非実用性の快感

 スポーツカーは衰退していると言う記事を読んだ。ホンダやトヨタが2ドアクーペ(インテグラやセリカ!)の製造を打ち切ると発表した。車は実用性が大事というのが一般的な感覚になりつつあるとのこと。

 僕はFairlady Zのロードスターに乗っている。色はしかもオレンジ。地味でしょ? Zに乗ってますというと、俺も好きだったとか、懐かしいとか、おっさんの過去への回帰趣味と思われるのがうっとおしい。僕はZに何の思い入れもないよ。デザインとかもろもろの条件を考えて決定した。
 
 大変満足している。

 「ロスト・イン・トランスレーション」という素敵な映画に中年男がミドルエイジクライシスだと言うと、ポルシェを買ったのかという台詞が続いた。年をとることを恐れるようになると若さを取り返そうと暴走するのは洋の東西を問わないらしい。

 残念ながら僕は違うよ。Zよりも問題はオープンだ。屋根無しで走ること。これが根本。僕は結構いい年になってからバイクの免許を取ったのだが、走っていると風、空気の温度、匂いにすごく敏感になる。それに喚起される感情が多分精神を若返らせる。

 こんな空気の悪いところでよく走るねと言われることもある。工場排水でにごった西宮の海でもウインドサーフィンは楽しかった。環境が良いに越したことはない。でもそれだからといって乗らないのはもったいない。

 とりあえず真冬以外は出来るだけオープンで走る。走った距離だけ時間が逆行する。実用性?お好きな人はどうぞ。僕はいやだね。

ニッチな男

長年患ってる(もうジジイの発言だね!)足の具合について最近変化の兆しが見られる。明らかに改善のスピードが加速しているのだ。ウッシッシ。なぜアキレス腱の手術をしてかくも長びいているか?これはもともと手術した方の右足股関節はボロボロで、朝寝起きは階段を登るのに手すりにつかまらないと痛くて上がれないというのが日常だったんだな、よく思い出してみると。で、右足にギプスをしていると動かさないので非常に楽になった、やったーと思っているとはしゃぎ過ぎて左の股関節がギクッとなり、両足を使えるようになると両方とも痛くなったという不幸な経過である。長い距離を歩くのがためらわれる(ジジイの発言、再び!)というのはちょっとこたえるが、年をとって足が不自由な人の気持ちはよくわかった。

で、どうするか。痛み止めを飲むというのはイージーな解決策で、実は多くの高齢者は痛み止めを使用しているが腎機能が悪くなったり胃を悪くしたりと副作用も多い。僕もゴルフをするときは1錠飲んでからいくと全然楽で(そこまでしてゴルフしたいか…)気持ちはわかるができればお世話になりたくない。ここは自力でリハビリテーション、努力して動かしていく、骨、関節を支える筋肉を鍛えていくしか道はないのだよ、ベイビィ。

幸いにして僕にはパワーリハビリテーションという手段が近くにあり、痛みに対しては鍼灸、アロマセラピィという味方があったが、もっと日常的にいつでもどこでも鍛えられないかというのが課題であった。で、最近それがほぼ確立してきて、それとともに歩くのが楽になってきたのでそれを皆さんにお伝えしたい。股関節のトラブルを抱えている人は多いので。

まずは1日10回でもいいからスクワットをやりましょう。相撲で股割りという稽古がありますが、すこし両足を外側に開いた状態でゆっくりと腰を落としていく。背中は垂直なままで、前かがみにならないで、曲げた足の膝が足の指より前に出ないように腰を落としていく。膝が90度まで曲がったらそれでOK。今度はゆっくりと戻していきましょう。その時完全に膝を伸ばしきらないで、少し曲げたままで次の屈伸に入る。行程はできるだけスローに、呼吸もゆっくりしたままやりましょう。10回できるようになったら20回くらいまで。それを1日3回位する。できれば膝の曲がる角度をもっと深くしてもいいです。

わざわざ時間をとるのはこれくらいにしておいて、後は暇があればやる。ふと時間が余ったとき、ボーとテレビを見ているのならその時に、ともかく時間を見つけてこまめに稼ぐ。これがコツです。

案外何もしていない時間、というか実は複数のことができるのにやってない時間というのは多い。歯を磨く時、片足で立つ(これは大腿骨頸部を鍛えるのに役立つ。ここは高齢者で骨折の多い場所で、寝たきりになることが多い。この片足立ちで有意に骨折が少なくなることが証明されている)。または爪先立ちになる。車に乗っているとき、停車中にハンドルを両手で左右から力を入れて押す。大胸筋のトレーニング。本を読むとき座らず立つ。またまた片足立ちで。またはいすを使わないで中腰で読む。

