カテゴリー別アーカイブ: 抗加齢

複雑な仕事と単純な僕

 パラパラと仕事に関係のありそうな医学雑誌の抄録を読む。ふーむ。Journal of Aging and health 19:397-415,2007 ”Complexity of Primary Lifetime Occupation and Congnition in Advanced Old Age”があった。「高齢者における今までの職業の複雑さと認知機能の関係」スウェーデンからの文献。

 386人が対象で今までの職業歴とミニメンタルテスト(これは日本でもよく使う)の成績との関係を調べたところ、単純作業でない複雑な仕事についていた人は認知機能がよく保たれていた。これは年齢、性別などを総てあわせた上での比較で、学歴や仕事の種類に関係なく、その仕事が複雑で頭を使うということがポイントである。

 抄録なのでどのような仕事を複雑な仕事としているのか分からない。しかしだいたい感じはわかる。いくつかの事を平行して行わなければならない、常に同じ結果でなく状況により柔軟にやり方を変えていかなくてはならない、新しいことがどんどん入ってくる、とかそんなことだろう。

 まあ多くの仕事が当てはまる。医者という仕事もまさにそうだが、ここで大事なことはいくつまでそれを続けていたかということだろう。年をとると複雑なことはあまりやらないでいいですよーとシステムがなっているし、億劫にもなる。しかしそこで嫌がらないでやり続ける。そうすると効果があるだろうな。

 複雑な仕事をやっていると性格も複雑になってきそうだ。そいつはいけない。複雑な仕事と単純な僕。こういかなくっちゃ。

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複雑!というイメージ

矯正の結果

 書かねばならない手紙を2通ほど書く。昔の人の日記なんかを読むと、仕事の前に5,6通手紙を書く、なんていうのがよくあって、日課みたいだな、よく書くなーと思っていたのだが、考えてみると今のメールみたいなもんだな。仕事前にチェックして返事を書かなあかんやつにカチャカチャと。で、もちろん僕の手紙の場合はメールのようにはいかない。サラサラなんてわけはなく、1通はワープロで下書きをして書いたぐらいだ。

 僕の場合は手紙を書く上において致命的、壊滅的、ハルマゲドンともいえる問題がある。つまりだなー、字が下手なのである。すごいよ。今は電子カルテだが、紙カルテに書いていた字は僕自身にも時に判読不能であった。で、丁寧に書くとこれがまた子供の字なのだなー。どうみても12歳以上の知能がある奴には見えない。まあ、正解なのでそれでいいわけですが。

 ぼくはもともと左利きである。それを幼稚園くらい(かな?)に無理やり直したものだからかなり長い間いくつかの数字やひらがなは鏡で写したように正反対に書いていた。脳の優位半球と利き腕は関係があり、矯正することで能力に問題が出る可能性があるので今は矯正しない。現在のぼくは矯正した例のいいモデルである。いいですかー、こうなっちゃうんですよ、昔はメチャクチャやってましたよね・・・もう遅い。

 少しでもましに書こうと思えば、自分にあった筆記用具が必須である。どういうわけかとてもましにかける場合がある。弘法は筆を選ばないが矯正した人間は(それだけが原因のワケないが)大いに選ばなくてはならないのだ。案外すごく安い景品で貰ったボールペンだったりする。

 しかしだなー、たまに手紙を書くといいぞ。自分が真っ当な思慮深い人間のような気がします。書き続けていると少しはそういうのも身につくのかもしれない。文章を考え、手を使って書く。手紙を書くことはボケ防止に最適だ。これから出来るだけ手紙を書ける相手をせっせと作るようにしようと決めた。どういう関係になるのかな?微妙だ。

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ラブレターってのもあったよな。死語か?

ノルディック・ウォーキング

 今日のお勧めはノルディック・ウォーキングです。

 なにそれ?とお尋ねの貴兄に教えてあげよう。フィンランドが発祥の地で、そこで研修を受けてきたうちのスタッフが輸入した、というのは嘘で教えてくれたのですが、彼の地ではご老人がスキーのストックをつきながら歩いていた、歩行練習になるし腕も使うので運動量もアップするという優れもの!日本でもないんでしょうか…と言っていたら、なんと仕事でお知り合いになった方が偶然お持ちになっていて1セット戴いたのです。その頃僕の足の状態はかなり低迷していてこれで歩行練習をして下さいという意味合いだったのね。

