カテゴリー別アーカイブ: 音楽

夕涼み

 午後の診察は淡々と7時過ぎに終わり、窓から見える夕方の空は切ないくらい美しい。ピンクの雲と青い空が宗教画のようだ。清少納言の枕草子は「夏は夜」としぶくきめてるが、清光院長の「外来ウォッチ!」では「夏は夕暮れ」となる。

 この時間、そよ風に吹かれていると思い出す曲はユーミンの「夕涼み」である。二人で洗車をしながらホースからの水を真上に吹き上げて虹を作る・・・おお、夢のような時間、楽しい日々である。確かそういう時もあったような無かったような。

 ユーミンのベストアルバムにはぜーーったい入らないが、切なくなるくらい好きな曲がある。僕の場合は「夕涼み」「丘の上の光」「私を忘れる頃」(各々が収録されているアルバム名をあげよ!)がベストスリーだな。どの曲も僕を美しい清らかな酸素があふれている時間、場所に連れて行ってくれるのである。あーあ。

 「丘の上の光」は初夏の夕焼け雲が流れている草原(八ヶ岳かな)に、「私を忘れる頃」は真冬の凍えるような、夜景が小さく震えているような山頂(どこだ?イメージはLAの天文台だな)にテレポートさせてくれる。別に何か出来事があってそのBGMだったというのではなく、歌詞からイメージが強く喚起されるのである。大したものだよ。

 つらい状態にいても楽しい思い出の記憶があれば耐えられる、と言ったのは村上龍氏だが、思い出を持ったような気にさせてくれる曲を沢山持っていることもきっとパワーになるはずだ。そのためにも沢山音楽を聴こーぜ。

4195N74JSJL._AA240_
「夕涼み」はこれです。

 

ゴールド・ラッシュ

 うひゃー、ここ4,5日はメチャクチャ忙しかった。相変わらずコマ鼠のような生活である。クルクル。

 で、パワーを出すため車で最近聴いているのがゴールド・ラッシュである。ゴールド・ラッシュ?ニール・ヤングのアフター・ザ・ゴールド・ラッシュですか?ロックファンなら普通そう来るが、違うんだな。えーちゃんである。矢沢永吉のゴールド・ラッシュ。

 矢沢永吉が好きなんていうのはなんとなく恥ずかしい・・・気がする。しかし昔の曲は結構いいのだ。何かの拍子に1枚レコードを聴いてええ曲が多いじゃんと10年前くらいに思った。それでベストアルバムを1枚コピーして持っていたのだが、最近聴いて特にゴールド・ラッシュが印象に残ったのだ。

 「あきらめた顔のまま老いぼれてしまうのかい!汗も流さずに」という歌詞にぐっと来る。あきらめた顔、っていうのがせまる。彼のコマーシャルの顔はガッツのあるいい顔をしている。何かを乗り越えた人間は共通のなにか静謐さをたたえているが、その静謐さはあきらめからは決して生まれない。過剰から生まれるのだ。

 まだまだ選別できるほど大人ではない。過剰を目指さないとゴールド・ラッシュは来ない。過剰な仕事、過剰な遊び・・・時間無いよなぁ。

goldrush.jpg
過剰な感じ

The Zimmersを知ってるかい?

 うーむ。The Zimmersって知ってる?

 平均年齢78歳の40人編成のロックグループ「The Zimmers(歩行器の意)」であります。

 ザ・フーの「マイジェネレーション」をカバー、「老いる前に死にたい」というフレーズをシャウトしながら、ギターを叩き壊しドラムセットを蹴倒すパフォーマンス!リードボーカルは90歳、最高齢は101歳。イギリスシングルチャートでトップ30入りした。

 何で40人だ?これは自主的なバンドではなく、イギリスのドキュメンタリー作家Tim Samuelsによる、社会から孤立させられた人たちでまとまって何かをやり遂げるというシリーズのひとつらしい。集められたメンバーの中には、生活に疲れた年金受給者や、社会的に孤立していることに苦しんでいる人たちもいる。

 おお、ボーカルうめー、とか思いながらミュージッククリップを見ていたのだが、雑誌なんかで書かれていたロック・スピリットをもった老人達という感じはしない。微笑ましいが、やはり人為的に作られたものという感じがしてしまう。ロックの持つ止むに止まれぬ衝動はなく(まあ、当たり前かなぁ)、ロックを歌うこととロック・スピリットのあることは違うなぁと思いました。でもこのプロジェクトの趣旨には大賛成で、参加している方には文句なく大拍手!

