月別アーカイブ: 2007年4月

子供の肥満

 今日は休みでだ、だ、だーい絶好のゴルフ日和にもかかわらず校医をしている中学校の検診に行ってきました(泣)。1年生と3年生、450名(泣)。ほほ1日中(泣)。以前は聴診器をかけすぎて途中で耳が痛くなってきたのですが、この頃は面の皮とともに耳も態度がでっかくなり全然痛くないです。

 しかしやっぱり中学生を見ているのは楽しいです。1年生と3年生は成長著しい時期だけあって子供とおっちゃんぐらいの差があったりする。そういえば僕も1年生の時は3年生なんてめっちゃ大人に見えたなー。1年生はちょけぶりがかわいくて思わず笑みがこぼれる。

 しかし気になることがひとつ。ちょっと肥満の子が多いのです。特に男の子に。関取体格の子がクラスに3,4人。一時少なかったのですが今年は多いと保健の先生も言ってました。

 子供の肥満はそのまま半分以上が大人における肥満につながり、糖尿病の発生が明らかに多いと報告されています。関節のトラブルは勿論、喘息も肥満細胞の関与が言われていて発生率が増加する。いいことはひとつもありません。最近やっと校内は全面禁煙になったそうですが、禁肥満もしたほうがいいんじゃない、なんて言っていたのですが・・・

 あるお子さんは母1人の家庭で、しかもそのお母さんが全盲であるため勝手に食事を買っている、勿論好きなだけ食べている。注意しても難しいのだという話を聞きました。

 禁煙は自分の決心だけですが、肥満は家庭が関わってくるので克服はもっと難しいのかもしれません。でも長い眼で見ると寿命に関わってくるシリアスな問題で、真剣に取り組む必要があるなと感じます。

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腹へるもんな…

 

おれもふろっと。

 高齢者医学の勉強をしていたら「高齢になると若い頃と逆に精神が身体を引っ張るようになる」とありました。ふーん。そうかな・・・若い頃も精神が引っ張るのではないかい?

 気持ちが身体の状況を変化させるのは誰でも知っています。「病は気から」は大変な観察力の名言ですが、笑いの治癒力を生かして癌の治療に応用したり、白血球が癌をやっつけるイメージをもつ訓練をすることで実際に治癒力が上がるなど、気持ちが身体に及ぼす影響力を研究する精神免疫学という領域も盛んになってきました。

 憂鬱な気持ち、怒り、不満足な気持ちで毎日を過ごしていたら病気になりやすい。カテコラミンが出るから組織が循環不全になるなど色々理由は考えられますが、実際気持ちが晴れないというのは身体的に毒です。いい気分だと身体が軽い。ベータエンドルフィンが出ていると免疫力が上がるとかこれも説明できますが、ともかくご機嫌だと痛みでさえ軽くなります。

 「毎日上機嫌でいよう」これはもう大人の常識だと思いますが、実際はなかなか難しいのねー。机上のプランと実際の接近戦は違う。なんかいい方法はないか?

 そんな時ある本を読んでいていい台詞を見つけました。その本も常にご機嫌な人を見ていてそのヒントを集めてみたような本ですが、この台詞はいい。しびれました。それは・・・

 ぼくはひとりでいる時も誰かと話しているときも、
 少しだけ腰を振っている。
 すると、なんだか深刻になれないんだ。

 
おれもふろっと。

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腰ミノはつけん…多分

抵抗と移動のドライブ

 人間はもともと変化を好まなく出来ている。それが生物学的に安全であるからである。今そこそこいけてるのに何で結果のわからない、危険な道を選ばなくてはならない?いいじゃん、今のままで。違う道を選ぶにしてもあんまりレベルの違うことはいやだ。

 それでいいのか?それって進歩を目指さないということではないのか。現状維持が最重要項目か?なんていろいろフラストレーションのたまることの多い今日この頃ではありますが(自分自身に対してでもある)、新聞の書評でむっ、と思わせる奴に出会った。マサオ・ミヨシという学者のインタビュー集である。

 彼は戦前、戦中の英語教育を受け戦後まもなくアメリカにわたり、カリフォルニア大学バークレー校で英文学の正教授となった。これはすごいことである。敵であった国の人間を教授にするアメリカも度量があるが、彼の能力の高さがしのばれる。それよりもすごいのは彼の特徴としての「移動」である。場所もそうだが自分自身の仕事の領域をどんどん変えてしまう。市民運動に手を染め、英文学を放棄し、また介入した日本学も放棄してまた新たな道へ。一流の成し遂げたものを放棄して新たな道を目指すのである。

