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黄金色の蝶ネクタイ

 メリークリスマス!皆様このクリスマス周辺のお休みを楽しまれておられることと思います。

 昨日はイブでしたが、一部のスタッフはかなりおしゃれで来たり(どこかに行くわけだ)、「5時までに帰らないと困るんです、今日は!」「これやってからでないとダメだよー」「えーーー!」と一部の上司の意地悪をうけていたりしていた。

 外来では2週間ほど前から全米1位の売り上げとなったマイケル・ブーブレのクリスマスアルバムをかけてムード作りをしていたわけだが、イブの日は全員ユニフォームの上に金色の蝶ネクタイをすることにした。外来チーフ、O嬢のアイデアである。

 もともとスタッフはクリニックのシンボルが刺繍でついた白いシャツ、黒いパンツというのがユニフォームであり、僕もズボンはまちまちだが同じシャツで白衣は着ない。看護師さんも同じ。白衣は子供さんが多いので怖がらせることのないようにという配慮からだ。それも浸透し、全く怖がられることもなく、子供さんは僕が椅子代わりに使っているバランスボールをつつきながら「なんでこんなんに乗ってん?」と言う。

 「院長はクリスマスだから白じゃなく赤のシャツにしたらどうですか?」と言われたのだが、実際やってみると、ま、これは遠慮しとこか、と自己判断をする。蝶ネクタイは女の子たちは可愛いが、僕がつけてもなー気持ち悪いだけじゃないかと思いながらも装着して診察開始。

 しかし案外誰も何も言わないのである。意識しているのはわかる。特に子供連れのお母さんたち。いつの間にか全くそんなことも忘れていつも通り診察をしていたのだが、東京から転居してきたおじさんが部屋を出る前に、「みんなそんなん付けておしゃれですなー。よく似合ってられます」とおっしゃってくださった。なんとなくホッとする。

 この日は休み明けでもあり大変混雑して2時くらいまでかかる。ふぇー。受付も大変だったようで、「お疲れ!」と声をかけに行ったら、蝶ネクタイが少しヨレヨレに見えた。まあ100均だしな。来年はもうちょっと上等がいいかもね。やり過ぎだとレストランになっちゃうけど。

ネクタイより顔の方が可愛いんだけど、実物は見に来てください。

お餅つき

この土曜日は餅つき大会をした。

ここ数年、法人のお祭りとして、小さな講演会や模擬店、鍼灸やリハビリ体験などとともに餅つき大会をしていた。風邪などでクリニックを利用してくださるKさんは、趣味および健康増進として餅つきをされておられるのだが、専用の高価な臼を持ち、その手際はプロ並みの餅つき師として大阪の有名ホテルからも正月はお声のかかる人である。そのKさんが毎年ボランティアとして餅つきをなさってくださっていた。

その法人のお祭りであるが、今年から講演会1本の形式に変えた。医療介護の組織としてはスタッフ教育も考えて、本来の勉強に専念すべしと決めたのだ。地域の皆さんとのつながりを強くすることも大事なことであるのだが、と思いながらも。

すると久しぶりにKさんがわざわざいらっしゃて下さったのである。「先生、今年はいつやりはんの?」と。

いや、ほんとうにすいません、今年は餅つきは無しで、と言いかけようとしたとき、あれほどみなさんが喜んでくれる餅つきを中止するのは罪だぞ、これだけで年末の一つの行事にさせていただくことを考えてはどうじゃ!とどこかで神が叫んだのだ。

で、今年は外来の小児科に来られるボーイズアンドガールズを中心に患者さんのみなさん、今まで通りデイサービスの高齢者の方々も参加していただいて(通りすがりの皆さんも勿論OKで)、年末の餅つき大会を開催させていただくことになった。

とりあえずクリニック、デイサービスを中心に広報をしたのだが、正直どれくらいの人数が集まるのか見当がつかなかった。外だし寒いし土曜日というのもなぁー。担当のプラナリア男爵は憂鬱な位心配していたそうである。しかし、その心配は無用。盛況であった。子供さんも順番に餅をつけたし、つきたてのお餅も大変おいしかった(外来のチーフ、O嬢は杵をたたき折り、そのパワーを見せつけた)。