 しかし残念ながら僕はあまり使わなかった。なぜならそれで歩行できるくらい足の状態が良好じゃなかったのだ、今から思えば。

 歩くだけで疲れてたもんなぁ。そのまま1年以上そのままになっていたのですが、最近突然!天啓のようにこれを使おうという意思が働いた。

 愛犬の散歩に使ったのですが、リードとウンチ袋を持ってというかなり不安定な状態ながら平気でワシワシ歩く。まず気がついたのが、歩幅がとても大きくなるのだ。安定が良くなり歩くことの負荷が減るせいで非常に楽。そして腕を使うことは結構運動になって汗が出てくる。基礎代謝が上がるなぁーという感じ。結構山道みたいなところも歩いたのですが安定性がぜんぜん違う。そういえば最近山登りでもストックを使ってたなとどこかで読んだ記事を思い出す。

 結論:これは平気でガンガン歩ける人には無用かもしれないが、歩行に若干トラブルのある人においては非常に有益なツールであります。パワーリハを利用されている方にはとても有効だと思う。今少しずつ使っていただいています。僕も自転車で移動するのは止めて、出来るだけこれを使おうと思う。皆さんも是非経験してみてください。

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イケます

 

颯爽と去る

 昨日の土曜日から淡路島に行ってきた。もう何年続いているか分からないが、かって大学病院で動物実験をやっていたグループの定期宴会である。年に4回ぐらい幹事回り持ちでおいしい飯屋を選んで集まっていたのだが、時々泊りがけが入るようになり、昨日は洲本の寿司屋さんである(島田紳介氏がよく来ているそうで確かにうまい!周りの風景から1軒だけ異質にお洒落な店構えですごく混んでいた)。年齢差は7,8歳くらいにまたがっている8人で、昨晩は淡路島で開業している女医さんがゲストとして加わった。

 朝ごはんの時、一人が脳梗塞で倒れた父親の介護で母親が欝状態になっているという話をする。多かれ少なかれみんな似た状況を経験している。「もうそんな年やもんな」という台詞も出る。そのとおり。そして内科医の使命、ミッションというのはそんな状態を避けること。100歳まで頭も身体もしっかり元気で、そして試合終了のホイッスルとともにスタジアムを後にするように颯爽と去っていく人生であるよう手助けをすることだろう。アンチ・エイジングとはそういうことだ。

 行きも帰りもいい天気でZをオープンにして走る。僕は快楽の閾値が低い人間で、いい天気に風に吹かれて移動しながら好きな音楽を聴いているだけで生きててよかった!と切に思う人間である。サザンの古いのを聴きながら大声で合唱する。”うねり来る波にー、のるための勇気を、僕に与えてくれー♪”

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淡路大橋の一部(と携帯カメラを構えた僕の手が写るバックミラー)

サプリの帝王

 テレビ大阪(製作は東京か)の「カンブリア宮殿」を見ました。サプリメントという言葉を日本で広めたファンケルの名誉会長、池森氏が出るからです。僕は村上龍氏のファンで、彼が司会をしていることから前から興味があったのですが見たのは今日が初めてです。経済界において注目の人物が毎週インタビューをうけに登場しますが、村上龍氏は経済に非常に興味があってメールマガジンも発行していますし、テレビ東京、大阪の経営は日本経済新聞社だからでしょうね。

 で、内容ですが、まあ面白かった。立志伝中の人物であり、苦労話や現在の経営方針など(異業種から来た人間に会社は活性化されるとか、経営者にとって一番大事なのは好奇心とか)ああそうねという感じで見ていたのですが、一番ピンと来たのは彼が非常に若いこと、色艶のいいことです。70歳になられるそうですが印象が若々しく清潔です。彼は1日に70錠位サプリメントをとるとのこと。

 僕の知っている人でサプリメントをかなり内服している人は、芸能人とかを含めてもみんな同じように艶々している人が多い。どうも効果があるのではないかと確信しそうです。以前僕はサプリメントに懐疑的だったのですが、その根拠となった学術的報告の観察期間は短く、しかも単一のサプリメントで癌に対する効果等を見たものです。マルチビタミンや抗酸化物を大量に長期にわたって内服した例を調べたものはなく、アクティビティなどを評価しているわけでもない。長期的な影響は定まっていません。知っている限り、内服しているよと広言している人物はほぼみんなツルツルで年齢より若く見えます。

 うーむ、「内服」「金の無駄」どっちのカードだ!どうするよ、おれ!続く!ということはなく実はもう飲んでいる。だけど確かなことをひとつ教えてあげよう。サプリメントはどれもみんな一緒じゃなくて質の悪いものも多い。選びましょう!どれがいいかは僕に訊いてね。それと村上龍くん、君もサプリとったほうがいいよ。