 大体まだ読んでもいないのにブログに書いていいのかという気もするが、僕は柄谷行人の書評だけで感じるものがあったのだ。彼のこの「かくも絶え間ない、抵抗と移動のドライブは、どこからくるのか」、これは読めば明らかになる。大体このような傑出した人物のことが今まで明らかになっていなかったということだけでもなにか閉塞した陰湿な状況を感じますが、そういう抵抗も動力となっているのだろう(想像ですが)。こういう本を読みましょう。愛とか何とかは読むより実行しているほうがいいよ。

 ジジイになってもライク・ア・ローリングストーンです。

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「抵抗の場へ」という本です

ビルの窓

 今日は夕方から「糖尿病プラクティス」という医者だけでなくコ・メディカルの方も対象の勉強会に行ってきました。どういうわけか僕は幹事になっていて、元京都大学の清野先生という糖尿病の大先生(先日アメリカで学会がありクリントン元大統領と握手している写真を見せていただきました。その時国連の決議で糖尿病撲滅が国連部会のテーマに決まったとのこと。感染症以外で初めてのことだそうです)の音頭とりで今回が4回目、80人近い参加者でだんだん盛況になっているようです。で9時半くらいまで会があって、帰りはタクシーをスポンサーから奢っていただきました。

 夜の阪神高速を走りながら窓の外を見ていると、阿波座あたりは会社のビルがいっぱいで、灯りがついている窓にはまだ働いているビジネスマンがごっちゃりいます。某商社の窓には女性ばかり10人以上、フロアでみんな各々PCにむかったりボードになんか書いたり、全然仕事モードです。「もう10時過ぎだよ。頑張ってるな。」

 働いている人も働いてない人も、頑張っている人もそうでない人も、楽しく笑っている人も悲しんでいる人も、いろんな人をのせて地球は回っているわけですが、窓に映る働く人々を見ていると、すべての人たちの幸せを祈りたくなるのはなぜでしょうね。一生懸命な人を見ると素直に感動するからかな。とりあえず働く人々に栄光あれ。

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お身体に気をつけて

メインテーマ

グッギーン!これは僕が頭を殴られた音である。実際にどつかれたわけじゃありません。ある本をパラパラと読んでいて(全部読んだら感想はまた別の機会に)あるセンテンスを読んだとたん頭に鳴り響いたのである。「君の仕事のテーマではなく人生のメインテーマは何なのだ?」

 仕事のメインテーマはあるよ。でも人生なー。意識したこと無かったのだ。昔片岡義男に「メインテーマ」という小説があって、二十歳前の青年がピックアップトラックに乗って、自分の人生のメインテーマを探しに日本中を旅するという話だった。最後は仲良くなった年上の女の人とお別れするのだが、「もう二度と逢えないわよ、それでもいいの?」「いいです」明るく答えて彼のピックアップトラックは小さくなり消えてしまうのだ。この終わり方は好きだった。しかし人生のメインテーマという言葉はそのまま僕の記憶に小さくなり、昨日まで埋もれてしまっていた。

 これじゃーいかん!と僕はあせり、今日1日かかって考えたのだ。何って?そんなん、恥ずかしくて言えませんよ。言っても恥ずかしくないくらい僕が大人になったら教えてあげます。でもねー、最近採用面接なんかをしていて思うのだが、若いやつほどお金にこだわるのはどんなもんかねー。最終的にこの世界を深いところで動かしているのは金じゃないというのはまだ判らんか。江戸時代の日本人は世界で一番成熟していた民族だが、その頃の長屋の住民のライフスタイルは「3ない主義」:物を待たない、出世しない、悩まない、だそうです。この粋な境地に達するのはなかなかですが、僕のメインテーマもすこしかぶるぞ。

 ほんとはピックアップトラックに乗って女の人に「いいです」と言いながらメインテーマを探したいが、贅沢は言わずもう少し練ることにしよう。ゴルフのテーマは90を切る事と決まっているが(誇大妄想です)。

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映画化されてたのか…

フェイス・トゥー・フェイス

 月刊でとっている総合医学誌の特集が「顔の総合診療:顔をみればわかること」だった。顔!顔は大事ですね。病気に関わらず、感情がもろに出ているもんなー。わかりやすい人、見えにくい人の違いはあるが、注意深く観察すればその表情で、まずどのような精神状態にあるか、というか、自分にどのような感情を抱いているかは言葉より確かに分かる。

 リンカーンが「人は40歳を超えたら自分の顔に責任を持たなくてはいけない」と言っているが、これは客観的に見たときの印象だろう。何か卑しそうだったり貧相だったりするのは今までの人生が作った顔なので反省しなくてはいけない。この前しばらく会わなかった同級生と道で偶然ばったり会ったのだが、前はややネガティブな、人を拒む感じの印象だったのだが、非常にオープンで和やかないい顔をしていたので印象に残った。彼は努力して大学の教授になったのだが、自信とか今の充実度がうかがえる。

