カテゴリー別アーカイブ: 医学

ホリディ

 今日は火曜日で仕事は休み。宿題が山積みで、朝いつも通り起きて愛犬と散歩し、その後机に向かう。

 

 休憩中に読んだ朝日新聞の記事。「脳卒中 病は気から」・・・人生に絶望する気持ちがあると頚動脈に病変が起き、脳卒中や心臓病を起こす危険が高いことが米ミネソタ大の研究でわかった。「ストローク」の最新号に掲載された。中高年女性559人が対象で、人生に最も前向きな集団と、最も絶望感が強い集団とでは頚動脈の厚みに有意の差があった。

 

 精神神経免疫学では病は気からというのは科学的に実証されている。うつ病の人に循環器系の疾患が多い。自律神経の破綻から内皮障害をきたす等の説あり。

 

 悲観はイカン。悩んでいるのはふりだけにしよう。どうしようもないことはほって置く。方針が見えているものは他人を気にせず実行あるのみ。

 

 午後に1時間ほどまた愛犬と散歩に出ただけで、1日パワーポイントを考える、学術雑誌を読む、昼寝する、コーヒーを飲む、を繰り返す。ずっと音楽が鳴っている。とても幸せ。脳卒中ははるか彼方。

 

1日は早い。

きのうの神様

 「きのうの神様」を読む。「ディア・ドクター」の西川美和監督が書いた、今年の直木賞候補にもなった(残念ながら取れなかったけど)短編集。「ディア・ドクター」に出てくるキャラクターが登場するということで興味を惹かれて読んだ。

 

 うーん。なんて才能なんだろうと思う。彼女は自分でも、脚本とか撮ることより書くことに興味を覚えるとインタビューで語っていたが、本当にプロの仕事である。

 

 どの話も登場人物、シチュエーションが医療関係であるのだが、そのリアリティには驚嘆する。医者を主人公にしたドラマ、小説は多いのだが、どれを読んでもまあ作り物、脚色があるというのは暗黙の了解事項だが、ここに出てくる人たちの行動、感情に違和感を覚える医者はまずいないだろう。

 

 「ディア・ドクター」でも感じたが、ここには念入りに取材され理解された上での(いろいろな立場での)医療関係者の現実の気持ちがありのままにある。もうこんなことはないよなぁ、という細かいところも12箇所ないではないがノープロブレム。本当に共感してしまった。

 

 映画に続き医療関係者必読。ほろ苦く深みのある真実の味。

 

読むべし

 

 

 

  

私的音楽療法

今週はどういうわけか忙しかった。仕事が終わってからの会合が3つ、で、今日も午前診が12時半に終わってから往診、15分で昼食、交通機動隊の検診、かえって外来ミーティング、そのまま午後診に突入、終わって、帰って、晩飯食って風呂に入ればもう11時である。

 

朝は梅雨明けを思わせる爽やかさだった。診察室で「こんなとこに居る場合ちゃうで。俺はビーチや」なんてほざいていても、実際は潤いも余裕もちゃんちゃら無いのであった。

 

で、診察室でゴンチチをかける。待合室とは別の音楽が診察室ではかかっているのである。「南方郵便船」「修学旅行夜行列車南国音楽」、この2曲はキラーチューンである。前奏が始まっただけで僕は副交感神経優位の状態となり、心は南の潮風の中を漂う。患者さんが何を言っても気持ちよく受け止め、優しく励ます言葉しか出てこない。望ましかるべき医者の姿が1枚のCDで現出するのである。まぁお安いといえばその通りであるが、こういう処方箋があるのは悪くないではないかね。

 

音楽は人間を変容させる強力なツールである。不眠の方が、ベッドで音楽を聴きだして入眠剤が要らなくなったと言っていた例もある。デイサービスでもやっているが音楽は療法なのである。

 

僕のCD処方箋の一部(現時点ね)。

 

頭をクールにしたい・・・マイルス・デイビス「In a silent way

菊池成孔「花と水」

攻撃モードでいこう!・・・同じくマイルスは「ジャック・ジョンソン」

ゴキゲンでいこう!・・・リー・モーガン「サイド・ワインダー」

            ハービー・マン「メンフィス・アンダーグラウンド」

つらい・・・アートアンサンブル・オブ・シカゴ「ナイスガイ」

 

なーんてね。今回はジャズで揃えてみました。もっとあるけど眠気で思い浮かばず、また来週。

 

love it !            