こういうのはいくらでも工夫できる。身体だけでなく仕事も数分で片付くのに取り掛かるのが億劫でずるずる出来上がりが遅れているものが多い。そういうのを選んでおいて、あいた中途半端な短い時間にさっと取り掛かる。完成しないかもしれないが、一度とっかかると続けることが簡単になる。案外手間じゃなかったな、と思ってしまう。

隙間のような短い時間を利用して身体を鍛える、仕事をしてしまう。案外すでに実行している人は多いんじゃないかなとも思うが、かなり有用ですよ、このニッチは。使いであり。ニッチな男になりましょうね。

ヒデの引退

 中田英寿選手が先ほど引退を表明した。

 ニュースステーションは橋本龍太郎元総理が亡くなった時よりも大きく、沈痛に報道していた。それってセンス・オブ・プロポーションが間違っているぞ、と思うも気持ちはよく判る。

 ヒデは間違いなく異質の人だ。日本代表でも僕はヒデだけが気になっていた。どんな表情をしているのか、疲れ方はどんな感じなのか・・・

 診療所のホームページのアドレスikeoka.netは、.comもあったのだけどnakata.netがあったから.netにしたのだ。結構気にしてる。

 彼の目には、世界は一般ピープルとは違うように見えているのに違いない。サッカー以外の世界でもキラーパスを出してくれるだろう。どきどきしながらそれを見るのを楽しみにしている。裏切らないでね。

帰る家がない…

さっきから何度もやり直しをしている。同じ文章(じゃないな、どんどん変化し簡潔になっている)書くのこれで3度目だよ!あーあ、と言いながらもう一度。

 今日は外来はお休み。ボブ・ディランの「ノー・ディレクション・ホーム」を見る。マーティン・スコセッシ監督の、ディランのインタビューとライブや私生活のフィルムで構成されたイカしたやつだ。

 ディランは、母親が中学生の僕に突然レコードを買ってきてくれた思い出のミュージシャンです。ビートルズを聴き始めた頃の僕に「ビートルズもコンサートに行く大物らしいから買ってきた」と言う言葉とともに。

 「グレーテストヒッツ」だったけど、1曲目の「雨の日の女」の奇妙な出だしの音と、続くディランのしわがれ声が強烈な印象だった。「???」。でも結構よく聴いていた。

 「ビフォ・ア・フラッド」という、ザ・バンドとのライブが1番好きだったけど、それは音が好きだったわけで、DVDを見てディランは歌詞が総てというのがよくわかった。また聴きなおします。

 ディランは有名になる前は、有名になるためにずるいこともやっちゃう普通の人。有名になってからも、利己的で自分のやりたいことしかやらない芸術家。若い時はかっこよすぎる。表情、目があんまり美しいのにびっくり。現在もいい顔をしている。僕の友人に表情が似ているのにびっくり。彼はだからもてるのかしらね。今度会ったら言ってあげよう。

 感動はしなかったけど、きっと何回か見るDVDだ。ディランのように何かがある。見たい人は貸してあげるよ。
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肥満と報酬

 昨日は仕事で仕上げるものがあり就寝夜中の2時。きついです。木曜は基本的に休養日だが雑事が多く、ボーとした頭のまま移動。

 アキレス腱の手術後いまだに足が痛く歩き方が自然でない。重心の移動とか、キックを入れなきゃなとか、考えながら歩く。鍼灸、パワリハ、自己流のヨガ(らしきもの。DVDを見てする)のおかげで最近著しく良くなっているが、こいつらは結構時間がかかる。簡単で効果のあるのはスクワットというのを最近発見した。数分やるだけでかなり違う。

 しかし!それでも毎日やらないんだなー。なんでだ。何かと理屈をつけて、楽になるのが分かっているのにもかかわらず出来ない。それだけ痛みも軽くなっているということだけど、能動的な行動を続けることはいかに難しいか、人間楽に流れるか。

 肥満の解消できない人は多く、結局意志の(医師の、ではない)問題である。意志を保つにはどうするか?意を決して入った英会話スクールが続かないのは結局必要性の問題だ。向上心は持続せず、どうしても必要な場合のみ意志は持続する。やせる必要性がないと意志が続かない。健康に悪いと判っていても、現実に強い痛みがあるとかじゃないもんね。あっても僕を見よ。必ずやせなひじょーにまずい!!やせなあかんのよ!という状況を人為的に作ることが成功の秘訣。減量指導もそれを考えないかんね。

 行動心理学上、脅しはいかん。一時的にしか効果がない。報酬のほうが、いいことがあるよーという方が続く。それは何か?楽しい必要性・・気のある異性を捕まえるとかいうのが一番有効だな、やっぱり。

 僕のスクワットはどうしたら続くか?僕は走るのが好きだ。誰かホノルルマラソンに招待してくれ!