 男はあまり顔の手入れをしないので(今の30歳台から下くらいは違うかな)、保湿とかちょっと手入れをすると女性と違いすぐ効果が現れるといわれている。手入れまでは行かなくても、おっちゃんは少なくてもちゃんと自分の顔を鏡で見る習慣くらいはつけたほうがいいであろう。信じられないかもしれないけど一日の間で自分の顔を見たことがないという奴は案外多い。顔は看板であり自分を表現する最適のツールでもある。女の子の顔は気にするが自分のは無視というのは寂しい。内面の充実とともに、表面も少しは磨くのが社会人としての常識であろう。女性は表情を社交上のツールとしてうまく使っている。ここでちょっと微笑んでおこうかしら、なんてね。男もそれぐらい器用になってもいいかもね。

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いい顔ですよね

パワーリハ・re-mix

春だなぁ。桜もなんだか今日で終わりの感じです。薄くけぶった春の風の中、ゴルフの打ちっぱなし(車はもち、オープン)と犬の散歩に出かけたのですが、後はおとなしく第6回パワーリハビリテーション学術大会に出す演題の抄録を書いていました。で、いろいろ勉強し直ししていたのですが、もう一度おさらいというか、パワーリハのエッセンスをまとめてみよう。

パワーリハビリテーションはその名前とジムに置いてある筋トレ機器のような外観のマシンのせいで、相変わらず筋肉トレーニングと思われており、「高齢者に筋トレしていいのか!危なくないのか?」といった誤解から解放されていないように思います。パワーリハは筋トレではない!ぜーんぜんちゃう!というのがやっぱり一番大事なとこかな。ではなにか?パワーリハはヨガです。いいですかー、皆さん。ストレッチと言ってもいい。

僕はアキレス腱を切って手術してからもともとあった股関節の故障が悪化して、結構歩行もままならない状態が続いていました。で、ある時パワーリハをやったのですが、終わったその瞬間から足が軽くなり、歩行に力が要らなくなる、リラックスした感じがして驚きました。今やっても同じように感じます。パーキンソン病の患者さんで、同じように終了後から急に歩行状態が改善する方が居られますが、その効果が筋トレで得られるわけがない。低負荷の反復運動による筋の脱力、協調運動の改善が考えられますが、これを日常的に繰り返すことにより神経—筋肉連関の再構築が起こり動かしやすくなるのです。

筋トレはレジスタンス運動であり、無酸素運動です。パワーリハは有酸素運動であることが証明されており、血圧の低下、糖尿病の改善が起こります(当院でも経験済み)。今それ以外にも心臓疾患、呼吸器疾患のリハビリにも有効と報告されています。つまりキモは、本来有酸素運動が有効なのに歩いたりすることさえ困難な方でさえパワーリハなら可能であり、その恩恵を受けることが出来るということです。

パワーリハのもう一つの特長として脱落が少ないということが挙げられます。リハビリテーションは本来苦しい。動きにくい身体を動かしていくのですから痛みもあるしつらいです。やる気のある人しか続きにくいのですが、パワーリハはそんなことがない。気持ちがいい。たまにスポーツをすると「ああーいい気持ち」というのがあるでしょう?あの感じが起こります。低負荷でしんどくない、単調な反復運動にはβエンドルフィンなどのいわゆる脳内麻薬といわれる内因性オピオイドを分泌させる作用があり、それが作用しているようです。それ以外にも神経伝達物質であるアセチルコリンやドーパミン、セロトニンの増加も報告されています。それらは認知症、パーキンソン病や欝の改善に有効な可能性があり、実際にそのような例も多く報告されています。このような物質の作用と身体の状態が良くなっていくことでの達成感、やる気の増大などで行動変容が起こります。実際の身体機能の改善より日常生活での行動範囲が増える方が多いのもそのせいと考えられます。

といったところかなぁ。やったことのある人はわかると思うけど筋トレじゃなくてヨガに近いでしょう?ヨガが出来ない人にも出来るし。問題は器材が高価であり(西ドイツ製の医療器械だからなぁ、安全のためには仕方ないですが)、1家に1台というわけにはいかないところだ。でもジムに通うような感じで障害のある方、なくても運動不足の方は利用すると非常に快適に生活がおくれるようになると思います。一時言われたように魔法の機械ではありません。でも確実に、何もしないよりはるかに有益な、素敵なマシンです。しかもちゃんと学術大会が開かれ、データの蓄積が行われている唯一の器材です。

最近新しくできたデイサービスに筋トレと称して機械が置いてあることが多いですが、あれは本当に筋トレでパワーリハではありません。安全かどうかは知らない、というか高齢者に過度の筋トレは本当に危ない。丈夫な奴でも故障することが結構多いのに、と思います。ワチッアウト!まあ他の所のことはいいや。

