カテゴリー別アーカイブ: 音楽

私的音楽療法

今週はどういうわけか忙しかった。仕事が終わってからの会合が3つ、で、今日も午前診が12時半に終わってから往診、15分で昼食、交通機動隊の検診、かえって外来ミーティング、そのまま午後診に突入、終わって、帰って、晩飯食って風呂に入ればもう11時である。

 

朝は梅雨明けを思わせる爽やかさだった。診察室で「こんなとこに居る場合ちゃうで。俺はビーチや」なんてほざいていても、実際は潤いも余裕もちゃんちゃら無いのであった。

 

で、診察室でゴンチチをかける。待合室とは別の音楽が診察室ではかかっているのである。「南方郵便船」「修学旅行夜行列車南国音楽」、この2曲はキラーチューンである。前奏が始まっただけで僕は副交感神経優位の状態となり、心は南の潮風の中を漂う。患者さんが何を言っても気持ちよく受け止め、優しく励ます言葉しか出てこない。望ましかるべき医者の姿が1枚のCDで現出するのである。まぁお安いといえばその通りであるが、こういう処方箋があるのは悪くないではないかね。

 

音楽は人間を変容させる強力なツールである。不眠の方が、ベッドで音楽を聴きだして入眠剤が要らなくなったと言っていた例もある。デイサービスでもやっているが音楽は療法なのである。

 

僕のCD処方箋の一部(現時点ね)。

 

頭をクールにしたい・・・マイルス・デイビス「In a silent way

菊池成孔「花と水」

攻撃モードでいこう!・・・同じくマイルスは「ジャック・ジョンソン」

ゴキゲンでいこう!・・・リー・モーガン「サイド・ワインダー」

            ハービー・マン「メンフィス・アンダーグラウンド」

つらい・・・アートアンサンブル・オブ・シカゴ「ナイスガイ」

 

なーんてね。今回はジャズで揃えてみました。もっとあるけど眠気で思い浮かばず、また来週。

 

love it !            

 

 

 

 

ラジオ・デイズ

最近ラジオをよく聴いています。朝ね。「道上洋三」でもなくて、802でもなくて、NHKFM。クラシックが中心です。

 

酸いも甘いも噛み分けた年齢というか、もうどうでもよくなったというか、甘ったるい歌詞は必要なく(むしろ邪魔)、サウンドとして美しければそれが一番いい。でクラシックを聴くことが多くなってきました。

 

朝のNHKFMはバロック、ハイドンなんてのが多く、昔、音楽室にかかっていたカツラをつけた(あれはカツラなんだよ、知ってた?)肖像画しかイメージに無く、なんとなくピンとこん、と思っていたのですが、耳に慣れてくるとこっちの方がいいとか、演奏の好みも出てきて楽しんでいます。

 

で、いつもどおりNHKにあわせた土曜日の朝、えらく渋いスライドギターが聴こえてきました。「んっ?」めちゃ渋い。こういうのがラジオでかかるのかという位のレア感。「ミュージック・サンシャイン」(こらまたNHK的なタイトルだなぁ)という、ピーター・バラカン氏の10年近く続いている老舗番組でした。

 

ここでかかるのがそれはそれは渋い。彼はイギリス人ですがアメリカの南部の音楽が好きみたいでその系統が多い気がしますが、インドのタブラみたいなのを演奏する日本人奏者のやつとか、グッグッとレアなジャズミュージシャンとか、ありえない音源です。僕は結構いろいろ詳しいつもりだったのですが、半分くらい知らない。

 

ここにリクエストしてくる方もまた超マニアックで、デューク・エリントンのソリチュード(名曲!)をアラン・トゥーサンとマリアンヌ・フェイスフルで聴き比べしたい、なんてのがきていました。・・・ありえない・・・ふつう。10年も続いているということは、こんな方が結構巷にいるということですね。素晴らしいことです。

 

かなり僕好みの曲がかかるのでとても楽しみにしています。7時から9時までやってるのかな。駐車場に着いたのですが、紹介されたこの曲が聴きたいので降りないでそのまま聴く、なんて20歳代以降なかったような気がします。

 

この番組以外にも、802では絶対かからないようなマニアックなロックを、学校の先生が解説しているような面白い番組もあって(昨晩はクラシックなのですが、解説の爺さんがどうみても鼻が詰まっていて聞くに堪えんという面白いのもあった)、NHKFM、いいんじゃないですか。スポンサーのこと気にしないでいいから好きなことやれるのね。

 