 

邪気のないものは疲れない

 今日はスケジュールタイトだった。

 午前の診察が終わってから往診、紹介状書きですでに2時。近くの嘱託医をしている社会福祉法人へ障害者の方々の検診にヒーヒー言いながら行く。昼飯は診察中におにぎり3個。クー、泣ける。こいつが週に1,2回は登場する。
 
 神様、なぜ老いさらばえた私がこんなこま鼠の様にちょこまか動かなくてはならないのですか?それはお前が悪い。そんなスケジュールを組むからだ。わかってるけどしゃーないのでございます…うだうだと後悔を繰り返しブルーになってくる。検診後すぐ午後の診察に突入すると考えると少し意識が遠くなった。
 
 情けねーとあきれることなかれ。外来は非常に神経を消耗する。病院勤務の医者が最も嫌がるのが外来で、開業の時は毎日外来がほんとにできるのか誰もが危惧する。

 こちらで選ぶことのできない多くの問題を、限られた時間内で、ある程度満足できる結果を示して、友好的に、トラブルを持ち不安げな患者さんに帰っていただかなくてはならない。

 しかし!検診しているうちにいい気分になってきた。

 知的障害を持つ多くの方には変な邪念がない。ストレイト。外来で、愛されたい欲求不満を肉体的な問題にすりかえて延々と愚痴る患者さんを診ているより、はるかに心安らかに働ける。なんとなく楽しくなってきて予定より早く終了した。邪気のないものは活力を与えてくれる。疲れない。早く帰ってきてピザまで食うことができたのであった。

 グッド!ありがとさんね。

 他人は自分を映す鏡である。彼らが素直で邪気なく生きていると、こちらもそんな気分になる。僕もそうならなくっちゃね。で、外来であんなに屈折した人が多いって事は、ひょっとして僕って・・・

禁煙近縁

タバコを止めたのは二十歳くらいのときだ。大学のクラブが競技スキー部で、ほんのちょっと長距離走が速かったからノルディックという走るスキーをやることになった。はからずも。荻原健二が出てから日本でも知られるようになったがそのころは全くマイナーなスポーツで、大会で部全体として得点を稼ぐためには水物のアルペン(滑降や回転など上から下に滑るやつ。実力があっても転んだりするから得点が読めない)以外にある程度実力どおりの結果が出るノルディックを鍛えるほうがかたいので、しんどいのはいやだーと言うのを無理やりやらされた訳です。箸にも棒にもかからない時期が続いて、これではいかんと一念発起。いい成績が出るようになってくると面白くなってきてもっと練習しよう(基礎は長距離の走りこみ)というわけで、タバコを吸ってると走れないから完全に止めたというわけです。スポーツ選手が喫煙なんて今では話にならないですが、その頃はそれほどシビアじゃなかったです。以後時々飲み会で吸ったりすることもあったのですが、それで終わって再び続くことはなかった。

ニコチンパッチが6月1日から保険適応になったと報道され、ここ2週間程で10人以上の患者さんがニコチンパッチを希望された。「はいはい、まいどありー♪」と言いたいとこなんですがそう簡単には入らないのです。保険で手に入るのは限られた施設、限られた患者さんなのです。知らなかったでしょー?そういう都合の悪いことはあまり報道されず、医療機関に説明させて「何だよー」と言われるわけです。なんか、ほんといつもそうなんですけど。施設基準というのがあってそれを満たしていることを(悪名高い)社会保険事務局に届け出ていなければならない。敷地内が禁煙だとか禁煙治療に係る専任の看護師、準看護師を1名以上配置することとかいろいろあるのですが、呼気1酸化炭素濃度測定器を備えていることというのがあって、こいつが10万円以上するのだ。呼気1酸化炭素濃度を測定すると、その人の喫煙数がほぼ正確に推定できる。

使用できる人もスクリーニングテストでニコチン依存症と診断される必要があり、ブリンクマン指数(1日の喫煙数X喫煙年数)が200以上であることなどハードルがある。「ニコチンパッチ、保険でもらったぜー、すっげー、えらいぜ俺!」と大威張りしたくなりますね。ブリンクマン指数は400以上で肺がんが発生しやすくなり,600以上は高度危険群。1200以上で喉頭がんの危険性が極めて高く、ブリンクマン指数が400になる前に禁煙することが望ましい。今計算した?