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ちょっと考慮しよう

ミディクローリアン

 ミディクローリアンとはなにか?そこの君、あまり物を考えてなさそうな君、判るかね?まあ、別に知らなくてもいいや。これはスターウォーズに出てくる、フォースの単位みたいなものだ。何でこんなことを言っているかというと、昨日の続きで若い奴と話しているとなんで元気になるかと考えていたのだが、心の元気さというか弾力性みたいなエネルギーがある。ではそれをあらわすのにいい単位がないかなと考えているうちに思い出したのである。

 エネルギー保存の法則というのがある。物体の位置エネルギーと運動エネルギーの和は等しくなるというやつだ。人間においても年をとって内容はともかくそれなりに地位が高くなると運動能力(身体、精神ともの)は落ちてくる。若い奴は運動エネルギーが高い。まあ総てに例外があるが。その運動エネルギーがこちらに仕事をするとえらそうな気持ちはなくなって楽しくなる。気持ちの位置エネルギーが下がるのである、なんてことを愛犬を散歩させながら考えていた。

 精神の若さを定量的に評価するのは難しい。うつ病のスケール、「やる気スコア」なんてのもあるが、もっとスピリットというか精神の純度、若さを評価できたら、これはかなり病気というか、前病気状態とも相関しそうな気がする。抗加齢クリニックの評価項目に是非入れたいな。

 単位はやはりミディクローリアンがいいな。でもジョージ・ルーカスに莫大な印税を払わなくてはならないとするとちょっと無理。誰かいいのがありませんか?

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わしの値は高いで

くるくるくるくる

 朝日新聞の連載「ドキュメント・医療危機」を見ると「日本は医者を大事にしない」とタイトル。おっ、医者を目の敵にしてきた朝日新聞の中にもまともなやつが、と読んでみる。が、内容はいかに医者の経済基盤が弱いかということであった。大学教授でも定年後は働かざるを得ない、どうみても銀行家のほうが羽振りがいい、病院の経営母体が変わると年金も途切れ生涯賃金でもかなりの損である・・・

 まぁ真実だけどね。医者が経済的に恵まれていたのは我々の父親の世代までであろう。今は3K(きつい、きけん、きたない)の典型で自分の子供を積極的に医者にしようと思っている人間は世間の人間が思っているより遥かに少ない。欧米と比較するまでもなく日本の医者のコストパフォーマンスの悪さはすごいと思う。勤務医の激務は知られるようになったが開業医にしたって朝の8時半から夜の9時まで1時間の昼飯以外は全くフルに診察、往診、検診だった私の今日を考えると、このお年で…と涙が出る。

 しかし、言うのも恥ずかしいが「やりがい」というのがあるんだな。その意味で僕は医者はいい職業である、天職であると思っている。

 僕の患者さんにある会社の専務さんがいる。70台だがとてもそうは思えぬバイタリティを誇る。彼は僕にいつも言う。「借金があるから頑張って働こうと思えるんです。先生、借金つくらな!」・・・言われなくてもいっぱいあるって。まぁ、それだから働くというわけではないが、何に追われるものもなく悠々自適で海外旅行が趣味といういやみなおっさんになるつもりは全然ない。だいたい何のリスクもない趣味に生きたところで何が楽しいのか全然わからん、私には。

 こうやって貧乏性よろしく死ぬまでくるくるくるくる働くんだろうなと思う。しかし実はそれこそ最高の生き方。そう思うのは僕だけ?

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Doctor of dreamね。成りたいもんです。

 

リタイアじゃなくリワイヤ

 今日93歳のアメリカのご婦人が州立大学(どこかは忘れた)を卒業されたというニュースを見た。結婚で中断した大学生活をもう一度最後までやり遂げたいという希望で大学に入り、孫と一緒に卒業したのである。大学院入学の希望も持っているとのこと。やるじゃないか、アメリカのおばあちゃんは。

