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NSTの男

第23回なにわNST倶楽部で発表してきた。

NSTとはなにか?

NST:Nutrition Support Teamのことで、職種の壁を越え、栄養サポートを実施する多職種の集団のこと。栄養サポートとは、基本的医療である栄養管理を症例個々や各疾患治療に応じて適切に実施することである。なにわNST倶楽部は食道楽の会ではなく(そんな感じだ)、大阪市立医療センター、消化器センター部長の西口幸雄先生が中心となって出来たNSTの勉強会である。医療の領域で実は栄養部門は結構なおざりにされてきたのである。医学部での授業時間も少ないし。しかし近年栄養の重要性が見直されてきた。

本来NSTは病院内で実施されるものがほとんどで開業医とは関係が薄いともいえるが、在宅診療をやっていると患者さんの栄養管理は切実な問題で、歩けない患者さんは圧倒的に栄養不良が多いのである。病診連携(病院とクリニックが患者さんのことで連携すること)のこともありNSTとは無関係でおられない。で僕は知り合いのお声掛けもあってどういうわけか世話人となっているのだ、といっても偉そうなことは言えない、たまに参加すると「お久しぶり!」の声がかかる不良世話人なのである。

今回はPEG(経皮的内視鏡的胃瘻造設術)の適応が話題となっており、開業医の立場からお話をしてきた。胃瘻とは経口摂取できない人に腹壁から人工的に食事を入れるカテーテルを装着して栄養を送り込むシステムである。簡単安全で一気に普及したのだが、本来本当に必要か考えなくてはいけない人、たとえば末期の癌だとか重度の認知症だとかの患者さんにも多く増設された時期があり、今その適応が問題となっている。

僕は在宅診療でPEGを装着された認知症の患者さん–かなり高齢ですでに意識もないのだがPEGにより栄養補給が万全なため、ご家族の献身的な介護もあって数年間同じ状態が続いている–を数例あげ、このまま続けることの意味をどう考えるか、問題提起をさせていただいた。批判ではない。

去年NHKで放送された「胃瘻の功罪」という番組以来、胃瘻をすると死ぬこともできないという誤解が広がっており、昨年から胃瘻造設術は日本中でかなり減少した故。適応もなく胃瘻を作ることは問題であるが、それがために本来生きながらえて治癒に向かう可能性のある人さえもご家族が断るという事態も起こっている。日本には今ちゃんとしたアルゴリズムもできて、いい加減な形で胃瘻造設術はおこなわれていないし、途中中止の規定さえも出来つつある。欧米は重度の認知症へのPEGは否定的だが、日本では認知症でも時期を問わず予後がいいというデータもあり、事情がかなり違う。死生観とか宗教も。慎重に考えなくてはならない。

結論として意識のある場合はご本人、ない場合はご家族とどれだけ深い意思疎通ができているかという問題になる。簡単にアルゴリズムで決めるのでなくケースバイケース、テイラーメイドの考え方が必要となるのだ。欧米の受け売りでなく日本独自の考え方で。

いろいろ考えることのできたいい会でした。午後9時過ぎまであったのですが、140人以上の方が参加されていて、特別講演に来られた西美濃厚生病院の西脇伸二先生が「大阪はすごいですねぇ、岐阜では熱心にプロモーションしてもこんなに集まりません」とのこと。

関係者の皆さん、お疲れ様でございました。

 

 

 

ダークな男

いつ頃からコーヒーを愛飲するようになったのかは定かじゃない。


二十歳ぐらいの時にはコーヒーミルで豆をガリガリ削っていたのは確かなので(十八歳ぐらいのときに初めて行ったヨーロッパで確か自分で購入したのだ。淡い思い出である。あの時知り合った皆さんは今も元気なのであろうか?)、結構古くから大量に飲んでいたことになる。しかも割と早期からブラックであった。


それが自分の身体にどう影響しているか?