 見たい?
 http://www.youtube.com/watch?v=zqfFrCUrEbY でどうぞ!

 植木等氏の葬儀で「スーダラ節」を歌った内田裕也氏には文句なくロック・スピリットを感じました。今まで嫌いだったけどあれはカッコよかったよ。

zimmers.jpg
「アビーロード」のパクリね。イギリスでしょー。

フランシス・アルバート・シナトラ

 おお、やっとここまでたどり着いたぜ。先週は夜の打ち合わせとかの仕事が軒並み並んでいて、眠くて書けなかったのでございます。ひーひー。で今日日曜は久しぶりに気分転換だー、やるぞ!ゴルフ!だったのですが・・・・結構悲惨でした。

 六甲国際東コースというのは結構難しく、今週から女子プロの公式試合も行われる(前の組は予選から出るプロが練習ラウンドをしていました。福嶋晃子に似ているなーと思ったら妹さんでした)くらいですが前はハーフで40台も出ていたのにな。今日は出るわ出るわOB、池ポチャ、ついにはシャンクという具合で精根尽きた。ゴルフが下手だと何か自分の全存在が否定されたような悲しい気分になってきます。まあたかが遊びに何言ってるの、という感じですが。

 しかし気分が悪い。こんな夜は何を聴くか?あるんだな、これが。「フランシス・アルバート・シナトラ・アンド・アントニオ・カルロス・ジョビン」というボサノバ・アルバムです。フランク・シナトラですが、このアルバムに限ってフルネームです。意味があるのかは判りません。シナトラは他にいっぱい有名なアルバムがあり、これはすごくマイナーですが、すごく素敵です。ジョビンは2曲ほどディエットしていますがあまり目立ちません。ポイントはアレンジャーがクラウス・オガーマンということで、僕は彼のストリングスアレンジ(弦楽ですね)を溺愛しています。何か彼の音はぼくをどこか遠くへ、空気の美しい、草の匂いのする、涼しい夢のあるところへ連れて行ってくれるのです。

 シナトラはいつも同じ。何を歌っても。でも彼の声はなごみます。僕は女性の声より渋い男性の声のほうに慰められ癒されるのです。ひょっとしてちょっとまずい性癖があるのでしょうか?ジャズボーカルは絶対男のほうがよくて、なにか人生つらくても何とかやっていけるよ、と言われているような気分になるのです、誰であろうと。やっぱりおかしいか。まあいいや。

21p2YdbAOKL._AA130_
ジャケはパッとしないな、まあいいや。

 

ニッキーズ・ドリーム

 今日もまたまたいい天気だー。とーぜんオープンで走ってます。開けてる時に聴く音楽というのは結構選択が難しい。ドンドコリズムのあるやつは暴走族っぽいし、ヒット曲ってのもねー。隣に車が並ぶと聴こえるのもいやだし、結局ジャズを小さくかけるか、音なし(外の空気を感じるのはこの方がいい)が多いです。

 今日はお昼にちょっと出たのですが、無音というよりもなにか意識しない程度に何か音がなっていて欲しいという気分であった。で何の気なしにかけたのがこれ!せいかーい。

 ギャビー・アンド・ロペスの「ニッキーズ・ドリーム」です。なんですか、それ?ハワイアンのディオみたいですが(ギャビー・バヒヌイはウクレレのカリスマおじいさんで、ジェリー・ロペスはサーファーだな)れっきとした日本人です。NATURAL CALAMITYの森俊二とTICAの石井マサユキというギタリスト2人の即興的バンド。ご存じない?全くご存じない?こりゃまった失礼しました(植木等調で)。でもこの2つのバンドは僕はちょっと気に入っていて静かな夜に1人で聴くことがあります。そういう音です。マイナーですが存在感のある、自分をしっかり持った音です。

 で、この2人のバンドということですごく期待して聴いたのですが、正直はぐらかされた。シンプルすぎ、ノン・クライマックス、小川のせせらぎがずーと聴こえているような、清涼ではあるがもう少しメロディックでもなー、という感じだったのです。

 でもね、初夏のそよ風の中を移動して聴くと・・絶妙・・でした。ブルータスの音楽特集で何人かの方が愛聴盤としてこのCDをあげていたのですが、これは察するにストーンしている時(意味はお調べください)に聴くとすごく気持ちがいいのですね。オープンで渋滞のない緑の多い道をゆったりとした速度で移動していると似たような気分になります。悦楽の気分を増幅してくれるのですね。