「禁煙なんて簡単だ!俺は何度もやっている!」というのはマークトウェインでしたっけ。ニコチンパッチのハードルはここでも。もし失敗したとして、また一からやり直しーというのはあると思うのですが、1回目の開始日より換算して1年後でなければリスタートはできません。

なんていろいろ書きましたが、でも禁煙は実行すべきです。禁煙に手遅れはなく、全く元のようにはならないまでもかなりのところまで取り返しがきく。止めて12時間以内には血中の1酸化炭素濃度が下がり始め、8ヶ月以内には肺は以前よりきれいになり、5年後には動脈の老化度が喫煙しない人とほぼ同等まで回復する可能性がある。1日1箱タバコを吸う人は実年齢より8歳老化しているといわれるが、禁煙により7年は取り返せる。

8週間のニコチンパッチ。保険診療で診察代も入れて8〜9000円位、自費でも20000円位です。タバコ代を考えると、そしてこれからの人生を考えると超お買い得では?ご存知とは思いますが明らかになっているタバコの害を列挙。著しく動脈硬化を促進(心筋梗塞、脳卒中にとてもなりやすい)、肺癌、喉頭癌、腎臓癌、膀胱癌のリスクを増やす。乳癌も可能性あり。慢性閉塞性肺疾患(COPDというやつでお年寄りが息苦しそうにしているのは心臓よりこっちが多い。これからの著しい増加が懸念されている。)免疫力の低下(風邪も引きやすい)等など。みんな自分だけは関係ないと思ってるんでしょう?甘っー。これらから逃れられる確率はワールドカップドイツ大会における日本代表の決勝トーナメント進出の可能性くらいです、知りませんけど。

それでも吸ってるチャレンジャー達よ!安心してね。僕の診療所でも7月から保険がきくようになります(多分)。来たれ!勇気ある自殺志願者たち!呼気1酸化炭素濃度測定器をかまえて待ってるよ!

華麗老人登場

ふっひゃっひゃっー!!わしは華麗老人、白鳥麗蔵じゃ!おお、字面もほんとに華麗じゃのー。石を投げたら抗加齢医学にあたるというくらい最近よく「アンチエイジング」という言葉を見かけるが、どうも意味がわかって使ってるのか疑問じゃ。ひじょーにビジネス、コマーシャルの匂いがするぞ。クンクン。それに騙されて、サプリがぶ飲み、化粧品をぶさいくな顔に塗りたくりおって、シャツの釦を上2つもはずせばOKと勘違いしているちょい悪(頭が)おやじが量産されているという報告が入っているぞ、ふっひゃっひゃ。愚か者!!わしは本当のアンチエイジングとは何かを教えてあげようと思ってここに来たのじゃ。いや実は今度ブログをやるんでな、その宣伝も兼ねて。タイトルは「激辛!カレー(加齢)塾」じゃ。華麗、カレー、加齢、しつこいぞ!ってな。わかっとる。わかってやってるんだからほっといてー。

<加齢、いや華麗老人、白鳥麗蔵はどう見てもジジイだが年齢不詳だ。明るい感じがするのはポップなジーンズを穿いているからか(トゥルーレリジョンのようだ、初めて見た)。仕立てのよさそうな白いシャツ(あけている釦は1つ)、そしてトッズの革のスニーカーを履いている・・・きわめて感じワルッ!中肉中背で腹は出ておらず姿勢のいいのが目立つ。筋トレをしているに違いない。>

アンチエイジングの目指すものは不老不死ではなーい。誤解しとらんか?生物学的に老化していくのは止められない。しかし!元気に老化していくのと、元気無く老化していくのと2種類あるのに気付いとるじゃろ?こいつじゃよ、問題は。みんな年をとることを異常に恐れておる。それは年をとったら全員寝たきりの認知症になるかのような間違った感覚をもっておるからじゃ。そんなわけ無かろー、わしを見ろ!しかしそんな生活をしてたらまあ絶対なるわな、と思わせるやつが結構おるのも確かじゃがな。病的な老化は生活習慣病じゃ。ということは修正可能ということじゃな。アンチエイジングの目指すのは心身のバランスのとれた、元気で楽しい加齢じゃよ。ふひゃ。