これも定かではないが、目下のところコーヒーの健康に与える影響は概ねいい話が多い。つまるところポリフェノールがいいのね、抗酸化ね、ということになるが、コーヒーと並んでポリフェノールが多く、かなり中毒に近い人も多い嗜好品としてチョコレートがある。

そう、チョコレート。あなたの好きな、あれです。

チョコレートも身体にいいよという話があった。


スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C. Larsson氏らは,男性のチョコレート消費と脳卒中リスクについて45~79歳のスウェーデン人男性3万7,103人を約10年間追跡。年齢,教育,喫煙,BMI,運動,アスピリン,高血圧,心房細動の既往,心筋梗塞の家族歴,飲酒,食事などを調整後のデータで、消費量が最も多いグループ(中央値62.9g/週)は,最も少ないグループ(中央値0g/週)と比べて脳卒中のリスクが17%低下していたと報告した。さらに欧米の5つの前向き研究のメタ解析を行ったところ,消費量の最も多いカテゴリーは最も少ないカテゴリーより脳卒中リスクが19%低かった。Larsson氏らは,これまでに女性でチョコレート消費が脳卒中のリスクを低下させることを報告しているが,男性でもほぼ同様の結果であった。 なお,1990年代のスウェーデンにおけるチョコレート消費の90%は,カカオ含有量30%程度のミルクチョコレートだった。(Neurology on line edition. 2012, 8.29)


カカオ含有量30%程度というのはロッテガーナチョコくらい。明治ブラックなんてのは44%位。ミルクチョコだったというのが嬉しいな。板チョコは大体1枚65 gくらいなので、毎週これくらいだったら結構食べている人がいるんじゃないだろうか。


こういうのは案外バックにお菓子メーカーがいたりするので要注意だが、チョコレートの積極的摂取を推奨しているわけではなくて(そうとりたい婦女子もいるかもしれないが)、ちょっと甘いものが欲しいときはケーキよりもチョコを食べようというくらいの意識が妥当なところなんじゃないだろうか。そして出来れば砂糖少なめが望ましいだろうなー、当院のJet O嬢のように「それでは意味がありません、甘くなくっちゃ」という意見もあるが。

 

昔見たフランス映画で(中年の不倫恋愛もので、なんと最後は二人ですべてを置き去りにしてバイクで去っていくのだ)いいおっさんが会社帰りにチョコレートショップに寄って自分のためにチョコレートを買って帰るシーンがあった。アルコールじゃなくチョコというのが何とも新鮮でおっしゃれーとその頃思ったのだが、まっ、それも悪くないな。ダークチョコにうるさいおっさんというのは割と自分に合ってそうな気がします。

 

おじさんは何があっても驚かない

 



 

女性の男性化と寿命について

世界的に女性の方が男性より寿命が長い。

生物学的に女性の方が安定していると考えられていて、これはチンパンジーでも同じである(オスの平均寿命は45歳、メスは59歳)ことからも想像できる。ゆえに神様は考えられていて出生数は男子の方が多いのであるが、小学校に上がるころにはもう逆転してしまう。男は弱いのであった。

それに加えて社会的に外に出ていて危険が多いこと、煙草、酒とか身体に悪いことが止められない、なんてことも男性の寿命が短いことの1因子であった。

ところが最近この差が縮まりつつあり、イギリスのサンデータイムズ紙では「男性が女性よりも長生きになる」という記事を載せた。発表したのは国立統計局のアドバイザーでシティ・ユニバーシティ・ロンドンのレスリー・メイヒュー統計学教授で、2030年にはイギリス男女の平均余命は等しくなり、その後は逆転するという予測がたてられている。

米国、カナダ、スウェーデン、フランスでも同様の傾向は報告されている。そして、な、な、なんと日本でも!男女の寿命の差は2003年に6.97年と最大に開いたのだが、その後は縮まってきており2010年は6.75年だそうです。

 

何故か?