 

 

 

 

ディア・ドクター

「ディア・ドクター」を見てきました。僻地医療がテーマのひとつですが、考えさせられる内容はもっと広く深いです。

 

ストーリーは書かないですが、医者とか医療のあり方に関してすごく考えさせられました。医療介護に携わっている方はまがうことなく必見!の映画だと思います。できるまですごく綿密な取材をされているのですが、この台詞は現場でやっている人からしか出てこない、という深い言葉が散在している。いくつかの言葉はいつまでもあなたの記憶に残るだろう。

 

医者のあるべき姿は?ってことを書くとややこしくなるので止めとく。ミーハーな話題を。

 

主役の鶴瓶師匠、いいです!前からなんとなく好きなのに、好きと言うのははばかられるって感じがしていたのですが、今は、おっさんの中では一番好きです。

 

そしてなんといっても西川美和監督の実力爆発です。重い話題なのに重くなく、暑苦しくなりがちなのに爽やかで、小うるさくなくクールで正確。音楽も非常に素敵です。彼女はこの映画を一部ノベライズした「きのうの神様」という短編小説集を出していて今年の直木賞候補にもなっていますが(忘れてた!是非読もう)、映像にもまして言葉、文章にすぐれている方のようです。彼女の前作「ゆれる」(こいつはいろいろな賞を総なめにしています)はオダギリ・ジョー主演!ぜひ見よう! 

 

 アエラのインタビューによると、彼女はこの映画を撮り終わった後、医療事務の学校に通おうとしていたそうです。いつまでも映画を撮り続けることはできないし確かな資格を得ておこうと思って、と言っています。ユニークです。忙しくなりそれもかなわなくなった様ですが、この才能を生かさないのは世界に取って損失でしょう。

 

 先週、K医大の学生さんが二人、デイサービスの実地体験に1日来られました。この試みはもう5年以上になりますが、毎年彼らの素直さ、伸びやかさにちょっと感動を覚える。映画の鶴瓶師匠と瑛太君のスタンスのような感じです。

彼らには本当に是非見て欲しいです。

 

 

君たちは是非!

触れ合うことが一番!

医事新報を読む。この歴史ある医学雑誌で人気のあるのが「質疑応答」のページで、主として開業医が日常診療で持つ疑問点を投稿すると、専門医がそれに回答するという趣向である。誰に答えて欲しいか、リクエストすることもできる。

 

 疑問点というのは大体誰でも同じようなことに関して持つもので、読んでいると役に立つことが多い。今日気になったのは「アルツハイマー病を家庭だけでケアするのと、デイサービスに週2から3回通うのでは病気の進行に差が出るのか」という質問であった。これに東京浴風会病院精神科診療部長の須貝先生が答えておられる。

 

 結論から言うと、デイサービスの効果について科学的な方法で検証した論文は皆無である。もともと非薬物療法の効果判定は非常に困難であり、しかもアルツハイマー病の場合、スタッフと患者さんとの相互作用、関わりやコミュニケーションが「療法」といわれる介入プログラム以上に重要な役割を果たすからである。デイサービスでも脳トレーニングがよく行われているが、アメリカとイギリスの研究では、その有効性を裏付けるデータはほとんどないとのこと。

 

 ではデイサービスは無駄なのか?そうではない。数千人、56年と追跡調査した各国の疫学データは、なによりも人とのコミュニケーションをとり続けることが認知症の予防に有効であると結論している。ひとりで家にこもって計算練習をしていても認知症はすすむが、デイサービスで多くの人と触れ合っていればすすまないかもしれないのである。

 

 うーむ、これは大変勇気付けられる結論ではないかな。うちのデイサービスのやり方にも、より良くなるヒントが有ると思う。よく考えてみることにします。

 

こういうやつです。

 

 

 

 

東京っぽい

今日診療が終わってから末梢血管疾患(PAD)セミナーに行ってきました。大阪市立総合医療センターの糖尿病の権威、細井先生の短いレクチャーと、帝京大学外科の新見正則准教授の講演です。

 

細井先生はお馴染みの親しみやすくわかりやすい語り口で、糖尿病の血管病変の予防法について多くのデータを示してくださいました。大阪の(特に城東、鶴見、旭、都島の4区における)糖尿病ネットワークの牽引車で、いつもながら勉強熱心なのには、そしてお優しいのには本当に頭が下がります。ファンです。かわいい。

 

かたや新見正則准教授の講演は非常にユニークでした。末梢血管疾患、特に閉塞性動脈硬化症についてのお話でしたが、ベーシックな内容に先生の知見、考えを大胆に加えられ、それを落語家のような飄々とした語り口で話されるのは、本当に東京人だなー、関西にはないよなーと非常に印象に残りました。