 しかし普通の気分で聴くと単調なだけです。興味ある人は聴かせてあげるから言って頂戴。買うと損した気分になるかもしれぬよ。

.jpg
それ風のジャケ

カフェ・ボヘミア

 好みというのはかなり幼い頃に形成されるものであり、変わらないものである。音楽や絵など、昔好きであったものは生涯を通じてやはり好きだし、ピンと来なかったものはやはり成長しても来ないことが多い。もちろん例外はあるが。

 僕の音楽耽溺歴は中学時代のビートルズ(小学生の時に来日し、ピークからは遅れている)から始まるが、昔愛聴していた、または今聞くといいんじゃないかと思う数々のアルバムをCDで購入し、やはり好みは変わらないというのを再認識している。

 佐野元春の「カフェ・ボヘミア」がremixやDVDをつけてボックスセットで発売された。発売20周年記念だそうである。オリジナルのアルバムはよく聴いた、本当に。何かが圧倒的に僕の何かと重なっていたのである。ラブソングは1曲しかない。なにかもっと広い世界のことを歌っている。2曲ほどはまるで村上春樹だと思った。しんとした静かな情熱があるのです。本当にオリジナルな世界を歌っているなという気がした。でも佐野元春においてこのアルバムは単に1枚のアルバムに過ぎないのだろうと思っていました。こんなセットが発売されたところをみると、そうじゃなくて彼にとってもリスナーにとっても特別なものなのかな。

 迷ったけど買いました。で、やっぱりremixもDVDも、圧倒的に好みなのです。何なんだろう。佐野元春は僕と同年輩です。このアルバムがきっかけでコンサートにも2度ほど行った。音楽はとても素晴らしいと思います。でもMCはくさい。よくこんなしらじらし一せりふを吐けるぜと正直困惑する。男子高校生の信望者が多いのはよくわかる。迷える若者たち、頑張ろうぜ!という世界なんだもん。それを照れずにかっこつけてやってて、まるで松岡修三です。ちょっと雰囲気を読め!という感じです。

 でもなー、音楽はフィットするのだ。作品とそれを作る人間の人格とは別物だというセオリーがありますが、なんか抵抗があるがそうなのか。

 ボックスセットには通し番号がつけてありました。僕は237番。多いのか少ないのかよくわからん。でもこれは僕のささやかな宝物であります。ジジイになってもいいと思うだろうな、多分。三つ子の魂、百まで。

B000I6BLIQ.01._AA240_SCLZZZZZZZ_V34873558_
あんまりかっこつけるのもかえって・・・

すげー

 どんな音楽をよく聴きますかと尋ねたら(まあ、あんまり訊かないけどさ)、大概「何でも」とか「流行ってる曲」とか当たり障りのない答えが返ってくる。そんな時、車によく乗る人だったら「今、車で何聴いていますか」と訊くとポイントが絞れる。

 僕の答えはマイルス・デイビスの「フォア・アンド・モア」だ。といっても賭けてもいいが99.9%の人が無反応だろう。マイルスの中でもあんまりメジャーな作品じゃない。わかるやつは相当な変態ジャズファンだ。これは村上春樹氏が好きなマイルスのアルバムとして語っていたのを覚えていて(勘違いかもしれない)借りてきた。

 すごいぞ、こいつは!!!あるコンサートのライブアルバムだが、バラード系は「マイファニーバレンタイン」というアルバムに集められていて、こいつは人気がありメジャーだ。「フォア・アンド・モア」はぶっ飛ばしている曲ばかり集められている。飛ばしすぎ。

 ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウイリアムスという正真正銘、気の狂った天才ばかり集まった奇跡のようなリズムセクションと大天才マイルスに挟まれて、普通人ジョージ・コールマンがテナーサックスで大健闘している。えらい!涙が出るなー。おっちゃん、そこまでやらんでええで・・・

 みんなすごいですが、トニー・ウイリアムスのドラミングはすごいを通り越してます。腹に来ます。こういうのは初めての経験でした。

 何十年も前の演奏ですが、全く古びてない。メッチャ新鮮です。フレッシュです。ジャズが好きでよかったなーと本当に思いました。朝聴くと明らかにテンションが上がるのがわかります。今月いっぱい、ノロウイルスと対抗するにはこいつです。

B000HBK1WO.01._AA240_SCLZZZZZZZ_V36965850_
ユウレカ!