メイヒュー教授によれば女性がマッチョ化したのが一因らしい。社会的に男性と同じ行動をとる人が増え、喫煙やアルコール消費量も増大。それに比して男性はむしろ健康に留意する傾向にある。日本でも喫煙率は全体に減少しているのに若年女性では増えとるな、確かに。アルコールをかなり飲む女性も以前と比べると増えている印象が僕もある。

 

逆転するのかどうかはわからないな。でも男女の差がなくなってきている印象はあるので差は確かに縮まっていくのかもしれない。寿命はともかく男女の差がなくなっていくのって、しかしつまらなくない?全然違うところがあることこそ存在意義だろ?

しかしこんなこと言ってる間に女性はどんどん男性化し、男性の分も全部引き受けちゃって、最終的に男性は消滅するという説がある。 男性固有のY染色体にのっている遺伝子情報はどんどん数が減ってきていてこのままでは男性は生物学的に存在価値なく消滅するという予測が立てられているのだ。なぜなら生物学的生存が厳しい時代が終わり社会が安定すると、戦争をし、獲物を稼いでくる男性の出番はなくなるからである。

女性は心優しく男性とあわせるために寿命を短縮してくれているのかもしれないな・・・・(絶対そんなことはないけどな)。

 

・・・・・・・・。

 

 

 

鍼灸修行

 鍼灸をやったことがあるかな?患者さんに訊くと案外若い人がスポーツ外傷で受けていたりして結構興味を持っている場合が多い。ご年配はみんなOKかと思いきや「こわいわー」と言う人が案外多かったりして。

 10年以上前は僕も、鍼灸って気休めじゃないの、安全なのかな(勤務医時代に中国針で気胸を起こして入院してきた人の主治医になったことがあったりして)と割と信用していなかったのね。

 ところがだなー・・・・・・

 きったない足の写真で恐縮だが、これは僕が自分で自分の足に鍼をうった証拠写真でござる。

 僕は鍼灸の有効性に関して今や何の疑いも持っていない。これは経験上である。間違いなく効く。効かない場合、それは術者の問題と思う。

 科学的な探究もよく行われていて、最近うちの鍼灸院のホラーK先生(可愛い女性なのにホラー映画が好き)の指導医であった明治国際医療大学鍼灸学部の鈴木雅雄准教授(何度かお会いしたがワーカホリック、向上心の強い、まぎれもなく突出した人の持つオーラを持った、けれど可愛い人)が、インパクトファクターの高いArchive Internal Medicineというアメリカの医学雑誌に鍼灸のペーパーを載せて結構話題になった。

 僕は運動した翌日、結構足が痛むときがあるのでホラーK先生によく鍼をうってもらう。下半身がすごく軽くなる。ある日、鍼をうっていただいたことを全く忘れていて、なんか今日は足が楽だな、と思って突然施術していただいたことを思い出したくらいだからプラセボ効果ではない。

 で、自分で好きな時にうてたらいいなと前から思っていたのだ。日本では法律上、鍼灸ができるのは鍼灸師と医者だけだからね。かなり以前、医療に鍼灸を使おうという試みをされている先生方のワークショップに泊まり込みで行った事もあるのだが、自分でうつ踏ん切りはどういうわけかなかなかつかなかった。

 ところが、急に力が抜けてすーと出来てしまった。嬉しい。

 で、今いろいろ工夫してやっている。ツボにうつのは難しいのでトリガーポイントをねらってるけど、うまくいくこともそうでない時もある。練習だなぁ。でもいずれうまくなると思うので希望者は予約しといてね!

 

 

 

 

自分のことを喋るのは快感ね!