 このニュースをもう少し詳しく知ろうとネットで検索していたら別のネタに当たった。

 いつまでも学びたい〜アメリカ・大学の中の老人ホーム
 アメリカで今、「カレッジリンク型」と呼ばれる老人ホームが注目を集めている。これは大学と提携した老人ホームで、ニューヨーク州イサカ大学にある「ロングビュー」は、その先駆けとなった施設だ。ここでは、65歳から95歳の入居者が学生と共に授業を受け、数十年振りの学生生活を送っている。入居者たちは、時には学生の相談に乗り、専門知識がある場合は講師役を勤める事もあるという。ロングビューの入居者は180人、幾つになっても知的刺激や社会とのつながりを求め、積極的なライフスタイルを送ろうとする人たちだ。
 こうした老人ホームは現在全米に50か所、年内に新たに40か所増えるという人気ぶりだ。アメリカの老人ホームは、「リタイヤメント・コミュニティ」と呼ばれ、高齢者たちだけが集まり、社会とのつながりを失いがちとなっている。しかし最近では“リタイヤ”ではなく“リワイヤ(新たなつながりを創る)”が、高齢者社会の合言葉になっているという。

 
 …だそうです。実は日本でも関西大学がこれをもう作ろうとしていて第1回の説明会の広告がこの前新聞に載っていた。生涯勉強。素晴らしいことだ。リワイヤは今までの日本では難しいかもしれないがこれから変わってくるかもしれないな。俺もやりタイヤ、リワイヤ(なんのこっちゃ)。

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ワイズマンの肖像です。

年とったらねー、肉ですよ!

 今日朝刊を見ていると本の広告があって「脳によく効く栄養学:ボケたくなければ肉を食え」というのが目に入った。どっかで聞いたような台詞だと思ったら、僕がPearlsに昔書いたタイトル「ボケたくなけりゃ肉を食え!」じゃあーりませんか。高田明和先生という、ボケないためにどうすればいいかという内容の本をよく書かれている方の最新刊です。

 別に独創的なタイトルでもなし、少し高齢者の問題を勉強するとすぐ浮かんでくる台詞とも言える。在宅や施設の高齢者の一番の問題はエネルギー・蛋白質低栄養状態:protein energy malnutrition;PEM であります。アルブミン3.5g以下を基準とすることが多いが、75歳以上だと療養中の3割から4割がPEMにあたるといわれています。

 コレステロールを下げろ、食べ過ぎるな等々の台詞はメタボリック症候群が問題の中年層においては確かですが、高齢になるとコレステロールはある程度高いほうが寿命が長い、癌、欝も少ないというのは統計的に出ています。栄養状態良好なほうが成人病を生き延びて高齢に達した方にはいいのですね。Pearlsも読んで下さい。

 人間何があっても食べている間は大丈夫、というのは多くの医者が持っている実感です。もうしんどくてしんどくて、と嘆く中年のおばさんに「食欲はどうですか?」ときくと「いや、これだけはしっかり」と答える方が多く、「さようなら」と思わず言いそうになるのですが(ウソです、ちゃんと病気がないか調べます)、ご高齢でも食欲があり、美味しいものに意欲がある方は全体的にバイタリティが旺盛です。

 とりあえず中年の皆さん、運動して食べ過ぎないで体重を維持し、なんとか老年期まで生き延びましょう。そうすれば何でもお好きなものを食べられますって。お楽しみは後にね。

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読んだ人は内容を教えてちょんまげ

 

身体に訊け!

 おお、今日もいい天気だ。今日は十分睡眠を堪能してから①心拍数120の有酸素運動 ②ストレッチ ③耳かきに似た棒を振り回す ④犬に引きずられる などの運動をトタール3時間程度おこない、その後シャワー、サウナ、初夏のそよ風に吹かれるなどで仕上げをした。極楽。

 ここで大事なことは運動は無理しない程度で止めるということだ。僕は以前は、運動はともかくハードを持ってよし、というタイプであったのだが、怪我が起こりやすい、しんどくて続かない、効果は気楽にやるのと比べてあまり変わらない、ということが最近わかってきた。鼻歌交じりで出来る程度をある程度の時間、継続して行うということが非常に大事なのである。

 このような運動は本当に身体が喜んでいるというのが意識できるくらい気持ちがいい。ああーと伸びをすると気持ちがいいでしょう?あの感じが続く。体の中の邪悪なものが消えていく感じです。この感じが得られるかどうかがポイントです。

 この頃僕はアルコールを本当に飲まなくなったし(味は好きなんだけど酔うのがうっとおしい)、シャンプーは経皮毒の可能性があるので石鹸を使って頭を洗ってるし(ずっと使ってるとごわごわしなくなる)、小学生のようである。精神年齢(自称12歳)に生活レベルがあってきた。それとともに身体の感覚が鋭敏になってきた感じがする。誤解かもしれないがそう感じるからいいじゃん。頭で考えるより身体に訊け!そのほうが確かです。

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メタボリック症候群も決め手は運動。やるべし!