で、僕は出勤している限りは毎日パワーリハをやり、以前ブログで書いたようにミニトライアスロン参加を目指すと・・・。やっぱり行動変容は起こっている気がします。

小ネタ集

 4月になってもなんとなく肌寒い日々が続いておりますが皆さんお元気ですか?開業医は季節労働者、毎年1月2月はインフルエンザがはやって大忙しとなるのですが、今年は3月がピークという変な年でした。しかも今日でさえインフルエンザA型、B型の患者さんが発生するという具合です。で、インフルエンザ、風邪に関するトレビアを少し。

   ① インフルエンザは夏でも発生している。迅速測定キットが普及したおかげですぐ判定できるようになったのですが、軽い夏風邪でもインフルエンザウイルスが原因のことがあるというのがわかりました。
   ② インフルエンザの30%は37℃台の微熱である。インフルエンザというと高熱が定石ですが、今年は無熱のインフルエンザの人(症状は関節痛、咽頭痛)も2人経験しました。
   ③ インフルエンザというとタミフルが漏れなくついてきていましたが、例の副作用問題で使わなくなると、1日だけの発熱で終わる人や本当に軽症で終わる人も結構多いというのがわかりました。単なる風邪でも経過が違うので、まあ当たり前ですが。
   ④ 風邪がはやるとうがい薬を希望される方は結構多いのですが、一般的なイソジンでうがいしても風邪の予防にはあまりならず、むしろ単なる水道水で15秒のうがいを3回連続、1日3回行うと有意に風邪の罹患率が下がる(Am J Prev Med 29:302-307,2005)というデータがあります。イソジンは口腔咽頭の正常細菌叢を破壊するか粘膜障害を起こすためと考えられています。

 ④は京都大学からの論文ですが、こんな一般的な話題を論文にするのは日本では珍しいです。日本の研究者はすごく優秀で「Nature」「Science」とかいった泣く子も黙る4つの基礎系トップジャーナルにおける日本人の掲載論文数は常に5位以内、日本より常に上なのは米国のみという抜群の成績なのですが、臨床系になると10位台に低迷しています。

 向こうの臨床雑誌はハイクラスな「Lancet」でも腰痛の場合マットレスは硬いほうがいいかなんていう研究を載せていて(結論は柔らかくても変わらない)、かなり実際的であります。診療のちょっとした疑問が実はちゃんと研究されていなくて経験的に処理されているケースは案外多く、診療所発の実地に役に立つクリニカル・リサーチが最近望まれています。で僕も少しでもお役に立とうと、一介の診療所でありながらパワーリハビリテーション学術大会で当院は2回続けて発表していて、今3回目の発表目指して抄録作成中です。で、勉強づいていて今回初めてタイトルの「外来ウォッチ!」らしいブログになりました。風邪を引きそうです。

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こんな感じでやってます(ウソ)

60歳のつもりで

 なんとなく机の上にある「アエラ」を見ると記憶に有る顔が表紙になっている。誰だったっけ?左隅に「東京大学医科学研究所所長 河岡義裕」と書いてあった。2年位前に偶然見た「情熱大陸」で世界中を駆け回っていたウイルス学者だ!確か活躍のメインはアメリカだったはずだ。解説を見ると、おお!俺と同じ年じゃないか!神戸生まれで神戸高校を出て(知ってる奴が何人もいるぞ)北大を卒業した獣医さんである。昨年大変権威のあるロベルト・コッホ賞を受賞した。テレビでもそうだったが格好がよろしいのだ。ハンサムである。確かビートルズのOh, Darlingが一番好きだと言ってたが学生の時にバンドをやっていたようだ。

 彼の言葉。
「対象は何でもいいんです。人生を楽しんでいるかが大切です。」
取り組んでいる研究が楽しくて、朝起きると一刻も早く研究室に行きたいという生活を続けているうちに研究者になっていた。
「メールがたまるのが恐ろしいこともあり、ここ数年、休暇はとっていません。週末も、たまった仕事をこなすのにちょうどいいので、もちろん働いています。」
 全力疾走は60余歳で無くなった父親や親戚の影響かもしれない。
「僕は人生60年のつもりで生きているから、今、頑張っているのです。」

 抗加齢医学では今のところ人間のマキシマムの寿命は120歳である。僕も当然そのつもりである。彼と比べるとダブルスコアだ。でも業績は、そこまで生きてもとてもダブルはおろか、2分の1も3分の1もいかないだろう。でも60年のつもりで120年生きれば、少しでも近づけるかもしれない。僕は今まで目標寿命は120歳と言ってきたが、60歳のつもりで120歳まで生きると少し変更しよう。

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It’s him !