日本の公務員の人々、こんな感じでやってほしい。

 

 

この人がD.J.でござる。

メンフィス・アンダーグラウンド

 週末に行った米子ですが、車でのヘビー・ローティションはハービー・マンの「メンフィス・アンダーグラウンド」! でした。なつかしー。

 

 ハービー・マンというとなんとなく商才にたけた、というイメージがあるな。大体ジャズで売れるとそういう感じで批判されるような気がしますが、あの口髭をはやした色男のおっさんという外観もそういう感じにぴったりです。某評論家が、ジャズ初心者が絶対聴いてはいけないアーチストのトップに彼を挙げていたらしい。どういう意味だ。

 

 僕もガチガチの頭でっかちジャズファンだった大学生の時はなにか聴くのが恥ずかしいような、ハービー・マンのファンなんて絶対言えないな、なんて気分であったのは確かです。

 

 でも、ハッキリ言うよ、それは間違い。やはり売れるのは根拠あり、本当に楽しい音楽なのです。これって素晴らしいことである。メンバーも今みると、ギターにラリー・コリエル、ソニー・シャロック、バイブにロイ・エアーズ、そしてベースに、なんと!!ミロスラフ・ヴィトウス。これってすげーメンバーじゃん。びっくり。こういう才人をまとめてるハービーって、やはり小物じゃありません。

 

 昔はタイトル曲しか気に入ってなかった気がしますが、今は捨て曲無しのお得なアルバムであります。いや、本当に気に入ってます。

 

 ジャズのヒット曲って、このメンフィス・アンダーグラウンドにしても、サイド・ワインダーやカンタループなんかにしても、なにかウキウキしてくるような、肩がひょこひょこ揺れてくるような感じ、そしてかつ軽薄じゃなくひたすらカッコいい。本当にグルービーであります。

 

 ジャズのヒット曲のような男になりたいものであるね。

 

商才に長けてそうでしょう?なんとなく。

 

 

わが名はムッシュ

最近気に入っているCDについて。

「わが名はムッシュ」、これに尽きます。

 

少し前に書いたレディメイドのはせべ社長が自信作と言っていたのでアマゾンの中古で購入。7年前のCDかぁ。ムッシュかまやつ氏の自己ベストというか、セルフカバー集。小西康陽氏がプロデュースしているのでただのベストであるわけがない。

 

ムッシュかまやつ氏が好きだったわけではない。むしろイメージとしては、「なんか訳のわかんないおっさん」。一部でもてはやされてるけど歌全然下手だしー、ハンサムでもないしー、ナヨナヨしてるしー、単に遊び人というだけじゃないの、でした。

 

でも少し調べるとスパイダースの中のいい曲は全部彼が書いてるのね。「あの時君は若かった」「バン・バン・バン」「いつまでもどこまでも」「ノー・ノー・ボーイ」「フリフリ」とか(おぉ、このタイトルでわかる人がどれだけいるのだろう!?僕も小学生だったっけ。でもいいや)、すべて今聴いても色あせない名曲ばかり。

 

このCDでは歌の合間にご自身の、またマチャアキとか友人のインタビューがドキュメンタリー番組のようにはさまれている。そこに浮かび上がってくるのは60年代の本当に時代を作った遊び人の横顔である(「飯倉片町に張り付いてました、キャンテイに行くとズズ、加賀まり子さん、コシノジュンコさんがいつも3人でいて・・・」)。みんな決して誉めているわけばかりじゃない、結構実際に困ったこともかなり多い人であろうと想像される。しかし何が許したのか、ともかく好きなことだけをやっていて(好きなことだけをできる強さがあり、常識にとらわれない何かが欠落していて)今に至っておられるようです。幸運。しかし作った歌の中に垣間見える閃光のようにきらめくセンスはなんだ!

 

彼のオリジナルを僕はそんなに知ってる訳じゃないのですが、ここに収められている歌は小西康陽氏のアレンジにより(彼の弦の使い方が僕はすごく好みなのです)、原曲より深みのある、凄みのあるものに仕上がっていると感じます。特にムッシュの代名詞ともいえる「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」。これにはまいるよ。一瞬にして周りの世界がブルーグレーの曇り空の古いフランス映画に変質・・・・。

 

是非御一聴。後悔しません。

 

 

若い頃はかっこいいよね。

諸行無常の響きあり

ちょっと気分が落ち着いた。今度抗加齢医学会雑誌にクリニックが紹介されることになり、その文章がやっと出来上がったのである。「アンチエイジングクリニック訪問」という連載物であるが、学会誌に数ページにわたり掲載されるので真剣に書いた(普段はそうでないのか?)。スタッフの写真もあるぞ。締め切りギリギリはお約束だーい!