 内科の病気の70%は問診で診断がつくといわれる。もっと多かったかな。

 そして診断が誤るのは、知識がないというよりもうまく聞き出せないことが主因なのだ。具合が悪くて来ているからそのことを話すだろうになぜわからない?と思われるかもしれない。主たる症状は勿論話していただけるが、そこから病気を絞り込むのに必要ないくつかのファクターを訊きだすのは案外難しい。質問の仕方が悪いのかもしれないし、患者さんが案外忘れていることも多い。診察室から出るときに、思い出したように振り返って言われた一言で判断が逆転するという経験は多くの臨床医がしていると思う。

 「人間は自分のことを喋るのが大好き!」というのが脳科学的に証明されたという記事が米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。

 

 自分について話すことが、食べ物やお金で感じるのと同じ「喜びの感覚」を脳のなかに呼び起こすことが明らかになった。個人的な会話であっても、フェイスブックやツイッターといったソーシャルメディアでの発信であっても、それは変わらない。

 日常会話の約40%は、自分が何を感じ、どう考えたかを他人に話すことで占められている。米ハーバード大学の神経科学者らが脳画像診断と行動に関する5つの実験を行い、その理由を解明した。脳細胞とシナプスがかなり満足感を得るため、自分の考えを話すことを止められないのだ。

 「セルフディスクロージャー(自己開示)は特に満足度が高い」と同大学の神経科学者、ダイアナ・タミール氏は話す。タミール氏は同僚のジェイソン・ミッチェル氏と実験を行った。研究者が呼ぶところの「セルフディスクロージャー」への傾倒度合いを測るために、人は自分の考えや感情を話す機会に対し、通常より高い価値を置くかどうかを検証するテストが実験室で行われた。また、自分のことを他の人に話している間、脳のどの部分が最も興奮しているのかを検証するために、参加者の脳の活動がモニターされた。実験に参加した数十人の志願者のほとんどが大学近くに住む米国人だった。

 いくつかのテストで研究者は、自分のことではなく、例えばオバマ大統領など他人に関する質問に答えることを志願者が選んだ場合、上限の4セントまで段階的に設けられた基準に応じて、志願者にお金を支払った。質問は例えば、その人物はスノーボードをするのが好きか、またピザにはマッシュルームをのせるのが好きかといったカジュアルなものもあれば、知性や好奇心、攻撃性といった個人的な特質を問うものもある。

 ところが金銭的な動機づけにも関わらず、参加者は自分について話すことを好むことが多かった。本来得られるであろう金額の17~25%を進んであきらめ、自分について話すことを選んだ。

 関連した実験で、科学者らはfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使用した。これは精神活動と結びついているニューロン間の血流の変化を追跡するもので、他の人について思考を巡らすのではなく、自分自身の信念や選択肢などについて話す際に、脳のどの部分が最も強く反応するかを見ることができる。

 一般的に、セルフディスクロージャーを行うと中脳辺縁系ドーパミン経路に関わる脳の領域の活動が高くなる。ここは食べ物やお金、セックスなどで得られる満足感や快感と関係している部分だ。


 だそうです。かなり根源的なもののようね。とすると自分について話していただくことはさして困難なことではないと思われる。病気について話すことは楽しいことではないから時に問診は難しい。これを応用して、自分の話したいことをいっぱい喋って弾みをつけていただくと、訊きたいことが出やすくなる可能性はあるな。

 定期的に来られている方には、疾病と関係のない話から始める方がうまくいくことは経験則としてある。これをどれだけの患者さんに広げることができるかという話だけど、ただでさえ待ち時間はBig problem となってるからなー、会話能力を高めるしかないけどどうする?でもきっと一番怖いのは、話し出すと止まらなくなる場合だろうねぇ。

それは手だ!