 

先生は慶応のご出身ですが、なにか東京の先生には私生活の充実が覗えるような、勉学の話をされていても何かこの人は普段の生活も楽しそうだなーと思わせるサムシングを漂わせた方が多い気がする。

 

偏見じゃろかね?いや、しかし僕と同じような感想を持っているやつをほかにも知っているので、あながち見当はずれというわけでも無さそうだ。

 

なにか都会派というか、余裕を見せるのがお約束という感じがします。必死で頑張ってます!というのはちょっと田舎くさいのですが、それの対極。で優しいけどべたべたじゃなくちょっとクール。冴えてる、という感じですかね。

 

先生のブログ http://ameblo.jp/mniimi/ を見るとそうでもないかな、と思ったりもしますが、実物の印象はそうだったのよ。刺激を受けて元気になりました。

 

ここ1週間はこんな予定が一杯でブログを更新する時間もなかったのですが、こんな刺激を受けると午後10時に会が終わっても元気にPCに向かえます。有難いことだ。行った甲斐があったよ。

 

新見先生。背がひょろっと高い。

美白より・・・

昨日はお昼に城東区保健センターで講義を1時間ばかりやらかしてきました。「さびない身体を作る」というテーマで何回かの続きもの。第1回の講義として「実際的アンチエージング」というテーマをお話してきました。

 

 聴衆は40代から70代くらいで、そういう講義に参加されるくらいですのでいたって健康でした。BMI17から25まで、喫煙は男性2人のみ、サプリメントも人工でなく天然のものを選ばれ、食べ物を買うときはちゃんと裏返して含有成分の記載をチェックするという優等生ぶり。

 

 もう言うことはありません。

 

 パワーポイントで「オォッ!」という反応があったのは、1卵性双生児である40代女性2人の顔の写真をお見せした時でした。

 

  この違いはなんでしょう?食生活?運動習慣?いろいろ出ましたが結論はシンプル、煙草です。喫煙歴が本来そっくりな二人をここまで引き離してしまうのです。おお、神よ。

 

 禁煙外来をやっていても、禁煙達成率は女性のほうが悪い。煙草をやめると太る、便秘になるなんていう理由以外にも、女性のほうがニコチンの中毒性が強いという説もあります。健康に及ぼす害も男性より強く出る。

 

 美白に熱心になるより前に、女性の方はまず禁煙を。「実際的アンチエージング」の第1歩であります。

学会報告・ビスタ

9回抗加齢医学会総会に行ってきました。

 

この会にはまだまだ参加者の少ない第2回から参加しており、すごく親しみを感じています。最近では顔見知りの方も増え、年々盛況になっていく学会(会員数は7000名近い)をみると何か嬉しい。まだまだパワーを失わないどころかどんどんスケールアップしていく力強さを感じます。1回発表したことがありますが、来年の京都ではまた演題を出したいものである。

 

アフターヌーンセミナーの「ボトックス・ビスタ・ライブ講演会」に参加してきました。

 

なんじゃい、それは?

 

ボトックスというのはボツリヌス毒素による筋弛緩剤の商品名です。注射するとその筋肉が収縮しなくなり、それにより形成されているシワが消失する。重力により下がっている部分は、その部分の筋肉を弛緩させると、拮抗する筋肉に力が相対的に強くなり引っ張り上げられることになる。もともと斜頸とかいくつかの病気に保険適応があるのですが、主たる用途はシワ取り、多汗症の治療など美容領域になっています。うちの鍼灸院で「顔バリ」とか「ピーリング」など皮膚の活性化手技を行っているのですが、それに関係して興味を持ったわけだ。

 

ボトックスのいいのは効果が3から4ヶ月で消失することです。その度に繰り返さなければいけませんが、しかし手術のようにやったら最後取り返しがつかないということはない。戻っちゃうのだから。でも注射は結構痛いらしい。

 

当日はライブということで、会場から希望者を募って手技を見せるという構成でした。勇気あるおっちゃんドクターが手を挙げ、眉間のしわをとる手技に挑戦。施術された白壁先生は大変な名手で痛くも無さそうでしたが、ボトックスの効果がでるのは翌日ということで、その効果のほどははっきりしませんでした。しかしやり方はよく分かった。

 

すぐ応用できるかは難しいところだと思いますが、勉強する価値はある気もします。大胆に考えれば強力な化粧法とも言える。

 