院内に水墨画が3点ほど飾ってある。高槻のぶ子さんの作品である。昔水墨画を書かれていた時、すごく気に入って購入したのである。その時以来何かご縁がある。少し前お話ししたのだが、ネットで餅つき大会のことをお知りになり、わざわざ来ていただいたのも驚きでした。有難うございます。

予定を全部消化し、Kさん、お手伝いのYさんは颯爽と帰って行かれた。Kさんの愛車は20年前のサーファー仕様シボレーである。かっけー。スタイルも容貌も若々しいが、それはこのような他人に喜んでいただくということを趣味としているせいに違いない。細面の平安時代の貴族のような容貌は伊達ではない。ハートが高貴であることの表れだー。反省!

家族会

 今日日曜は当院の認知症対応型デイサービス「サニーデイサービス」の家族会があった。

 認知症の方を介護しているご家族の心労は大きい。同じような境遇のご家族と知り合い、話し合うだけでも気持ちが軽くなり、また対応を話し合ったりいろいろな知恵を共有することもできる。スタッフはご家族の話を聞くことで、デイサービスにいる時とは違う利用者さんの姿を知ることができる。逆もまた真で、家庭とは違うデイサービスでの様子をご家族も知ることができる(今日もビデオで見てもらった)。認知症の方はプライドもあり、いろいろ取り繕われることも多いのである。

 今までも定期的にやっていたのだが、移転やらいろいろあってしばらく開催していなかった。久々である。13年にわたり通われている97歳のOさんのご家族も来てくださった。

 今はケアプランセンターに属しているが、8年以上にわたりサニーデイに関わり責任者であったI君の司会で始まった。彼は29歳だが本当に落ち着いて立派になった。的を得た言葉。「いいぞ」と僕は思う。彼に限らずスタッフはみんな以前に較べて本当にしっかりしている。安心できるな。

 僕は認知症の理解とケアについて、国際医療福祉大学の竹内教授の理論(大事なのはミズ、メシ、クソ)をベースに少し私見を交えて30分ほどお話しする。そこからご家族からの質問が始まり、だれることなく2時間余りの家族会は終わった。利用者さんのデイでの情景をスライドショウや動画で見ていただいている時は、音楽療法士のNさんがピアノで伴奏をつけてくれ、ちょっとホロっとした。

 こういう機会があるとご家族とスタッフの間にいわゆる顔の見える関係ができてくる。ご家族同士も仲良くなることが多い。こうして認知症の方は多くの絆のネットで守られることになる。ご家族も孤独な介護でなくなるのである。今回来られなかったご家族の方にも是非次回は参加してほしいと思う。そして頑張ってくれたスタッフのみんな、お疲れ様でした。いい日曜日になったよ。

 

12月には

 12月でござる。

 ちーっとも寒くない。自転車で行く往診も、2日前は半袖である。とはいえ師走。クリスマス。季節感は大切にしなくっちゃという訳で院内はツリーも立て、クリスマスソングが控えめに流れ、ロビーでは大男のサンタが今年も門番よろしくみなさんをお出迎えする。

 ときどき覗くBig Picture に、世界各地のクリスマス時期の様子をとらえた素晴らしい特集があった。厳格なキリスト教の伝統がない地域でもコマーシャルなフェスティバルが年々盛んになっていると書いてある。日本だけじゃないのね。

 知り合いにフランスで暮らしている人がいるが、彼女の子供の幼稚園は何のイベントもないと言っていた。いろいろな国、様々な宗教の家庭の子供が集まっているので、季節的な行事は多くは宗教的な要素を持つことが多いため全員参加できないというのがその理由らしい。まっとうな理由である。地続きのヨーロッパを感じる。

 日本のように何でもやっちゃえ!というのは、コマーシャルベースが徹底してちょっと恥ずかしい。最近ハロウィンもなかなか派手らしいが、なんでやねん!と僕でも思う。その割に日本古来の七夕とかお月見とか菖蒲湯とか、そこらへんが寂しいみたいで、やるならこっちでしょう。