 

片手で持つハンドル、片手に肩を抱いて・・・

 出かける用事があってCDをごそごそ探していると松任谷由美のベストアルバムが出てきました。おぅおぅ、コピーしたなー。最近聴いていなかったので車のBGMはこれに決定。1曲目は「優しさにつつまれて」です。出だしから一挙に20代にフラッシュバックしていきます。僕にとって松任谷由美のタイムマシン効果は強力です。

 何曲か目に「中央フリーウェイ」がかかりました。人気のあった曲でブレイクするきっかけともなった曲ですが、その歌詞「片手で持つハンドル、片手に肩を抱いて・・・」というのを聴いた時、がーん・・・ときました。

 こんなん・・・今でけへんなー・・・・

 すげー年を感じました。状況というより感情的な意味で出来ないですね。二人になると思わず肩を抱いてしまう、ニコニコしてしまう、これって強烈な若さを感じます。おっちゃんがやったら気持ち悪いだけか。

 同世代が集まって宴会があったのですが、野垂れ死に願望を述べるもの、商売としての新興宗教の設立を呼びかけるもの(勿論冗談ですが)、まあろくでもないです。

 車で肩を抱ける50代をめざせ!「片手で持つハンドル、片手に肩を抱いて、実行委員会、50代支部」設立を決意。まぁ、黙殺必至ですが。でもやってやる!多分、でも、少しは、ちょとだけ・・・

¢¢¢¢¢¢¢¢¢¢.jpg
これとは違う

 
 

Vertigo 眩暈

 一日中雨である。山のほうに住んでいるせいで犬の散歩に出たら雨風で遭難しそうであった。こんな日は外に出ないで内に篭ることにし、小人閑居して不善をなすことにする。べつに忙しくても不善はしてるけどね。

 しかしそれにも飽きTUTAYAでCDを5枚ほど借りてくる。レオン・ラッセル、T・Rexとか古いねー。しかしな、比較的新しいのもあるぞ。U2だ。前から聴きたかった「How to Dismantle an Atomic Bomb」である。1曲目のVertigoは前から相当好きだったのだ。実はU2をアルバム丸ごと聴くのは初めてなのだがボノの声は予想よりカン高い。しかしセクシーで「なるほどね」と思う。

 U2はなんとなく政治色強く、くそまじめという印象があったのだが変わってきているらしい。素晴らしいのは20年以上メンバーチェンジをしていないことである。偉大なロックバンドは変わらない。ストーンズを見よ。

 2つとも大人のロックバンドである。40台から60!台のおっさんがこんなにカッコよくグループで音楽を出来るなんて本当に素晴らしい。懐古趣味で再編したりしているのではないのだ(日本には多いけどね。アメリカも多い。やはりロックはイギリスか)。現役バリバリ、生涯ロックミュージシャンである。歩くアンチ・エージングである。

 彼らに限らずいい年まで現役のロックミュージシャンは身体にすごく気をつかっている。腹も出ていない。2時間以上のロックコンサートなんて体力、精神力が無ければできない。彼らは不良の格好をしたスマートな優等生の男たちなのである。

B0006399FS.09._AA240_SCLZZZZZZZ_
  
   いいです。

イントロダクション!

 Break throughというのがある。今までと次元の違う体験をすることであるがこれはいろんな領域であるな。アルコールにおける僕のブレイクスルーは研修医で夜遅くなった時、医局で同僚と飲んだヘネシーであった。プラスティックの湯飲み茶碗で、水に割って飲んだのだが(これおいしいねんで、と彼がジャブジャブと豪勢についでくれた。僕は大体ブランディなんか飲んだことがなかったのだ)、本当に水のように飲めた。こんな酒があるのかーと思ってから二十年以上毎晩飲むことになる。

 音楽におけるブレイクスルーのひとつがシカゴ(正確にはそれにトランシット・オーソリティーがつく)の「イントロダクション」、最初のブラスのユニゾンである。高校の時通っていたレコード屋の兄ちゃんがこれええんちゃう、といって聴かせてくれた。一発でいかれてしまい、以後ブラスロックを聴きあさることになる。

 このデビューしたてのシカゴはバリバリと音がしそうなくらい左翼学生活動家の雰囲気を漂わせていた。デモのシュプレッヒコールにかぶせてイントロが始まる「流血の日」が典型だが、内ジャケットのメンバーの写真も初々しい学生そのものだ。ともかく気迫と情熱にあふれている。最近のシカゴ(というかもうずいぶん前からだが)を聴くと、たくさんの水が橋の下を流れましたね・・・と思わずつぶやきたくなるが、時の流れには逆らえない・・・のか?逆らえよ!

 久しぶりにシカゴのデビューアルバムを聴いて感動したので書いてしまった。初心忘るるべからず。安定なんかぶっ潰せ!

kiyokiyo.jpg
中古で探してね