いろいろ考えなければならないことが多いと思います。抗加齢医学の目指すところは内面の充実であり、そこに外観の充実がどの程度関与していくのかとか、本来の美しさは自然のままではないのかとかね。が、いつか皆さんの前に登場することがあるかもや知れぬ。そのときは遠慮せず手を挙げてね。

 

ということ。

1957

 新型インフルエンザの報道は過熱気味の感じがします。外来でみていると町の人のほうが冷静である。少なくとも今回は弱毒性で致死的ではないらしいということが大きいのでしょうが、感染した生徒のいる高校の校長先生が何故泣かなくてはならないのか?かかった生徒が「みんなに迷惑かけて申し訳ない」と言わなくてはならないのか?報道に対する過剰反応ではないかな。

 

米国で感染したと考えられる女生徒は滞在中ずーとマスクをしていたらしいし、発熱があって帰国したとき、接触を避けるため大変気をつけて行動しています。不憫である。そんなもん、何しても罹るときは罹るで!謝る必要なし!これでは昔のらい病にたいする扱いのようではないか!

 

と思っていたところ興味深いニュースが。

 

米疾病対策センター(CDC)は20日の記者会見で、新型インフルエンザに対する自然免疫が1957年以前に生まれた中高年層に、存在する可能性を明らかにした。
 CDCのダニエル・ジャーニガン博士によると、新型インフルエンザは、普通の季節性インフルエンザと違い、若年層の入院が多い。患者の血液分析の結果、高齢者で新型インフルエンザに対する抵抗性が示唆されたという。
 1918年に大流行を起こしたH1N1型のスペイン風邪は、57年にH2N2型のアジア風邪にとってかわられた。このため、57年以前に、スペイン風邪のウイルスが変異したH1N1型のインフルエンザにさらされた経験を持つ高齢者は、やはりH1N1型の現在の新型インフルエンザに有効な免疫を獲得した可能性があるという。

 

 新型インフルエンザが流行するとき、若年者から罹患するという原則があるのですが、やはり免疫の関係か。

 

ふっふっふ、俺は1955年生まれだよ、セーフ!と呟いても何か淋しい気がする。インフルエンザより老化が怖いか・・・

 

 

P.S.今日東京のNテレビから電話がかかってきました。「先生のブログを拝見したのですが・・・」「(おっ!)はいはい」「先生のお友達で兵庫高校バレー部の生徒さんを診察した方が居られるようですが、どんな症状だったかごぞんじですか?」「知りませーん」「では申し訳ないですがその先生をご紹介願えないでしょうか?」!?なんだ、なんだ!?しかし取材先を探すのは本当に大変な努力だなと思いました。報道過熱気味とは思いますが苦労も沢山おありなのもわかってますよ。

 

全く関係ないが飛行機雲。見えないか?ああ、どこかに行きたい・・・

 

新型インフルエンザ

いやー、荒れましたね。今日の天気。それに呼応するかのように新型インフルエンザは感染者を増やしました。今日一日、なんやかんや情報収集をしていたのですが、前線たる内科クリニックに関して有効な情報はほとんど無い。

 

おお、厄災はすべて関西から始まる。というかめっちゃ地元です。僕の友人が兵庫高校のバレーボール部員を土曜日に診察したと言ってました。出てくる学校の名前も身近だなー。

 

以前のブログでも書きましたが、水際作戦は労多くして効少なし、実際感染が発生した場合の医療体制の充実ほうが大事ということは医療関係者の間で指摘されていました。結局予想通りになってきたのですが、外来の簡易検査でA型が出た場合全員PCRのための検体を送るのか、それにはどうすればいいのか、患者さんをどのように搬送するのか等疑問点に対して今だ回答ははっきりしていません(明日問い合わせれば判るかもしれませんが)。

 

いくつかのメーリングリスト等によれば、おそらく感染はもうすでにかなり拡大しているだろう(京都などでは例年に比べ相当数A型インフルエンザが増加しており、それが全てPCRで調べられているわけではない)、しかし致死率が高いわけではなく、アメリカではmild disease(軽症の病気)として学校閉鎖などは解かれつつある(新型インフルエンザが発生した時期から調べても、世界的には結核の死亡者数、死亡率のほうが何倍も高い)。例年流行る季節型のインフルエンザと同様の対応でいいと考えられます。

 

しかし明日から外来、介護施設とも発熱患者さんの対応に関しマニュアルを作製し、しばらく新型インフルモードの特別仕様でいくことになります。

 

しかし怖いのはいずれ発生するだろう強毒性の鳥インフルエンザです。今回の流行は、ほんちゃん登場に備えて神が与えてくれたリハーサルかもしれんね。

 

迫り来る嵐