 サンタを出しといてそういうのもなんだが、日本の伝統行事をクリニックでちゃんとすることに決めた。ちなみに12月は煤払い、大掃除で、本来12月13日に行うものだそうである。終われば「鯨汁」を食し、商家では胴上げをすることになっていたとwikipediaにある。ほー。クリニックでは時間が取れないため、先月から普段やらないところの掃除をスタッフが率先してやってくれている。出来の悪い院長ではとてもできないことである。サンキュウ!胴上げはしてほしくないかな?多分そうだな。

大演芸会参加

ここ2週間、講義3つとか、ちょっとした会の主催やらあって忙しかった。で一つの山がこの土曜日、静岡の田中消化器科クリニック大忘年会への参加であった。

この忘年会はゲストが多く、総勢100人以上の大がかりなものであるが、クリニックの看護や総務などの部門対抗で寸劇や踊りなど行われ、それがなかなか見ものなのである。昨年はじめて参加させていただいたとき、つい次回は演芸部門に参戦をと、酔っぱらって全員の前で大言壮語したので、それを実行しなくてはあかんわけなのであった。

クリニック、鍼灸院、介護部門のスタッフと一緒に総勢8人、行ってきました。震災への応援の気持ちを込めて「スマイル」(チャップリンの映画の主題歌ね)、「心に太陽」(ラップぽくて難しい)の2曲のメドレーをアカペラでやったのである。バックにはうちのスタッフ全員のスライドショウを流して。練習は診療が終わった午後8時くらいから介護スタッフでプロのミュージシャンでもあるNさんの献身的なご指導をいただいて4回、毎回2時間近く、みんなよー頑張った!

しかし当日、会場でリハーサル(照明をどうするとかマイクの位置とか、なんとそういうのがあるのである)を30分行って、現場は違う、こりゃまずい、と全員一致したのである。そこから1時間近く、部屋で全員その場に即したアイデアをだし真剣に仕上げを行った。すごい熱気、集中力。そして最終的にはいけるんちゃうん、というくらいまで自信が出てきたのである。

でもね、やっぱりなかなか難しかった。すごい衣装、音響、人数で迫る静岡軍団は試合巧者であり、我々は完全アウェイであった(観客の皆さんは大変暖かかったが)。うむ。しかし僕個人的には大変満足であった。なんといっても大演芸会に参加した初めての他クリニックであり、判る人にはその練習量、それを捻出することの難しさがよく判るはずである。実際多くの方からとても好意的なコメントをいただいた。有難うございます。来た甲斐がありました。そしてスタッフのみんな、本当に有難うね。

翌日、スタッフの男爵と僕はゴルフコンペに参加し、1日大変いいお天気で、ゴルフ場のどこからも最高の富士山を楽しむことができたのである。明日からまた頑張ろうっと。しかし富士山は素晴らしかった。毎日こんな姿を見ていると悪いことはできないのではないかなー。


プチ変装

 眼鏡がない。いつもと同じところに置いたんだけどなぁー、無い。朝、時間もないし、もうかけなくなった古い奴を出してきて鏡の前で確認。うん?なんだか誠実そうな感じがするぞ・・・(本当にそう思ったのである。中身がそうだとは言ってない)。デザインがダサいとおしゃれを自認するおばさんに言われたこともあったから何となくかけなくなったのだが、悪くないじゃないか。むしろ仕事にはこの方がいいかも。

 お昼にスタッフにそう感じたという話をすると、「うーん(誠実には疑問符だな!)、優しそうな感じがしますね」ということで、仕事中はこいつでいくことにした。「じゃあ仮面メガネですね」「それは真実を隠しているということかな?君の言いたいのは?」

 接客業の方なんかは、そして女性は状況により眼鏡をかけ替えるというのは当たり前のことかもしれないな。勝負メガネとか。でも僕はしたことがない。遊びと仕事で眼鏡を変える友人はいたな。しかしそんな単純じゃなくもっと細かいシチュエーションによってかけ替えるのは面白いぞ。

 以前眼鏡を選んでいた時、かけるとすっごく薄情に見える眼鏡があった。すごいのである。ビジネスのみ、何の温かみもないという印象を与えるこのメガネは面白くて思わず購入しようとしたのだが周りの反対にあい止めた。こいつはタフな交渉の場(いろいろあるじゃないか、公私ともに)にかけていく。冗談も言わない。極力言葉少なく。髪型なんかもポマードでこってりなんていうのがいいかな。

