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若いのにカラメル化

あぁ、もう1年たったか…去年も夏休みの終わりにパールスを書いていました。去年と同じく何も考えず、文明を離れた場所でぽつねんとしていたのですが、なんと生まれて初めて眩暈を経験。頭を動かすと目がぐるぐる回って数秒でおさまる。どんどん増悪もしないようで、これはどうも良性発作性頭位変換眩暈症のようだと考えて1日おとなしくしていました。起こるとわかっている方向に頭を動かすとだんだん慣れてくるのでそう指導しても良いとアメリカの教科書に書いてあったのを覚えていて、この患者さんが来ると僕も軽い方にはそう言う時があったのですが、みなさん「そんな…」と答える。自分でなってみて思いました。「そんな…。吐くやないか!」自分より頑強な人の言うことは信用してはいけません。

頭を動かないと全然平気なので結果的にまたまた本がよく読めました。アンドルー・ワイル博士の「ヘルシーエイジング」をまるまる読んでしまったのですが、これは素晴らしい本です。僕はこのたびおめでたくもまだ少数しかいない抗加齢医学会の専門医になったのですが、今巷ではびこるアンチエイジングという言葉にはどうも抵抗がある。年取ることは悪いことではないのでー、だのになんでアンチだ!このヘルシーエイジングという言葉を使うべきですね、本来の理念から言うと。その年齢におけるベストの身体的、精神的健康を保つ(オプティマルヘルス)というのが目指すべきところですから。

「ヘルシーエイジング」でワイル博士は1つの仮説を紹介しています。「カラメル化による老化」。カラメル化?砂糖を加熱するとキャラメル色に変色しますね。これをいうのですが、料理の際に砂糖をクリームやバターと混ぜて加熱する、つまり糖質とたんぱく質やアミノ酸が反応するとトーストやグラタンのきつね色になりおいしい匂いがします。これをメイラード反応(この本ではマヤール反応と書いています。同じことですがメイラード反応のほうが一般的)といって多くの魅力的な料理の基本であるのですが、これは古ぼけた写真が黄ばんでくることや、土が褐色であることのひとつの理由でもある。そしてこれは生物の体の中でも普通に起こっているのです。

生体には糖質や蛋白がいくらでもありますし、触媒もあって加熱しないでも体温だけで完全な反応が起こる。動脈硬化や白内障など老年病の進行が糖尿病の方で特に早いのは常識ですが、その病理変化のかなりの部分がメイラード反応の結果として生じているとされています。もしかしたら老化とは、我々の体組織のゆっくりとした褐色化、つまりカラメル化ではないのか?

むむー、甘いものを食べると体の中で組織がカラメル色に変色していく気がしませんか?そこの女の子!君のお腹の80%はカラメル化しているぞ!この説は1部認められて研究が進んでいますが老化の本態かどうかは断言できない。しかし糖化の最終産物が身体の様々な障害を引き起こすのは間違いないようです。そもそも古来人間の手に入る糖質源は熟した果物か蜂の巣とかそんなもんだったのだ。甘いものはいかん!これから食べないようにしよう、と深く決心して3時間後には忘れてましたが。眩暈がしそうです。

しかし糖を断たないととうがたつよ、みなさん。若いのにカラメル化はいけません。

薹が立つ(とうがたつ) 1.蕗(ふき)や菜の花などの、花茎が伸びる。固くなって食べ頃を過ぎてしまう。2.人が、その目的に最適の年齢を過ぎてしまう。若い盛りが過ぎる。特に、婚期についていう。

不幸に見えない

 今日も忙しかった。これを読んでいる皆さんだって相当忙しいとは思うが、僕にはこのような1日が週に必ず1、2回あるのだ。

 朝7時半前に仕事場に着く。メールチェックをし、書けるやつは急いで返事を書き、今日はこれをやらないとケアマネージャーから殺されるかもしれない遅れに遅れている介護保険の意見書を書き飛ばす!怖いからやってるんじゃないよ。利用者さんのためだ。遅くなってすいません。

 8時半から心臓エコー検査をする。その後予防注射を2人。すばやくやって泣かないように済ます。そこから午後1時半までおしっこも行かず外来。ミネラルウオーターを3杯。昼飯を食う時間なく医師会の副会長、事務長と一緒に大阪健康科学センターに、今年の城東区健康祭りの医師会ブースでの展示ねたを仕入れに行く。メタボリックシンドローム、禁煙にしぼり、めどがついたのでほっとするがもう3時過ぎ。タクシーで寝そうになる。

 帰り着いたのは午後4時前で、法人本部で速攻ケーキを食う。2分。すぐ診療所に行き予防注射をし、外来。午後8時まで。ミネラルウオーターを3杯。その後意見書(ふえー)を2部書き飛ばす。9時前に建物を出る。

 不幸だ!不幸に違いない!しかし僕の昔から変わらない一つの特徴として不幸が表に出ないというのがある。医師会からあせって自転車で飛ばしていると知り合いの先生に会う。「真っ黒に焼けていつも楽しそうやねー。どこに遊びにいくん?」

 どこが!

