分でどうしょうもないじゃない、と思ってる人が多いのではないかな。なんとなく疲れている(これはほとんど精神的ファクターだ)、気分がアップしないとき、そのままにしないで上げるようチャレンジしようというのが今回の趣旨です。

 月を見れば回復する程度ならどうってことないが、もっと重症な時、視点を変えるのが一番ポイントだ。これにはアドラー心理学とか仏教とか、ちょっと捜せば説得力のある本が何冊も見つかる。そのフレームを持っていれば深い井戸に落ちることは無い。

 で積極的に快楽を捜す。小さなものから(村上春樹氏によれば小確幸)大きなものまで(これはかえってエネルギーを吸い取るかも)この世は捜せば快楽、悦楽に満ち満ちている。何もしないで寝ているのは本当にもったいないことだ。

 突然捜しても見つからない。かえって疲労が増す。手持ち、引き出しを多く持っていることが肝心だと思われる。そのために人生はあるんじゃないかと思う。こうすれば気分は回復する、そのカードを多く持っている人は強いね。

 オールマイティのカードは待っていても来ないぞ。若いときは向こうから転がり込んでくるチャンスもあるだろうが、ある年になると能動的に動かないとカードはつかめない。「果報は寝て待て」という諺があるが、そうしていると寝たきりになるだけです。

 

 

鏡の力

最近風呂上りがビジーである。まず保湿液を顔に塗り、美白エキスを塗り、クリームを塗り、乳液でフィニッシュと手間がかかる。ひぇー。

どうしたんです!?何を今さら・・・と言いたい気持ちはよくわかる。しかし僕は学問的探究心からやっているのである。

慶応大学は水島徹教授の「HSPと分子シャペロン」という本を読んだのが始まりだ。キンドルを触っていて、これは面白そうねとダウンロードしたのだが、今まで挫折したブルーバックスも結構あるのにこれは数時間で読破してしまった。

HSPとはヒートショックプロテインのことである。HSPは熱ショックを与えると増える蛋白質として発見されたが、その後さまざまなストレス(精神的なものでも)によって増えることが分かってきた。そしてHSPはこれらのストレスから細胞や個体を守る働きをしているのである(シャペロンとは社交界にデビューするお嬢様のお世話係のことで、身体の中で様々な作用をする蛋白質を助ける分子のことを示すネーミング、HSPもその1種)。

水島先生はHSPを増加させる薬品の研究をされているのだが、その一つの成果として皮膚を紫外線障害から守り、メラニン産生も抑えてシミの発生も防ぐというHSP70の働きを証明し、そのHSP70を細胞内で増やす生薬「ヤバツイ」を発見された。

そしてそれが○○○○○リンクルの化粧品に配合して販売されているということが分かったのである。世界初のHSPを増やす化粧品だそうである。光老化対策、いいじゃないの、ホントに効果があるか試してみようというわけで手に入れることにした。

ところが○○○○○リンクルの化粧品は、まずはお試しセットを無料で送ってもらって使用して使い心地をわかってからでないと購入できないシステムなのです。経営戦略だがまぁ良心的といえば良心的だ。で送ってもらった。化粧落としから最終的にお目当ての日焼け予防美肌クリームまで7種類。せっかくだから全部使ってみよーというわけで風呂上りが忙しくなった(化粧落としは使ってない)。

でわかったことだけど、こういうのは一度すべての男がやった方がよろしい。日本男性が自分の顔をじっくり見る時間が1日平均どれくらいなのかは知らない。若いやつだと結構あるかもしれないが、僕と同年代の男性は僕も含めて1分あるか無いかじゃないかな。しみじみ見ると、あぁ、なかなかひどいねぇ―と実感できる。そして何かしら自分と対話し始めるのである。普段考えない自分のことを考え始める。内省しちゃう。鏡の力だ。

女性が化粧している時毎回こうだとは思わないけど、少なくとも何か自分を振り返る機会は男より多くなるんじゃなかろうか。そして自分というものも顔を通して意識することが増える。

全く無防備で鈍感な男は1日数分、じっくり自分の顔を見ることはした方がいい。何もないと出来ないので、こういったスキンケアはあった方がいいかもなー、と思った。

もうお試しセッは使ったので自分の顔鑑賞タイムはまたほとんど無くなってしまったから、なにか購入した方がいいかもな。HSPの効果もまだあらわれてないようだしねぇ・・・・。