昨日は校医をしているS中学の検診に行った。3年生、244名である。聴診器を入れている耳が痛くなり、続けて診察をするので滅多に凝らない肩が痛くなってくる。肉体労働である。

 

S中学は珍しくラグビー部のあるところで、神戸製鋼とかの結構有名どころのラグビー選手を多く輩出している。名門校である。

3年生のラグビー部員となるとおっさんだ。僕より体も大きくヒゲなんかもうっすら生えたりなんかしてさ。 女の子なんかも大人っぽくなってるし、検診って結構楽しいんじゃない?なんて言う人もいるがとてもそれどころではない。 午後診の時間は迫ってくるし、ガヤガヤやたらうるさい生徒諸君を並ばせるのに先生は声を張り上げるし、緊急の携帯は鳴るし、なんか気が遠くなってきた。

薄れ行く意識の中でぐるぐる変わる生徒諸君を診察しているうちに気がついたことがある。

 

僕よりおっさんに見えるボクも、不良予備軍の悪ぶってる彼も、おばちゃん?みたいな彼女も、一見年齢不詳かもしれないがみんな手が幼いのである。 手が子供。 つやが良く、血色がよく、プックリしている。細胞が若い。

 

手は年齢を表すというのはよく言われる。しわ、シミが加齢と主に増え、張りがなくなる。その変化は顔以上、特に男性は手に気を使わない分だけ著明に現れる。 昔知り合ったある男性は(奥さんがアメリカ人だった)、ふと気がつくと手が本当にきれいだった。そのことを指摘すると、彼はその当時男性は全く対象外だったエステに行っていると言った。「いや、嫁さんがね、営業職だったら見かけを絶対ちゃんとしなくちゃだめだって言うんですよ。で、つてをたどってね、月に1回、顔とか手とかやってもらってるんです。いやー、嬉しいなー、わかってもらえて」。 仕事で彼と知り合ったのだが、確かに彼はダントツで優秀であった。今頃どうしているかな。

 

手は実は病気もよく表す。貧血は爪をだめにするし、案外変形も多い。 診察の時、手を見ていたら患者さんが「先生、何見てんですか?」と言うので「手相」と言ったら「そうなんだ」と言われた。不徳の致すところである。

 

手は病気以上に生活環境が現れる。 余裕がないと手までまわらないもんね。女性は先刻ご存知だろうが。

 

手は脳の延長で、神経の先端が形になっていると思ってもいい。 ボケないためには「ばくちでもいいから手を使え!」という教えもあったな。 これからもっと手に注意をはらわなくっちゃ、と思っているうちに最後のボクが終わった。

つぼ、ってのもありましたね。

 

2年連続ゲット!

 デイサービスの管理者、マラソンマンK君から連絡がきた。

 「大阪府から事業所評価加算を 算定できるとの通知が来ました!」・・・事業所評価加算とは何か?

 

下記の3つを満たす事業所に介護保険上の請求に加算が認められる。

①利用実人員数が10人以上であること。

②評価対象期間内に選択的サービスを利用した者の数/評価対象期間内に介護予防通所介護又は介護予防通所リハビリテーションをそれぞれ利用した者の数≧0.6。

③要支援度の維持者数+(1ランク改善者数+2ランク改善者数)×2/評価対象期間内に選択的サービスを3月以上利用し、その後に更新・変更認定を受けた者の数≧0.7であること。

 

 ややこしいが、デイサービスに行くことでその方の介護度が軽減されたという客観的証拠があるということを示す。パワーリハビリなどの効果がちゃんと上がっているという確固たる証拠。

 大阪府でデイサービス、デイケアなどの通所サービス事業所は1400くらいある。その中でこの加算が認められたのは100程度である。僕たちの地域である城東区では2か所だけであり、しかも昨年からこの加算が始まったのだが、2年連続なのはうちだけ!なんだなぁ。

 昨今僕たちと同様マシントレーニングを取り入れているデイサービス、デイケアが増えている。だけど高齢者におけるマシントレーニングは若い奴と同じでは絶対にいけない。危険なだけ。歩行能力は筋力ではない。関節のポジションであり、そのための有効な筋肉の使い方なのである。

 少し筋力が上がればそれなりの改善が見られるかもしれないが根本的な解決策ではない。そういったちゃんとしたセオリーがあるのだが、果たしてどれだけの事業者がそれを理解してやっているのだろうか?びっくりするくらいお粗末とはっきり言ってしまおう。

 利用者さんにとってもスタッフにとってもグッニューース!でした。3年連続を目指し工夫していこうね。

 

P.S.