 

で、なんとなくCDラックに手を伸ばしユーミンを聴く。なんでや?わかりません、なんとなく懐かしくて。ベストアルバムだな、これは。

 

ユーミンは僕より1歳年上である。彼女の登場を同時代で意識できて幸福である。その頃の貧乏くさいフォークでなく、右肩上がりの日本の経済状態とシンクロした、おしゃれな歌をうたう上級生の突然の登場。僕は彼女がデビューしてまだ3度目のステージを見ている。すごくヘタでした。先行きが危ぶまれるような。でも結果はご存知のとおり。

 

ユーミンの曲は1曲で短編小説1話ぶんである。目の前にその情景が浮かぶ。これほどイメージを喚起させる歌を書ける人をほかには知らない。サザンでもタツローでも浮かばない。映画の1シーンのように明瞭に、僕でない誰かが主人公のフィルムが流れる。

 

これは歌詞の力だろう。メロディーは言わずもがなだが、彼女の歌詞は本当に素晴らしい。そして彼女の歌詞にはある共通のトーンが流れている。すべてのものは変わりゆく、変わらないものはないという諦念のようなものを僕は感じる。今は幸せでも、それでさえやがて懐かしく思い出す出来事になってしまうだろうという、そういう感じね。切ないのである。

 

彼女のインタビューで「私はある時わかってしまったんです。人間は絶対的に一人だということを。それから淋しくなくなったんです」と言っていたのを覚えている。意外でよく覚えているが、そういうのが核なのだろうか。

 

諸行無常の響きあり、平家物語である。

 

天才ユーミンにして近年の凋落振りは、本当に平家物語だなぁ。でも僕は彼女の復活を信じている。10年くらい新譜を聴いていないが、いずれ驚愕のアルバムを、大人のせつなさ満載の素晴らしい楽曲を聴けることを、上級生のお姉さん、俺は待ってるぜ。

 

これで人生が変わったかもね。

おとこくせっ!

 最近嬉しかったこと。新しいクリニックの診察室に入って来られた患者さんが「きれいなー、こんなところに来ると病気も治る気がするわ」と言って下さったこと。しかも複数。有難う。僕も仕事にやる気が出ます。

 

 

で、最近車で聴いているのはブルースです。何の関係があんねん!とお思いの皆様、実はあるのです。精神状態とその時聴きたくなる音楽とは結構相関があるのですが、僕がブルースを聴きたくなる時というのは心身ともガッツリ元気なときなのです。弱ってるときは軟弱なJ-POPでともかく日本語。ちょっと親しみにくい感じの音楽、前衛ジャズとか、もろシカゴブルースなんてのを楽しんで聴ける時というのは仕事が充実しているときね。

 

 で今ヘビーローテーションはTOGETHER AGAIN Blues in New Orleans /山岸潤史 & 塩次 伸二です。この二人はかって存在した伝説のブルースバンド、ウエストロードブルースバンドのツイン・ギターです。この同志社大学の学生が中心となって結成されたグループを、なんと僕は昔ライブで聴いています。めちゃ細いブラックジーンズに黒の革ジャンというスタイルで悪そうな面構えの兄ちゃんたちはとてもカッコよかった。

 

 このアルバムは二人のリユニオンで、ニューオリンズの現地ミュージシャンをバックに(山岸氏はニューオリンズ在住です)ブルースのスタンダードを弾きまくってます。太いです。媚びてないです。男くさいです。塩次氏が亡くなったのは淋しい。

 

 で、朝なんかびっくりするくらい大音量で聴くと世界が違って見えるような気がします。今いる世界だけがすべてではない。こんな世界もあんな世界もあるんだ、ちっちゃくまとまるなよ!とサウンドが語りかけます。

 

 どうも最近男くさいのが大好きで(昔は大嫌いだった)、自分でも変な気がするなー。男っぽくなったのか、むしろ逆に女性化か。まっ、いいや、どっちでも。しばらくはこんな感じの音ばっかり聴く気がします。何かが求めてるんでしょうね。それに乗って、行き着くところが楽しみです。

 

 ウエストロード!

 

ザヴィヌル・バッハ?

