朝9時前に小さな扉を開ける。中に入るといい匂いがする。威圧感のない小さな図書館のような場所、此処は診療所だ。受付の女の子がアロマを焚いている。細くて無口だがきれいな発音で喋る。彼女しかスタッフはいない。
二人で少し掃除をしてコーヒーをつくる。もうすぐ予約の最初の患者さんが来る。特に普通の検査では問題がないが、なんとなく気分がすぐれないので調べて欲しいという希望。大きな画像診断は他の施設に依頼して済んでいる。血中酸化度やホルモン、免疫能などあまり調べないデータを調べ(採血も全部僕がする)、体組成、遺伝歴、生活習慣、食生活などをチェックする。酸化度が高く問診からもストレスが高そうだ。毛髪のミネラル検査では大きな異常なし。
患者さんが来る。少し元気そうだ。ハーブティを出して少し雑談をする。こんなことからヒントが出ることが多い。家庭内の微妙な問題がなんとなく明らかになってくる。彼は数年前からの患者さんであるが生活歴がほとんど網羅されているので、わずかな変化が自分のように判る気がする。1時間かけて二人で納得する対策を立て、また結果を教えてもらうことにする。
こんな感じで1日5,6人の患者さんを診る。みんな口コミで紹介された方で、自分のように知っている人ばかりだ。時間が延びれば時々一緒に昼食を食べる。食材の選び方、栄養価を損なわない調理方法、歯の正しい磨き方、そしてスキン・ケアなども指導する。それは受付の彼女の仕事だ。正しい姿勢と歩き方(疲労度が違う)、睡眠のとり方なども教える。場合によっては専門家を紹介する。ほとんどの人には運動習慣をつけてもらっている。
こんな仕事ぶりだと霞を食べて生きるしかない。でも霞を食べるほうが健康にも精神的にもいいかもしれない。
全部の患者さんが終わってもまだ外は明るい。彼女は夜のバイトへ出かける(何をしているのだろう?)。僕は泳ぎに行くか映画を見に行くか少し迷う。いずれにしろまだまだ時間はたっぷりある。