 ドクターデヴィアスという化粧品会社の広報誌 orga world  にインタビューされたのが載りました。今の抗加齢医学のごくさわりをお話ししたのですが、うまくまとめて下さっています。カメラマンの方も来てバシャバシャ撮って行かれたのですが、載っている僕の写真を見ると、ベストの顔がこれかと・・・・ガクッ。現実を見よ。

 

カム、カム、エブリボディ!

 昔から早食いであった。

 考えてみれば小学校の時、隣の席の上農君(今は兵庫医大の麻酔科教授である)とどちらが早く給食を食べるかいつも競争し、常にどちらかがクラスで1番だったような記憶がある。勝ったら喜んで椅子に座ったまま後ろに倒れこんでバタバタいわしたり、ばかだったなぁ。小学校5年生くらいだったと思うけど今でもあまり変わっていないのかもしれぬ。公的には僕は自称小学5年生である。

 医者になってからは早食いに拍車がかかった。循環器の医者の特長は「腰が軽い」ところである。「あっ!」と言われれば「うん!」と答えて走っていかなければならない。お昼ご飯なんざ平均所要時間は5分である。今でもカレーライスは(どんなやつでも)1分で食べる自信がある。・・・自慢にならんなぁ。

 早食いはみっともない。合コンっぽい食事会で、「あまり早く食べてるように見えないのに、とても食べるのはやいですね」と言われた記憶がある。1回量が多いのである。しかしいったい何をしていたのだろう。目的が全く分かっていない。

 噛まずに呑んでいるのですね、これは。実は極めて健康に悪い。で最近は意識して念入りにゆっくり噛むようにしている。出来れば30回。早食いの人の特徴で、あまり噛んでいると食べた気がせえへんわ、というのがあるのだが(ビールじゃないのに喉ごしで味わっているのですね)、やってみるとなかなかこれはよろしい。ちゃんと食事をしている、ものを食べているという気がしてくるし、味もよく判るのである。

 それにも増して、①食べるスピードが遅くなると満腹中枢が反応するまでの時間、食べる量が少なくて済む。つまり肥えにくくなる ②消化によろしい ③唾液分泌が増し、唾液に含まれる免疫機能、抗がん作用の増強が期待できる ④唾液分泌により口腔内が清潔、虫歯の予防になる ⑤咬筋が鍛えられ表情が豊かになる ⑥噛むという行動は脳機能を活性化すると証明されている。歯が悪くなるとボケやすいというのは証明されているのだ。

 と、いいことずくめですね。なにより上品でよろしい。食べるのがゆっくりだと他の行動もおっとりとして来るようで、大人になった気がします。

 というわけで、皆さん、よく噛むように。30回って案外早いです。しかし僕の場合、噛むスピードがだんだんはやくなって余計せわしなくなったりするかもね。気をつけよう。

 

マインドセット

 糖尿病治療の基本の一つに運動がある。こいつが難しい。薬を飲むこと、食事療法(これもかなり難だけど)は比較的頑張れても、時間を取って運動することをちゃんとできる人は少ない。で多くの方は通勤の時一駅前で降りて歩くとか、出来るだけ車は使わないようにしていますという感じになる。

 それでも十分です、細切れの運動でもやらないよりずっと効果はあることは証明されていますと話すのだが、正直なところほんとに出来てるのかなぁと思うくらい効果の上がっていない人も多い。はっきりやってますと言える人はちゃんとそれなりに効果を出しているのと対照的だ。運動強度の問題かなぁ。