<白鳥麗蔵の顔は非常によく動く。表情豊かであるが、微笑んでいるのがベースになっている顔である。シンメトリカルな顔だ。偏ってない。年齢にしては英単語がスムースに出てくるのがイヤミである。帰国子女か、こいつは?>

今日は一つ、取って置きの秘訣を教えてやろう。オープン記念の特別サービスじゃ。それはな、「異文化に飛び込め!」ということじゃ。異文化と聞いたら海外旅行というステロタイプしか思い浮かばないそこの君、アタマ老化しとるよ。異文化というのは慣れ親しんだ自分の環境と違うものということじゃ。いつもと違う道を帰る、違うレストランで飯を食う、違う友人と喋るということじゃ。潜在意識は基本的に変化を嫌う。いつもといっしょだよーでいたいんじゃ。安心第1、これが生存の基本じゃからの。しかし!これでは頭も体もなまる。兵士の顔を見よ。海外で活躍するスポーツ選手の顔を見よ。安閑とはしておれん、それが脳細胞をフル活動させるのじゃ。戦争に行かんでもいい。それを日常に生かすのじゃ。

よく老化予防には異性と接する機会を増やせという。これは性ホルモンの分泌も増えるだろうが、異文化と出会うという側面もあるわな。わしの友人で以前は女性と聞くと目尻を下げていたやつが社長になって多くの女性スタッフを使うようになってから極端に女性嫌いになったやつがおる。そいつによると女性と火星人は同義らしい。未知との遭遇じゃ。よほど苦労をしたんじゃろうな・・・・いい気味じゃ!うっひゃっひゃ!異文化と出会っても喧嘩していてはいかん。今そこにUFOが着陸して宇宙人が下りてきても「ウエルカム!いらっしゃーい!(三枝風に)」ってな具合にいかんとアンチエイジングには生かせんな。おっ、急に腹が・・イタったった・・(と麗蔵がしゃがみこむと、通りかかった妙齢の女性が大丈夫ですかと駆け寄ってきた。)

<演技だ!! 最悪だ!>

回想療法

今日は夏だった。5月になっても朝夕冷え込むことが多く風邪引きも多い。皆さん、気をつけてね。この前村上春樹氏の短編集「象の消滅」を買った。彼は今最もノーベル賞に近い作家だよ。知ってる?チェコの文学賞であるフランツカフカ賞を彼は今年受賞したが、この賞は受賞者が次のノーベル文学賞を受賞することが多いことで知られている。チェコの新聞は「ミスター村上はストックホルム行きの切符を予約していたほうがいいだろう」と書いた。素晴らしい。

「象の消滅」にはアメリカ人の編集者がセレクトした17編の初期の短編が収められているが、その中に「午後の最後の芝生」がある。村上氏の短編の中で僕の最も愛するものの一つだ。そこには夏の晴天の日の心に深く残る出来事が記されているが、行間からは夏の昼前から夕方までの、空気とか日差しとか風の匂いがリアルによみがえる。僕は20台の独身のとき、デートの無い休日はよく半日アパートの屋上に海パン1つで寝っころがって音楽を聴きながら好きな雑誌を読んでいたものだ。そのころの夏の空を思い出す…あぁ、青かったよな・・・。本当に何の悩みも無かったなぁ。まっ、そのつけが今廻っているわけですけど。

音楽も強烈に過去を想起させる力がある。僕の年代だと松任谷由美や山下達郎は間違いなく時代のアイコンだった。たまたま出てきたCDを車で聴いていたりすると、ある歌詞でぐっと胸が詰まる、シーンを思い出す、ギャアーと突然反省、頭を垂れて過去の自分を悔いる、というパターンが出現する。車の中でこんなことをやってるようでは馬鹿な上に危なくて仕方が無いですが、まあそれだけ感情を動かす力が強いということでしょう。

認知症の方の治療のひとつに回想療法というのがある。今までの自分の人生を語り、それを他人に共感して聞いてもらえることで今までの受け入れがたかった自分の人生に納得がいく、様様な悔いが氷のように溶けカタルシスが起こり、自分を受け入れる。欝っぽかったり乱暴だった人が、新しく生きなおすような心の安定が得られることがあるのです。