10月の診療所移転に備えて準備に時間を取られ、しかもその間にちょっとした講演を3つもすることになり、余裕はかなりのところ、ない。今も当院が事務局であるパワーリハビリテーションの大阪実務者研修会をやっている最中で、他のスタッフが働いているところを、僕はお許しをいただいてパワーポイントをさわっているのだ。

昨日は台風はどうなったのだろうと思うような夏空だったが、うって変わって今日は沈鬱な雨空である。会場は新大阪なのだが、来るまでに恒例のゲリラ豪雨にもあう。今も雷鳴が聞こえている。

車の中で聴く音楽であるが、オーディオ装置はCD6連装になっていて、その構成内容により大体の僕のコンディションが判る。弱っていると日本語が訊きたくなり、J-POPが増える。快調に飛ばしているときはJazzが多い。本日は2/6がJqzzであります。日本語は斉藤和義とサザンがスタンバイしている。まぁまぁだなー。

Jazzは僕の熱愛する2つのユニットが入っている。一つはマイルス・デビス・クインテット。ショーター・ハンコック・カーター・ウイリアムスという、後に各々すごいカリスマになる若いメンバーを引き連れてのライブ盤。最強。

もう一枚は菊池成孔選手の「スィート・メタリック」。坪口昌恭氏というキーボード奏者がリーダーの、東京・ザヴィヌル・バッハ(バンド名です)の新作です。菊池選手と18年一緒にやってるそうで、もうどっちがリーダーかどうかよう判らん。電子音楽とアコースティックが融合していて、ともかく新鮮な音です。アルバムタイトルどおりという音。想像できるかな?

僕はこのマッド・天才・ミュージシャン、菊池成孔選手とはどこか心の周波数が確実に1ラインぴったり合っているようで、1日のうちいつ聴いてもそんなに違和感を感じません。爽やかな朝でも「ピー!!フヤンカンヤラブォーォォォ!!」とかいうサックスの前衛フレーズが飛び交っても心穏やかなのです。ひょっとしたら僕も狂っているのでしょうか。

ともかくそんな調子でやってるのだ!残りの日々も前衛的にいくぞ。

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ナイス・ジャケ。音もそうだけどマイルスの影響あるなぁ。

夏・・・南・・・

 ため息も 蒸発するかや 夏日照り(着ぐるみ院長)と言ったところでお晩でございます。誰がなんと言っても夏、暦の上では秋とはいいましても、そんなもん誰が決めた!と言いたい今日この頃ですが、皆さん、何を聴かれていますかな?

 夏といえばこれ!という音楽はいくつもありますが、ギラギラ太陽、でっかい入道雲、高いところから見下ろせば都会のビルが蒸気に揺れてうだってる、というシティボーイ感覚満載は、僕の場合、南佳孝選手の「ジャングルジム・ランド」であります。

 これは「忘れられた夏」というアルバムに収められた曲で、「ビールとタバコで時は過ぎ・・・」とか、禁欲的な今の僕とは縁の無さそうな歌詞ではありますが、確実に存在した若い時の僕とばっちりシンクロしていました。一人暮らしの僕は、日曜日、アパートの屋上に上がってトランクスの水着だけになり、音楽を聴きながらビールと本で半日過ごしていました。翌週も行くともう同じことをしている先客が・・・とか、まあ、気楽な時代ではあります。

 もう手に入らないアルバムですが、1曲目は桑名正博御大の「これで準備OK」とか、南佳孝氏がスーツのままプールに浮かんでいるジャケットとか、なんというか若い幸福な香りが漂ってきます。

 南佳孝氏は桑名御大と並ぶ僕の心のアイドルで、自分に近いという点で言えば、つまり僕がもしミュージシャンだとするとこういう音楽をするという感じですが、最短距離の人です。この前も一緒に飯を食った後輩のalfesta君と一緒に何年か前ブルーノートへ聴きにいき、印象そのままの人であったというのも確認しました。思ったよりデカイ、若い、でもわがままそう。サインもしてもらったなぁ。

 彼は最近もアルバムを出していますが、これが全然いいのです。昔の名前で出ています、というミュージシャンでは絶対無い。なんて素敵なことだろう。個性は保ちながら表現がフレッシュです。見習いたい。やはり僕の永遠のアイドルです。

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ジャケットを見てると、なんかため息が出るなぁ

マイ・サマー・ミュージック

 いやー、暑い。僕はクーラーがあまり好きでなく、車に乗るときもどちらか言うと窓を開けてしまう人間なのですが今年はちょっと無理ねー。といっても寝付くときに1時間ほど使用する位ですが。でも夏はいいです。空気の中に日常的に蝉の声が紛れ込んでいるこの季節が1年中続けばいいのに。