 そこでこういう論文を見つけた。Mind-set matters: exercise and the placebo effect. Psychol Sci 18: 165-171, 2001. ホテルの清掃者を2群に分け、一つのグループには清掃は十分なエクセサイズであり血糖値や血圧にいい影響があると十分教育し常にそれを喚起した。もう一群は同じ労働量ではあるがそのような働き掛けは一切行わなかった。1か月後驚いたことに教育群のみ体重、血圧、血糖値が低下していたのだ!彼らは清掃は運動であり運動量が増えたと意識しており、発表者のハーバード大学ランガー博士は「運動は意識しないと効果が出ないかもしれず、プラセボ効果が運動の意義に大きいのかもしれない」と述べている。これは結構有名な論文らしい。

 筋肉トレーニングの際、漫然とするのではなくこの筋肉を鍛えたいとその場所を意識すると筋肉量の増加が違うとよく言われる。意識の働きかけが微妙に運動の仕方に影響しているのかもしれない。身体を動かすときはこれは運動、エクセサイズである!今鍛えている!と思うことで、単に歩いていても効果が変わると思えばなかなか楽しいではないか。

 生活すべてエクセサイズです。わずかの時間でも面倒くさがらずせっせと身体を動かそう。リモコンは使わず、エレベーターは使わず、風呂で頭を洗う時もイスを使わない。やってるやってる、いいぞ俺、とちゃんと意識しよう。間違いなく半年後は違います。いいね!(と自分に言い聞かす)。

これにのって診察を始めてからはや3年。

P.S.

この前ふくしまカンバッジの話を書きました。おかげさまで100個完売いたしました。カンパに協力いただいた皆様、本当に有難うございました。心より感謝いたします。

 

カロリスです。

 年末に嘔吐下痢症にかかった。多分ロタウイルス。生涯3回目の点滴をしたが、1リットルいれてもおしっこに行きたい気がしなかったから相当脱水だな。2日ほど全く何も食べず水分のみ。仕事はやってました。感染源となるのはまずいので、外来ではトイレも行かず(おう吐物や便にウイルスは排出される)真剣に手洗いをする。医者になって32年だけど病欠は1日もない。ガールフレンドがらみのズル休みは数日ある。そこが僕の詰めの甘いところだ。

 でそれ以来、これはカロリーリストリクション(CR)のいいチャンスだ!と考え食べる量をかなり減らした。CRは抗加齢医学に関心のある人なら聞いたことがあるかもしれない、ホットトピックと言うよりは今や常識か。

 哺乳類を含めあらゆる生物で寿命を延ばす唯一の確かな方法は摂取カロリーを減らすことである。25%減らすと約1.5倍健康的に寿命が延長する。下の写真のお猿さんは同じ年齢だが顔つきも身体つきも右のお猿さんがずっと若く見えるし実際能力も高い。飼育方法の唯一の違いは左は好きなように食べ右はカロリー制限をしたのである。、

 ちょっとハードな条件に置かれると生物は生き延びようとして老化が止まるようだ。厳しすぎるのはだめだけど。原因はもう特定されていて長寿遺伝子であるサーチュインの活性化が起こるため。サーチュインは赤ワインなどにも含まれるレスベラトロールの摂取でも活性化する。去年NHKでこの話(お猿さんも登場した)が特番であって、それ以来レスベラトロールのサプリはネットでごまんと出ている。効果のほどは実証できていない。それより食べる量を減らし、ちょいきつめの運動を定期的にする方が間違いなく確実。

 食べることというのは元来ストレスであるらしい。消化管は内臓とはいえ口から肛門までの管で、その粘膜面は外界と接しているわけで、実は身体の外といえる。何が含まれているかわ判らない食物が通るので防御のため免疫グロブリンはかなりの部分が腸管で作られる。

 CRは今食べている量の25%を目指すのだが、大体「いつもお腹がすいている感じ」を当初の目安とする。これが慣れるとなかなか快適である。大体食べ過ぎると気分悪くなるでしょ?

 で、今のところまあまあ続いていて、体重も1.5Kg減というところである。めちゃめちゃストイックにやると性格上続かないのが分かっているのでまあルーズに続けていこう。前回書いた「禁!アルコール、スイーツ、テレビ」もルーズに続いています。