「痴呆老人は何を見ているか」を読む。東大教授であった大井玄先生の2008年刊行の新書なんですが、1年で12刷となっている。
確かにいい本である。学術的にすごい知見を示すという本ではなくて、認知症(この語句に大井先生は異議をとなえられていて、あえて使っておられません)のご老人の心の中をいろいろな観点から想像されていて説得力がある。何よりも感銘したのはその優しさである。
サイエンティストの眼でありながら、宗教者のハートである。所々にアメリカのブッシュ前大統領に対する批判が止むに止まれず出てくる、っていうのもあって、熱き心の人なんだなと思う。
単に認知症にとどまらず脳のメカニズムも考えさせてくれる(今平行して読んでいる池谷裕二先生の「単純な脳、複雑な私」にも重なるところがある。これもすごく、というか革命的に素晴らしい本だと思います)など、読んで損しません、関係者は是非ご一読を。
その中で印象に残った言葉に「世界を開くパスワード」というのがあります。コミュニケーションのとれないご老人でも、その方が大切にしてきた思い出に関係する一言、それが見つかれば一気に関係は改善する。その方の拠り所、それは誇らしい経歴かもしれないし、実は大好きだった俳句かもしれない、それを口にすることで今まで不機嫌で暴れていた方の動きがぴたりと止まる。介護スタッフなら経験のあることだと思います。
これは認知症のご老人に限らない、すべての人とのコミュニケーションにあてはまることだと思う。
あの人の悪口を言ってないで「世界を開くパスワード」を捜せ!
開け、ゴマ!
コストパフォーマンス高し