 かけるともっさりと世間知らずの田舎者に見える奴は持ってるぞ。こいつはちょっとした講演なんかの時にいいかも。ダサい服。髪も寝癖のまま。発音不明瞭。意味なく突然笑う。マッド・サイエンティスト。

 変装である。プチ整形ならぬプチ変装。ある美容整形外科医が、整形は形を変えるのではなくその人の気持ち、自信を変えるのだと言っていた。だから必ずしも手術が必要とは限らないと。眼鏡は性格も変えそうだ。バラエティも多いしいいぞ。

 とりあえず種類がいるな。似合う眼鏡をたくさん持つのじゃなく、印象を変えるのが目的。最近は安く手に入るし。まずは薄情タイプ。こいつを何とかしたい。

これはアカンな。

守れ!絶滅危惧種

 クリニックの近くにイカ焼きの名店がある。「シスター」という。おじいさんがやっている。名前の由来は知らない。

 たこ焼きとかと違って、いか焼きのスタンダードといえるものが皆さんの頭に思い浮かぶか想像もつかないが、僕にとっていか焼きのスタンダードはシスターなのである。うまい、モチモチ、でかい!他のイカ焼きを食っても(まあそういう機会はあまりないですが)ほとんどお話にならないのであった。店の間口は小さく、場所を説明してもほとんどの人は行きつけない(写真参照)。はいれば中も正直、工場のようである。が、しかしそこもまたよし。僕の中のB級の王者であった。

 そこの息子さん(時々手伝っているのを見かけた。40代)が診断書を書いてほしいと来られた。

 「就職するのよ」「えっ、店つがないの?」「ありゃ親父でなきゃ無理よ。名人芸。とても僕にはできないから。もう親父も80だからねー。今年中かなー、店閉めるよ」

 大ショックである。もうあのイカ焼きは一生食べれないのか。いっそお昼休みに僕が習いに行ってなんとか技術の習得は無理か?うちのスタッフを行かすか?うーむ。

 その話を友人にする。すると彼女もお願いしていたクリーニング屋さんが閉店するので出すところがなくなって困っていると同じようなことを言う。

 「ご主人が名人芸なのよ。ドライにしなくちゃダメなところでも水洗いで本当に丁寧にするの。シミなんかも本当にきれいに取るし。この芸は伝えなくっちゃとうちの主人も言ったんだけどめんどくさいって」。そのうちご主人は脳梗塞をおこされて仕事ができなくなってしまったのだ。

 「こういう日常生活の名人芸ってどんどんなくなるよな」「ほんとうにそうよ」「これってさ、天然記念物みたいにその地区で保護しなくちゃいけないんじゃない?何とか芸を伝えるため補助する」「へんな町興しよりいいわね」「そうだよー、絶滅危惧種を守れ!芸を継続させよ!これは地域にとって必要だ!」

どうよ!

 

あっと驚くコーチングセミナー

今日は日曜日だったが当院で念願のコーチングのセミナーを開催した。

講師は木村純子コーチである。カリスマです。午前10時から3時間、うちのスタッフを対象にNLPの講義、引き続いて午後1時から3時間、外部からの聴講者含めて42人を対象にコーチングの講義。ともにワークショップ形式で大変実のあるものであった。

木村コーチは数年前から日常的に着物を着用されておられるそうで、講義時もチャーミングな着物姿であった。イメージを思い浮かべることがいかに大切かという話をされた時、好きだという餃子を想像してくださいと彼女は、形、色、味、匂い、調理の音などをゆっくり想像させるように描写されたのだが、その言葉のあまりのイメージ喚起力のすごさに驚いた。プロだなー。

また基本的な相手の受容、賞賛を講義においても実践されておられるのにも感銘した。本当に気持ちがいい講義なのである。6時間の長丁場にも笑みを絶やさずどんな質問にも本当に丁重に優しく答えられる。後の打ち上げ会の振る舞いでも思ったが本当にカッコよすぎる人格者である。