 夏の音といえば、必ず一度は聴いてしまうゴンチチです。僕がこの素晴らしいギターディオを知ったのはかなり古く27歳の時だから、えっー!もう26年前ですね。人生の半分は結構濃密な時期も含めて付き合ったことになります。

 なんではっきり記憶しているかというと、その当時独身だった僕は、仕事が終わって飯を食った後に当時出来始めていたレンタルレコード屋(大手は無かった)の気に入りの店に時々行っていて、そこで初めて彼らのデビューレコード「アナザムード」を見つけたのです。やはり夏でした。蒸し蒸ししてあまり人も歩いてなかった夜の8時頃の記憶がある。苦楽園の駅前です。どこかで立ち読みしたレコード評で覚えていたので(日本の夏にふさわしい音とかなんか書いてあったような気がする)ぱっとしないジャケットを持って帰ってレコードに針を落としたのであった(陳腐な表現だなぁ)。

 その時からですね.腐れ縁が始まったのは。夏を表現するのにこれほどぴったりした音があるのだろうか。「アナザムード」に入っていたのは僕にとっては当時行った八重山諸島の空気を強烈に喚起する音でした。で、その年、早速コンサートに行っています。めっちゃマイナーで、チチ松村氏が「次は僕らの曲で初めてコマーシャルに使われたやつです(パチパチ)。眠りの島といいます。嬉しかったです。でもねー、葬儀屋さんのコマーシャルなんですよ。でもそれがねー、ぴったりなんですよ。」と言っていたのも思い出しました。

 チチ松村氏は大阪の人で(今でも住んでるんだっけ、本当にかなりの奇人で面白い人のようです)、僕の診療所のすぐ近くで結構長く居られたようです。もともとは額縁屋さん。脅威のテクニシャン、ゴンザレス三上氏はドイツ銀行にお勤めでした。今は本拠も東京に移っていますが、大阪の生んだグレート・ミュージシャンです。今はギターディオもゴンチチみたいな音楽も結構ありますが、彼らは少なくとも日本においてはまぎれもなくパイオニアで、本当に美しい音楽だと素直に感動します。僕の音楽の殿堂の中では、ベスト・ギター・ディオ、ベストお笑いMC部門に入ってます。

 「修学旅行夜行列車南国音楽」「南方郵便船」などが流れると、心はどこか南の海の、月が大きくやたら明るい、椰子のはえている砂浜に行ってしまいます(あまりにもステレオタイプですが、でもそうなってしまうのである)。彼らの本領はもっと別にありますが、でも僕はデビューアルバム、僕の夏の季節のバックミュージックに戻っていってしまうのである。

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このCDはセコンドアルバムもカップリングされていてお得です

野生の思考

 菊地成孔氏の「野生の思考」を聴く。素晴らしいなー。なんと美しい音楽だろう。

 菊地成孔氏はまぎれもなく天才だと思う。一時完全にアディクトとなり、アルバムから著作までかなり集めた。そのどれもが失望することはなかった。

 理論派である。東大で講義もしていたが(内容は著書として発売されている。「東京大学のアルバート・アイラー」というタイトルで)、でもね、こいつは絶対変態だぞ。神経症(欝かな)にも一時なっていた。

 彼のテナーサックスの音が完全に好み。彼と清水靖明氏(この人も天才肌でバッハの無伴奏チェロ組曲をサックスでやったアルバムを出している。これもすごくいかすのだ。)の音は、僕の中の原初からある音に近い気がする。多分お二人とも僕とは全く違う資質の方だと思うのだが。勿論才能も。しかし確実に触れてくる。

 「野生の思考」ではあまりサックスは鳴らず、弦楽が主となっている。そこが当初気に入らなかったのだが、素直に耳を傾けると本当に美しい音楽だ。突如現れる恐ろしいくらい甘い旋律。戦慄!(わかってね)。

 DEGUSTATION A JAZZというメジャーデビューのアルバムでは、あらかじめ作った何十曲のオリジナルを、ごくわずかずつだけ切れ目なくつなげる(DEGUSTATION という、少しずつ小皿で何皿も出すレストランの方式を真似ている)という革新的な方法を提示した。次のアルバムのタイトルは「南米のエリザベステイラー」という意味深なものである。内容もこれまた美しい。ともかく曲者です。

 夜、一人で自分の心の中に沈潜するとき、彼の音楽が今のところ一番ふさわしい。それは僕にとって大いなる喜びである。

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ジャケットにもうるさいよー。