 幸福なのに不幸にしか見えないというのよりはましか・・・

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名タクシー

 先日仕事で名古屋に行きました。旅行の印象なんてちょっとしたことで変わりますが、名古屋はタクシーの素晴らしさで、僕の心の中のベストテン上位に食い込む町となりました。

 4台、遠距離、近距離乗ったのですが、運転手さんが老若取り混ぜて礼儀正しく親切、感じのいいことおびただしい。やけに馴れ馴れしいとかそういうのではなく、decencyな感じで、仕事にプライドをもってやってるなーと感じさせました。くじ運が良過ぎたとも思えないですが。

 タクシー業界もなかなか競争がきびしいのかなとも思いますが、名古屋は今景気がよく、何かそんな余裕を感じさせる応対でした。飯を食ったところの応対も同じで、元気でやさしく礼儀正しい。道路も広い、ちょっと野暮ったいお姉ちゃんが多いのも素直な感じでええやん、ええとこやなー、名古屋のタクシー略して名タクシー、そのとおりやと、一緒に行った友人と感動を分かち合いました。

 大阪に帰ってきてまたまたタクシーに乗ったのですが、何か慇懃無礼で淋しいなー。やっぱりこんなところから街の復興は始まるんじゃないだろうか。

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それ以上のもの

 僕はいつも朝6時半に起きて愛犬の散歩に行きます。4年前に彼女は来ましたが、散歩できるようになってから朝はほとんど僕が連れて行っていて、行かなかったのは本当に数えるくらいです。

 朝の匂いは独特です。季節の変化が早く感じられて眠いのはいやですが散歩をやめる気はありません。で、ここ2,3ヶ月ほど前からよく顔をあわす人がいます。ビジネスマンですが僕より少し年配。いつも上等そうなスーツで姿勢よく歩く大きな人ですが、顔が愛嬌のある眼鏡面で、なんとなく好感を持っていました。こういうのはお互い判るもので、なんとなく挨拶し始めて、最近は時々立ち話します。

 今日は彼女が積極的に寄っていたので慣れた手つきで毛並みを撫ぜてられました。
 
 「犬は飼ってられるんですか?」
 「いや、飼ってない。」
 「慣れてられますよね。」
 「うーん、大昔シェルティを飼ってたんだ。だけど死んじゃってね。母親が世話をしていたんだが大変でさ。人間と同じで動かなくなってから寄り添うようにずーとしてて、これじゃまずいからってんで家族中で世話したんだけどね。死んじゃった。それから死ぬことを考えると飼う気がしないんだ」

 こう来ると返答できない。こいつは僕より先に死んじゃうんだなぁと何かのひょうしに思うと、いや考えるのはやめようとその考えを振り払う。逆かもしれないし。

 「そう思うと悲しいなぁ。長生きしてほしいです」

 彼は撫ぜるのを止めて立ち去りながら言った。

 「でもね、それ以上のものがあるね」

 愛するものがある喜びには、失う悲しみが必ず伴う。でもそれを恐れて愛さないのは臆病者?出来る時に後悔しないよう誠心誠意一緒に楽しい時間を過ごしてあげよう。

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一応合格

 抗加齢医学会専門医の認定試験に合格しました。専門医の試験は今年が2回目でまだ全国的に数が少なく、受験資格を得るのさえ結構大変なのですが頑張って受けてよかったー。これで晴れて「アンチエイジングに興味があります」と言えます。

 アンチエイジングという言葉は定着した感じがありますが、単に若く見られるということだけを主眼にした似非アンチエイジングがやたら多く、本来の、その年代にベストな健康状態を維持するための予防医学という面があまり省みられていないようです。人間の老化は止められない。しかし老化でも健康なものと不健康なものがあり、健康に老化している人は、結果として若く見られるということですね。

 アンチという言葉が問題で、ヘルシーエイジングという言葉のほうがアメリカでは多くなりつつあるという報告があります。老化、加齢を嫌がるのはおかしい。骨董品といえばなんですが、年月を経て残ってきたものの持つ深み、複雑さ、美しさを拒絶するのはばかげています。

 いかにうまく年代物の、飛び切り高価なワインやバイオリン、美術品に化けるか。そのためには病気になりにくい身体、なっても治癒しやすい身体、精神を作っていかなくてはなりません。それを研究、実践していくのが抗加齢医学ですので楽しいなー。

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 話は違いますが昨日の亀田興毅の試合、あれはないよねー。
 あの若さであんな世界に染まっていては未来は無い。