頭をフレッシュに保つためには、インプットだけではだめでアウトプットが大切ということを前にも書いた。心に感情が渦巻いていてもそれを表現することなく自分でも気がつかないうちに無視して封じ込めてしまう、それが普通の人間の態度かなと思う。だけどそれはまずいんじゃ?漢方に気が滞るという病態があるが、振り返ることの無かった、封印してしまった過去の感情、いいものであれ悪いものであれ、それを誰かに受け止めてもらうことで気が流れ出すという感じがします。思い出を反芻すると、その後の行動は悪いものにはならないと思わない?男女がより親密になったと意識するのは自分の子供時代、学生時代の話を相手にしたときだったりするしね。

過去の好きだった音楽、小説をもう一度味わおう。その気持ちを聞いてくれる人がいなければ、自家発電型回想療法、自分の心と対話して過去の自分を受け入れよう。未来が少し変わると思う。そしてできればいい思い出を、今からでも間に合う、作りましょうね。村上龍氏が「つらい出来事があっても、いい思い出がある奴は耐えられる」と言っているが、そのほうが思い出しても楽しいし。でも酒の力を借りた回想はやめようね。酔うのは一つで十分。酒ではなく思い出に酔いましょう。

時間が無い僕たちへ

時間が無い。ほんとに無いんだなぁ、毎日少しずつ宿題がたまっていってる感じです。ずーと無い。全然無い。どうすんのよっ俺っ!続く!!ちゃうって。同じように感じている人は結構多いようだ。患者さんに説明する。1日30分、週に2回でいいから歩きましょうよ。いやー、時間無いし。そうだねー、でも身体の事だから・・・。彼はたぶんやらないだろう。でも考えよう。多忙は怠惰の隠れ蓑です。本当にそれだけのこともする時間はないのか?テレビ見てない?「仕事が忙しくて…」というのはデートを断る典型的言い訳だぞ。

優先順位というのがある。センスオブバランスというのもある。何に重点を置くか?そのまっとうな判断ができるのが古典的な英国紳士の資質といわれている(らしい)。テストになれば小説が読みたくなる典型的非英国紳士的資質の持ち主である僕は自戒の意味もこめて皆さんに言いたい。「身体の手入れに時間を使いましょう!これの優先順位はかなり上だよ。」

幸福の条件を考える。

まじめに考えると案外少ない。愛する人がいること、誰かに愛されていること。これで十分か。でも次くらいに健康であることというのが来てもおかしくないでしょ。身体はメインテナンスフリーじゃない。何もしないでちゃんと動くのが普通というわけじゃないのだ。長距離の長い旅に自家用車で出かけることを考えよう。それなりに車の整備に気を使うでしょう?人生って最長の旅で大切なビークルである身体をおろそかにしてどうする!

提案です。毎日テレビを見る時間を30分減らして身体のために使いましょう。散歩でもいい。軽い筋肉トレーニング。水泳。ヨガ。太極拳。打ちっぱなし。マッサージ。他のことは何も考えず身体に集中する。他にやらなければいけないことがあるのはわかる。でもそれを犠牲にしても得るものは大きいと思うよ。

 前にも書いたが今僕はパワーリハビリテーションをやっている。毎日30分。1年半ほど前から両側の股関節、右のアキレス腱の痛み(手術後)でまともに歩けない。誰でもできる歩行を意識してやらないと、とってもみっともない格好になるのだ。積極的に訓練しようと目覚めて半年、わかったことは、①鍼灸はほんとに痛みが消える、しかし効果の持続は数日で、継続しないといけない。②ストレッチは大変有効だ。大層に考えずに、日常のわずかの時間に犬が伸びをするように、こまめに行うのが良し。③パワーリハビリテーションの器械の組み合わせは、発表されているデータが示すように歩行機能の改善にもっとも有効であるように思われる。ストレッチ効果が加わるためか驚くべきことに直後から痛みが消える。伸びをしたときのように気持ちがいい。

 ご老人の多くがいろんな場所の痛みを訴える。その主たる原因は使わないからだ。過負荷で無く満遍なく全身を使うこと(それこそがパワーリハビリテーションの本質だが)で必ず痛みは消える。僕は確信している。そしてできればそこまでいかないうちに予防しておこう。他力本願じゃだめ。自分で時間を作って身体のメインテナンスをしよう。結構快感になるって。やらないとわからないよ。