冷静になるにはdissociateする(幽体離脱のように上から自分を眺める)、意識は脳、無意識は身体がつかさどっており、自分に注意が向きすぎているときは身体能力がうまく働きにくい(ゴルフだとよくわかる)、相手のリソースを引き出すために意見が言いたくなっても5秒待つ!受容する。集団でディスカッションする時、意見を述べにくい方にも話していただくために必ず1分間全員に話してもらう、それを守って全員にマイクを回す。など、個人的にちょっと勉強したNLP、コーチングなどのバラバラな知識、手法が、単に知っているというのではなくドン!と納得して腑に落ちたのである。これは全然違う。

聴講に来ていただいた方々からも、「目から鱗でした」「今まで考えたことなかった。明日からすぐ実行してみます」とか嬉しい言葉をいただいた。そして何より嬉しかったのは、うちの外来、介護のスタッフが本当に興味を持ってくれたことであった。打ち上げでも木村コーチを囲んで話が弾んだ。

ひとえに木村さんの人徳であり実力です。どうも有り難うございました。僕も男性版木村になりたいと思います(本当に)。またのお話を楽しみにしております。

100歳の誕生日

 この10月4日は日野原重明先生の100歳の誕生日であった。

 皆さんもご存じのように日野原先生は聖路加国際病院の理事長として現役でお仕事をされており、それ以上に種々のお仕事、講演等大変お忙しく過ごされている。今度抗加齢医学会のゲストスピーカーとして来ていただくのだが、会長がアポイントのお約束をした時、4年先までいっぱいとのことだったそうである(しかし来年の総会には来ていただくことになった)。

 「食事では、30歳のときの体重を維持するために1日1,300キロカロリーまでと決めています。朝食はアップルジュースにティースプーン4杯分のオリーブ油を入れたもの。昼食はクッキー3枚と牛乳。夕食では週2回、脂身のないステーキを食べ、大きな魚は週に5回とっています。それからお皿いっぱいのサラダも。朝食をきちんと食べた方がいいという人もいますが、私の場合は夕食に比重を置いたいまのペースが体に合っているんです。」
(長寿の原則であるカロリーリストリクションを以前からされているわけである)。

 日々の睡眠時間は4時間半、週に1度は徹夜をするという生活だったが、96歳にして徹夜をやめ、睡眠を5時間に増やした(睡眠時間の必要度は個人差が大きい。うまく午睡を取っておられる気がする)。病院ではエレベーターを使わず階段を上り下りする(ニッチな運動は必須である)。

 「それから、新しいことにどんどん挑戦することです。人間には22,000の遺伝子があります。それを目覚ませるには新しいことを始めるのが一番いい。」

 とまあ抗加齢医学の歩く教科書である。朝日新聞の誕生日記念インタビューを読んでいたのだが、驚いたことが一つ。

 「どうすればチャーミングな笑顔がつくれるのか、鏡を見て練習しているの。笑いすぎると目がなくなっちゃうから気をつけないと。それから週1回、エステに通っています。ちゃんと顔のマッサージをしているからシワが全然ないでしょう。おしゃれ心も大切ですよ。今日は紫のネクタイに、ポケチーフをコーディネートしました。女性からも好評ですよ。」

 うーむ。勿論露出の機会が多いからであろうが、100歳にしてこの感覚はやはり只者ではない。当たり前だが自分を見切ってない、こんなもんと思わず、100歳であろうが150歳であろうがちゃんと外見に気を配る男性。

 おみそれいたしました。少しでも近づきたいと思います。

はっはー!

 

満足すんなよ!

 スティーブ・ジョブス氏が亡くなった。朝外来に降りたとき、チーフのジェットO嬢が顔を見るなり教えてくれた。

 彼とは同じ年である。ビル・ゲイツ氏もそう。ともに及びもつかないが、圧倒的にスティーブ・ジョブスが好きであった。

 この前、ある会で、そこそこ成功し、適当におしゃれで、ちょっと傲慢な、僕と同年輩くらいなオジさんたちの集団を見た。その時、まさに稲妻のように僕の心にジョブスの、あの有名な科白がひらめいたのである。

 Stay hungry, stay foolish

 「それくらいで自己満足してんじゃねぇよ!」

 スタンフォードの学生たちに向けられた言葉は、実は僕らくらいの世代が噛み締めるべき言葉である。

 心よりご冥福を。